活動内容
ケニア

取り残された若者を、
社会変革のリーダーに。

社会の中で排除されテロ・犯罪に加担した人々や、取り残された地域で十分なケアがされていない脆弱な若者たち。彼らが暴力に頼らず、社会変革を担うリーダーとして生きていくための取り組みや、政府機関・地域コミュニティを対象とした研修を展開しています。

ケニアは東アフリカの経済を牽引し、豊かな文化をもつ多民族国家です。しかし、2011年にアフリカ連合の部隊としてケニア軍がソマリアに侵攻すると、いわゆるテロ組織アル・シャバーブによる攻撃がケニアにおいても展開されるようになり、ソマリア国境付近の北東部及び沿岸部に加え、首都ナイロビなどで多くの犠牲者が発生しています。

アル・シャバーブは、ケニアにおいても脆弱な若者たちをリクルートしていると考えられています。特に、失業率の高さから生きていくために窃盗や薬物などの犯罪に手を染める人々も多く、彼らが社会の中で孤立することで、過激化のリスクも高まります。また、テロに加担した受刑者のリハビリテーションや社会復帰支援に関しても、刑務所のキャパシティが圧迫されていることなどを背景として、刑務所での過激主義の拡大や、出所後の再過激化のリスクに繋がっています。

しかし同時に、彼らの多くは18歳から29歳の「若者」世代であり、今後の社会を担う主体者でもあります。私たちは、彼らがテロリストではない道を歩むために、多様な協力者とともに様々な取り組みを実施しています。

1. 脱過激化・社会復帰支援の取り組み

ギャングの若者への脱過激化・社会復帰支援

2013年より、首都ナイロビのソマリア人ギャングを主な対象に、脱過激化・社会復帰支援事業を実施してきました。彼らは地域社会から犯罪者として敬遠されていますが、ソマリア人の若者がギャング組織に加入する背景にはさまざまな要因があります。特に、ケニア社会からの差別やハラスメント、高い失業率や不安定な治安などの厳しい環境下で、自身の身を守るためにギャング組織に加入する若者は少なくありません。にもかかわらず、彼らに対しては十分なケアがされておらず、地域社会で孤立してしまっています。そこで、彼らが自身の可能性に気づき、社会変革の主体者として行動を起こす意識改革プログラムに加え、スキルトレーニングや定期的なカウンセリングなどを長期に渡って提供してきました。こうした取り組みの末、2018年には170名規模の地域三大ギャング組織の一つを解散に導くことができました。現在は、そのほとんどが仕事を得て家族を支えながら、若者としての人生を歩んでいます。

テロ関連受刑者のリハビリテーション・社会復帰支援体制強化

外務省からの資金協力のもと、首都ナイロビ及びモンバサの最高セキュリティ刑務所において、テロ関連受刑者の社会復帰支援体制強化に向けた取り組みを2023年より開始しました。ケアカウンセリング・職業訓練などのリハビリテーション支援プログラムや、それらを行う施設の改築・新築による収容環境の改善、刑務官への研修や地域コミュニティとの相互理解を進める対話イベントの実施を通じて、テロ関連受刑者の社会復帰に向けた支援体制が適切に機能することを目指しています。

2. 過激化防止の取り組み

準スラム地域における若者失業者の起業を通じた収入創出支援

JICAおよび現地NGOとの連携のもと、首都ナイロビの準スラム地域で脆弱な立場に置かれている若者失業者を対象に、収入創出支援を行っています。ケニアの高い失業率を背景に過激化する若者が少なくない中、スマートフォン修理スキルのトレーニングと収入に繋げていくためのビジネススキル・ライフスキル研修に加え、研修後の長期フォローアップなどを通じて、若者が起業を通じた収入創出を実現することで、脆弱な地域における過激化リスクへの抵抗力を養うことを目指しています。

北東部マンデラにおける若者の受け入れセンター

国連人間居住計画(UN-HABITAT)からの要請を受け、ソマリアと国境を接する北東部マンデラで若者の過激化を防ぐ共同プロジェクト「One Stop Youth Resource Centre Project」を実施しています。マンデラは、ソマリアを拠点にするテロ組織アル・シャバーブのリクルーターの存在や中央政府によって周縁化・排斥されてきた歴史により、若者の過激化リスクが極めて高く、実際にソマリアに渡ってテロ組織に加入する者も少なくない地域です。そのような重要性にもかかわらず、頻発するテロ攻撃や誘拐事件、地理的なアクセスの悪さからこれまで国際的な支援から取り残されてきました。私たちは、マンデラ州政府職員への研修、暴力的過激主義対策に関するワークショップ、プロジェクト内でのモジュール作成などを担当しています。

3. 脆弱なコミュニティへの紛争予防・レジリエンス強化の取り組み

トゥルカナ・ガリッサ郡における気候変動及び紛争に対するレジリエンス強化支援

国際移住機関(IOM)のプロジェクト実施パートナーとして、気候変動に脆弱なコミュニティに対する紛争解決ワークショップと職業訓練を実施しています。トゥルカナ郡、ガリッサ郡は人口の大半を牧畜民が占めているものの、気候変動を主な原因とする干ばつの影響で水や牧草地が不足し、多くの家畜が死亡しています。これにより、牧畜民コミュニティ間での限られた資源をめぐる争いや家畜の略奪などが増加しているほか、栄養失調や飢餓のリスクが拡大しています。このような人道状況を改善し、気候変動に脆弱なコミュニティのレジリエンスを強化するために、ワークショップを通じた紛争解決・予防のための行動計画の策定支援や、牧畜民自身の生計向上を目的とした職業訓練を行っています。

偏見を捨てて、俺たちの話を聞いてほしい。
それが俺の社会に対する唯一の願いだ。

— 元ソマリア人ギャング / バルショーショ

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