Vol.64 辻 芙実子 さん
私たちの活動を継続的に支えていただいているアクセプト・アンバサダーの声を紹介する本コーナー。
「アンバサダーの声」第64弾は、現在IT企業で人事のお仕事をされている、辻 芙実子(つじ ふみこ)さんです。
辻さん、インタビューへのご協力ありがとうございます!まずは、バックグラウンドやご経歴を簡単に教えてください。
大学でまちづくりに関心を持ったことから、卒業後は交通インフラ系の企業に就職して10年ほど働きました。たまたま配属で人事の業務に就いたことから徐々に組織のあり方にも関心が向き、「一人ひとりが自分らしく働ける状態とは?」ということを考えるようになりました。その関心から昨年転職し、現在はIT企業の人事をしています。
小2から社会人1年目まで続けたガールスカウト活動で、ボランティア活動に参加する機会が多かったため、昔からさまざまな社会課題に関心がありました。高校時代は環境問題に、大学時代はまちづくりにと、(お分かりになってしまうと思いますが…)興味がどんどん拡散していくなかで、数年前からウェブメディアの運営に関わる機会をいただき、会社員と並行してインタビューや記事執筆をしています。関心を持った社会事象について勉強したり、話を聞いたりする機会があることが自分にとって面白く心地よく、勉強の機会になっています。
以前から社会問題に関心があったのですね!
さまざまな課題に取り組む団体は数多くある中で、辻さんがアクセプトのアンバサダーにご就任いただいた経緯やきっかけは何だったのでしょうか?
たまたまネットで永井さんのインタビュー記事を見つけ、「ソマリアという国も、若いテロリストのことも何も知らない…」という思いから続けて永井さんの著書『共感という病』を拝読しました。読んでみて、ひどく衝撃を受けました。これまで私は、海外の問題に対してできることがあればと、細々と食糧支援寄付などをしてきました。しかし、アクセプトの活動範囲はこれまで見聞きしてきたものと全く違い、知らないことばかりでした。何より社会課題の中に「共感を得やすい課題/得にくい課題」という差があるという指摘に衝撃を受け、私自身「分かりやすい課題」にしか目が入っていなかったのではないか、と愕然としました。アクセプトが取り組む「テロリストの更生」という課題は、これまで考えたこともなかったため、最初は協力へのハードルが高い印象を抱いたのも否めません。でもだからこそ、そこに正面から向き合う活動に感銘を受け、またこの現状を知らなかった自戒の念もあり、まずは寄付からやってみようとアンバサダーになることにしました。
▲保護猫と在宅勤務をしている辻様
私もアクセプトを知るまではテロリストの更生など考えたことはありませんでした。
代表・永井の著書『共感という病』も読んでくださったとのことですが、何か変化はありましたか?
永井さんの著書『共感という病』を読んでから、「共感」という概念の多義性について考えることも増えました。これまで「共感でつながること」はポジティブなイメージだったのですが、共感の「輪」を作るということは、同時に外縁を作ることであり、それによって無意識に区切っているものがあるのではないかと、最近よく考えています。会社でも身近なコミュニティでも、あるいは社会で起きていることを考えるなかでも、無意識に締め出しているものがないか、気をつけて生活したいなと思っています。
無意識に締め出しているものがないか気をつけるのはとても大切な心掛けですね。
永井の著書に加えて、アクセプトの活動から影響を受けたことなどは何かありますか?
アクセプトが活動の中で重視されている「対話」についても、日常生活の中で考えることが増えたように思います。本当に平和な中で生活してきたのだな…と呆れてしまいますが、私はつい最近まで「どんな人とも本来は分かり合えるし、分かりあうべき。そのために努力するのが正しい!」と思っていたのだと思います。
アクセプトの活動を知り「対話」の重要性を認識し始めた頃、私はどうしても噛み合わない相手とどうコミュニケーションをしていくか悩んでいた時期でした。職場や友人関係など身近なコミュニケーションの中でも、それぞれの人が拠って立つ“正義”は異なります。そこを踏まえずに自分の正しさを押し付けて生活してきたかもしれないと反省しましたし、価値観や生きてきた境遇が違う中で、相手と簡単に分かり合えるなんて想定すること自体おこがましく、もっと他者を尊重し謙虚に向き合いたいと感じるようになりました。
アクセプトが取り組む課題解決プロセスの中の「対話」とは全くスケール感が違いますが、他者と向き合うということをもっと真摯に捉え、自分の正義を押し付けないことを、日頃から大切にしたいと感じています(そういう姿勢を身につけられると、誰かを傷つけることも減るのではないかな…と自戒を込めて思っています)。
▲林業のボランティアをされているときの様子
対話は日常に溢れているので、辻さんのように私たちの活動と結びつけて考えてくださる方も増えている実感があります。私自身も、日々の対話から相手の想いを尊重することで、人間関係における対立が減ったように思います。
辻さんは日常生活でもアクセプトの対話の姿勢を実践なさっていますが、今後アンバサダーとして挑戦してみたいことはありますか?
今はまだ毎月の寄付しかできていませんが、いずれ周りの人にもアクセプトの活動を紹介したり、紛争について学んだり議論したりする場を、身近なコミュニティでも設けることができたら…と思っています。身近なところでは、家でよくアクセプトの活動の話をしているので、家族から「永井さんがニュースに出ていたよ」といった報告を受けることが増えました。
いいですね!ワークショップでも勉強会でも、何かご一緒できる機会があればとてもありがたいです。アンバサダーの皆様の横に広げる活動に、私たちは助けられ勇気づけられています。
それでは最後に、読者の皆様に向けて何かメッセージをお願いします!
アクセプトが取り組んでいることは、難易度が高く、なかなかスポットが当たりにくい課題かと思います。そこに正面から向き合い、着実に成果を出しているアクセプトインターナショナルの活動は、素晴らしいと思います。イベントやメールニュースなどから、私もいろいろなことを学んでいます。
ただ、知ること・学ぶことだけで止まっていてはどんな課題も解決しません。私も「知ることの先でできることはなんだろう?」ということを考えていきたいと思っているので、皆さんのお考えもたくさん聞かせていただきたいです!
辻さん、この度は共感がもたらす負の側面や対話の手法など、読者の方々が日々の生活にも活かせるお話をお聞かせいただきありがとうございました。
今後も、私たちとともに誰しもが平和の担い手となれる世界の実現に向けて歩んでいただけたら幸いです。
インタビュー担当:南部壮太郎
【読者の皆様へ】
政府の意向に左右されない私たち独自の活動は、毎月1,500円から活動にご参加いただける「アクセプト・アンバサダー」をはじめとした皆様からのご支援があってこそ成り立っています。
皆様とともに、憎しみの連鎖をほどいていくことができれば大変幸甚です。
アンバサダーの声
- 2024.07.24
Vol.65「加害者にも目を向けようとするアクセプトの理念は、他にはない唯一無二のもの」太田 貴也 さん - 2024.03.29
Vol.64「自分の正しさを押し付けて生活してきたかもしれないと反省」辻 芙実子 さん - 2024.03.27
Vol.63「これは無理だろうという限界は自分が決めてしまっている」城田 則子 さん - 2024.03.11
Vol.62「大きな成果に向けた積み重ねの一部に自分がなる」ナロック 悠耶 さん - 2024.03.02
Vol.61「世界はどう変わるのか、私が生きている間に見ることができればうれしいです」鈴木 幸恵 さん - 2024.02.13
Vol.60「活動に賛同している意思表示としてアンバサダーを続けています」倉持 光代 さん - 2024.02.11
Vol.59「一度何かのイベントに参加してみると自分なりの関わり方を見つけられるのではないかと思います」近藤 英一郎 さん - 2024.02.04
Vol.58「寄付をさせていただいていると思っています」中村 千絵 さん - 2024.02.04
Vol.57「自分にはできないからと諦めるのではなく、時処位に応じて協力できることを考えていけたらいいなと思っています」榊原 美紀 さん - 2024.01.27
Vol.56「無理だと決めつけずにやってみること。この事を実現している団体に、私の考え方も大きく影響を受けました」鈴村 修 さん - 2023.12.17
Vol.55「『少し応援してみよっかな』くらいの気軽さでアンバサダーをはじめてみる人が増えてくれればいいな 」南條 佑太 さん - 2023.06.25
Vol.53 「1人の力では解決できなくても、同じ思いを持つ人たちが集まると、いつかきっと大きな力になると信じて」 中尾 千恵子 さん - 2023.05.23
Vol.52「私自身も『対話』を探求していくために、アンバサダーとして関わることで学ばさせていただいています」高橋 淳さん - 2023.04.06
Vol.51 「永井さんとアクセプトが創る未来を私は見てみたい。できたらそこに、私も参加していたい」 福田 広恵 さん - 2023.03.19
Vol.50 「アクセプトのアンバサダーでいることが誇り」 桐林 千登勢 さん - 2023.01.29
Vol.49 「永井代表の『僕らはソマリアギャングと夢を語る』を読んだのがきっかけです」 前田 関羽 さん - 2022.09.17
Vol.48 「大きな事象であるからこそ、一人ひとりに目を向けて、必要なことを一つ一つ考えていく」 沖村 里咲 さん - 2022.07.31
Vol.47 「子どもに『戦争がなくならないのは仕方ない』とは言いたくない」 矢野 俊樹 さん - 2022.07.31
Vol.46 「アンバサダーになってみて支援を『継続する』ことの大切さを改めて感じている」 成澤 里恵 さん - 2022.06.12
Vol.45 「小学校時代にアメリカの同時多発テロを体験して以来、長い間モヤモヤした気持ちを抱え続けていました」 小出 彩音 さん - 2022.06.06
Vol.44 「何かできる時は手伝いたいし、何もできない時でも支援したい」 加藤 祥晃 さん - 2022.06.02
Vol.43 「『今なお聴かれていない、語られていない声は、どのようなものか』とより考えるようになりました」 小針 美紀 さん - 2022.05.22
Vol.42 「アンバサダーとして、アクセプトの中にいる人たちの信念や生き様のようなものを伝えていきたい」 浦野 真理 さん - 2022.04.17
Vol.41 「テロリストも同じ人間、必要なことをやる、という非常にフラットながら革新的な行動姿勢に惹かれて」 田頭 風子 さん - 2021.10.31
Vol.40 「自分のシステム開発の経験を活かして、IT面を中心にサポートをしてきました」 安達 知仁 さん - 2021.06.30
Vol.39 「『私でも出来る、否、私だからこそ出来ることがありそう』と思えたのはアクセプトだけでした」 賀来 沙樹子 さん - 2021.05.16
Vol.38 「アンバサダーになったのは、他国の若者の未来へつなげることができると思ったからです」 小川 利久 さん - 2021.04.10
Vol.37 「テロや紛争解決といった難しい課題は、大きな機関のみが対応できるものだと勝手に思い込んでいました」 坂本 眞一郎 さん - 2021.02.20
Vol.36 「前例が無い中で難しい課題に自分と同じもしくは若い世代の方が懸命に取り組んでいる姿勢に感銘を受けた」 中野 響子 さん - 2021.01.22
Vol.35 「テロと紛争による被害も、『機会損失』が発生していると私は捉えています」 小川 隆弘 さん - 2020.12.20
Vol.34 「世界中の人々が、自身の未来の可能性を広げる、『教育』や『学び』を受けられる機会を持って欲しい」 鈴木 悠甫 さん - 2020.11.18
Vol.33 「海外ならではのエピソードをアクセプトの皆さんと懇親会などで共有できることが楽しい」 篠原 祥 さん - 2020.10.14
Vol.32 「もっと日本人にも『テロリズム』を身近な問題として認識してもらうことが必要」 福嶋 浩嗣 さん - 2020.09.09
Vol.31 「『受け入れる』という価値観・アプローチをここまで実践に落とされている団体は、唯一無二なのかな」 八名 恵理子 さん - 2020.08.12
Vol.30 「最初にプレゼンを聴いた時、どういう形であれ応援したい、活動に貢献したいと心底思う何かがありました」 益田 大輔 さん - 2020.07.15
Vol.29 「テロリストや過激な思想を持った人を、かつては『加害者』として私は一面的にしか見ていませんでした」 猪熊 風友乃 さん - 2020.06.10
Vol.28 「元テロリストに対するイメージの変化をもっと多くの高校生たちに体験してもらいたい」 金田 和大 さん - 2020.05.06
Vol.27 「この活動が拡がったら国際協力の世界が大きく変わるのではないか。そんな気がして応援を始めました」 福西 浩樹 さん - 2020.04.10
Vol.26 「アンバサダー限定イベントに参加し活動内容を知ることができて、新たな知識も身についた」 芥川 駿太郎 さん - 2020.02.01
Vol.25 「アクセプトを通して、テロや紛争の問題についてまずは『知る』ことで新しい世界との接点が増えました」 ロミ さん - 2019.12.23
Vol.24 「アンバサダーになってみて、実際に横のつながりが生まれていることがいいな、と感じた」 中構 優花 さん - 2019.11.04
Vol.23 「団体のお手伝いがしたいという思いと同じくらい『自分のため』という感覚も強いかもしれません」 臼田 輝生 さん - 2019.07.30
Vol.21 「メンバーと近い距離で交流することに、自分自身刺激をもらってます」 宮崎 貴博 さん - 2019.06.14
Vol.20 「団体の成長を近くで感じられることが感慨深かったです」 岡本 明訓 さん - 2019.05.07
Vol.19 「既成概念や枠組みに囚われず、新たな時代を切り拓くために必要な反骨精神や気概があるのを感じます」 杉浦 かおり さん - 2019.03.30
Vol.18 「紛争で奪われる命を守りたい、現場を自分の目で確かめてすべきことを判断したい」 大塚 千宙 さん - 2019.02.15
Vol.17 「アンバサダーになってから、紛争関連のニュースがより目に止まるようになりました」 二茅 理穂子 さん - 2019.01.16
Vol.16 「アクセプトには、企業の発想を転換させる大きな役割があると思います」 篠原 雄之 さん - 2018.12.18
Vol.15 「ソマリアやケニア、インドネシアなどのアクセプトの活動地におけるテロと紛争の現状を知れた」 渋谷 和彦 さん - 2018.11.29
Vol.14 「悲しみを終え平和と幸せに向かう旅路を支える」 生田 チサト さん - 2018.10.31
Vol.13 「他のアンバサダーの方々とも交流する機会があることが面白いと思っています」 齋藤 悠太 さん - 2018.09.30
Vol.12 「開院したクリニックに西真岡アクセプト・インターナショナルクリニックと命名させて頂きました」 眞塩 一樹 さん - 2018.07.31
Vol.11 「メンバーの方々も、アンバサダーは身内だと言ってくれます」 三浦 紗織 さん - 2018.06.30
Vol.10 「今後は県内の教育機関にリーチできる講演やイベントの場を作れればと思います」 北添 春菜 さん - 2018.05.31
Vol.9 「アクセプトの現場での取り組みは、平和構築研究としても非常に興味深いものです」 本多 倫彬 さん - 2018.04.30
Vol.8 「医者になることはテロと紛争の解決に直接は繋がらないけど命を大切にする点では共通しています」 窪田 有希 さん - 2018.03.31
Vol.7 「NPO法人の共同設立にあたり、アンバサダーという立場から少しでも力になりたいと思いました」 栁瀬 惠介 さん - 2018.02.27
Vol.6 「会社の社会貢献部の責任者やボランティア活動を一緒にしている仲間たちにアクセプトの話をしています」 川北 麻衣 さん - 2018.01.30
Vol.5 「初めはアクセプトの活動内容をよく理解出来ていなかったので、ほんの気持ち程度の額でスタートしました」 小笠原 絢子 さん - 2018.01.21
Vol.4 「自分が経営している飲食店のメニューやHPにアクセプトの紹介文を載せています」 中島 拓也 さん - 2017.12.30
Vol.3 「アクセプトの活動に市民をどう巻き込むかという、自分の研究に関わる点でのアドバイスをしています」 矢部 航 さん - 2017.11.28
Vol.2 「『関心を持つだけでも立派な活動』という永井さんの言葉に押され、参加させていただきました」 鶴田 桂策 さん - 2017.10.19
Vol.1 「寄付で活動をサポートすることに加えて、メンバーの皆さんに会議室の貸し出しをしています」 田村 明宏 さん