個人でできること
アンバサダー
の声

Vol.69 井上 淳也 さん

2025年7月10日


私たちの活動を継続的に支えていただいているアクセプト・アンバサダーの声を紹介する本コーナー。

「アンバサダーの声」第69弾は、元NTT東日本執行役員、現在は地方創生のためにインフラ事業を行いながら、一般社団法人「世界のための日本のこころセンター」代表理事としても活躍される井上 淳也さんです。


井上 淳也さん、この度はインタビューへのご協力ありがとうございます!まずは、バックグラウンドやご経歴を教えてください。

これまでの世の中にはない新しいサービスをつくりたいと漠然と考えていた私は、通信のデジタル情報メディア化に可能性を感じ平成元年にNTTに就職しました。その後、インターネット、ブロードバンド、携帯電話という情報革命時代の激動の中、成功や失敗を繰り返しながら長らく新事業の創出、新サービスの開発に携わることができました。その後、東京オリンピック・パラリンピックを支える通信基盤のプロジェクトに大会終了までの7年間携わり、今は建設業のミライト・ワンで、地域創生に貢献できるような新事業の創出に取り組んでいます。

そしてビジネスとは別に、日本の源流を見つめなおすことにより世界への貢献ができると考え、一般社団法人「世界のための日本のこころセンター」の共同代表理事となり、この団体が運営している日本型リベラルアーツ塾「自啓共創塾」で塾長をしています。文字通り、自らを啓き、共に創ることができる次世代リーダーのための塾です。

この2つの活動が目指すのはどちらもより良い社会をつくるということであり、私の中の車の両輪として相乗効果が得られています。

▲日本型リベラルアーツ塾「自啓共創塾」にて登壇される井上様


ITインフラ業界で新事業を創り続けている背景に、古きよき日本のこころを基盤とされていたとのこと、とても興味深いです。何をきっかけに、アクセプト・インターナショナルの活動を知ってくださったのでしょうか?

直接のきっかけは、「子ども時代からのリベラルアーツCo-musubi」代表の井上真祈子さんから教えてもらったことです。聞いてすぐ素晴らしい活動に違いないと思いましたが、詳しく取り組みを拝見してそれが確信に変わりました。

その時に頭に思い浮かんだのは、アフガニスタンで医療活動のみならず真の地域復興に尽力された中村哲さんです。しかし私がその素晴らしい活動を知ったのは亡くなられたあとでした。あとから称賛するのは誰にでもできますが、それより大事なのは今まさに同じような志で活動している人を応援することです。そう思いアクセプト・インターナショナルのアンバサダーになることを決めました。

▲日光東照宮にて、愛犬 金時くんと


テロ・紛争解決に向けて必要だと思われることについて、井上様のお考えをぜひ教えてください。

日々多くの友達と一緒に遊びまわっていた小学生のころは世の中がフラットに見えていました。成長するにつれ、生まれながらの運・不運により簡単には超えられない境遇の違いができることがわかってきて、これを変えるには革命でも起こすしかないなとふと思ったことがあります。だから、とても悲惨な状況に置かれた人がテロに走る気持ちが少しはわかる気がするのです。生まれながらの悪人ではなく、環境が人をそうさせてしまったのではないかと。だからこそ、アクセプト・インターナショナルの活動に共感するのです。

弱肉強食がルールの世界では、弱い人からの闘争はなくなりません。テロ・紛争解決に向けて必要なことは競争による奪い合いではなく、人間に対する愛、自然に対する謙虚さ、生まれてきたこの世界に対する感謝といった共生の気持ちを、すべての人が今よりももうちょっとずつ持つことだと思います。日本人が昔ながらに持っている哲学や思想を、“和”を見つめなおすと、これが詰まっていると確信しています。

▲真夏の川遊び


「生まれながらの悪人ではなく、環境が人をそうさせてしまったのではないか」とのお話、井上様の想いが伝わってきました。 日本のこころ“和”に紛争解決の糸口があるとのこと、もう少し聴かせていただけますか?

「和を以て尊しと為す」からはじまる聖徳太子の『十七条の憲法』第十条には、「人はみな聖人ではなく、凡夫である」と書かれています。そもそも人はみんな違う多様な存在であり、だからこそ話し合い・対話を大事にする、というのが本来の和の概念です。

自分が間違っていて相手が正しいかもしれない。だからみんなで話し合う。正義だとか、絶対の正があるのではなく、それをみんなで創り上げていくという考え方です。

“和”について、昨今では、“和を乱すな”など権力者が人を従わせる同調圧力のように使われることがありますが、それは明治維新以降、日本が西洋化を目指した富国強兵政策に影響されたものです。今こそ、本来の和の概念に立ち返る時ではないかと考えています。

ただ一方で、“和”の難しい点として、平和主義のジレンマがあるとも思っています。争いを好まないがために、争いを引き起こす戦闘的な人に対しても相手の出方を見ながら受け身のコミュニケーションをとってしまいがちです。また、世界に貢献することに対して、少し引っ込み思案だったりすることにもつながります。

でも本当は、平和主義の人も平和を維持するために“戦う”ことが必要だと思います。ここでいう“戦う”とは、国や地域、民族、宗教等、人それぞれ価値観が違う世界の中で、それを超えた人間性に立ち返ることで、勝ち負けではないより良い未来のカタチを本気で探し続けるということです。だからこそ、アクセプト・インターナショナルのように、それを行動で示すことが尊いと思うのです。

〈テロリストになってしまった人の背景を想像し、お互いに同じ人間として対峙していく〉。

アクセプト・インターナショナルは、まさに日本のこころ“和”を体現していると思います。世界の人も、行動の奥にある理念の価値に気づいてくれるのではないかと思います。

平和構築のためにも、先人が遺してくれた“和”を私も受け継ぎたいと思いました。一方でこんな思いも浮かんでしまいます。もし自分がガザで生まれ育ち「和を大切に」と言われたら……。

報道を見ながら本当に心を痛めています。明日自分が殺されるかもしれないときに、その相手に愛情を注ぐことはできないと思います。心理的安全性が無いなかで攻撃的になるのは防衛本能なので、対話するのは非常に難しい。

また、歴史や過去を知らなければ解決できないということもあると思いますが、知ったうえで水に流すことができるかどうか。過去を忘れられるような信頼関係を構築できるかも大事な点だと思いますが、これも本当に大変なことだと思います。

「自啓共創塾」では、他者との対話によるコミュニケーションをとる術を学んでいます。それは他者を論破するのではなく、他者との納得解を見つけることが目的です。

利害の異なる人との着地点を見つけるには、何が正しいのかが先にあるのではなくて、どうしたらお互い納得できるかを目的とする。「どうすべきか」よりも、「どうしたいか」。正義と正義を戦わせるのではなく、お互い我慢することはあっても、不平等感のない答えを導くことがキーだと思います。


これまでのビジネスでのご経験と「自啓共創塾」のお智慧を尽くして、貴重なお話をしてくださりありがとうございます。最後に、読者に向けてメッセージをお願いします!

私が携わっている「自啓共創塾」は次世代リーダーをつくる日本型リベラルアーツ塾です。自然との調和や平和な世の中を大切にする「和」の価値観を持つ日本の良さを世界への貢献に生かしたいと考えている多くの人たちが集まっています。アクセプト・インターナショナルの活動も日本ならではの世界への貢献だと感じているので、そこでも相乗効果を生み出すことができたらと思っています。

アクセプト・インターナショナルの活動は日本人として世界に誇れるものであるとともに、世界を根本からよくするための本質的に最も重要な取り組みではないかと考えています。世界をよりよくする活動を自ら実践することは、なかなか誰もができることではありませんが、そういう方々を応援することは誰にでもできる貢献だと思います。この輪を一緒に広げていきましょう。


今回、直接お話を聴く機会をいただきました。井上様は聞き手の私たちにも関心を向け、紛争などの正解のない問題も一緒に考えてくださり、インタビュー後もあたたかい気持ちで包まれました。井上様のお姿からも、“和”のこころを教えていただいた思いです。

井上様、改めて貴重なお時間をいただき本当にありがとうございました。


インタビュー担当:田中基予美


【読者の皆様へ】
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皆様とともに、この日本から挑戦していくことができれば大変幸甚です。

アンバサダーの声