[2026年9月]
お世話になっております。ニュースレター班の南部です。
今回は国際規範制定に向けた取り組みを推進する若者戦闘員グローバルタスクフォース(GTY)による助成事業についてお届けします。
【国際規範制定の取り組みとその背景について】
私たちはこれまでの活動の中で、いわゆるテロ組織を含む非国家武装組織に多くの若者たちがいること、そして彼らは過激な思想などよりも、誘拐や脅迫、貧困、社会的排除、政府や国際社会への失望などにより暴力に加担し、憎しみの連鎖に巻き込まれてきた現実を見てきました。
そしてこうした若者たちの社会復帰を世界各地で後押しするため、その指針となる国際規範づくりに取り組んでいます。その推進の母体となっているのが、紛争当事者や専門家などによる「若者戦闘員グローバルタスクフォース(GTY)」です。
2024年に設立したGTYですが、2025年からは紛争当事者の社会復帰を支える取り組みや、当事者とともに行う平和構築活動に対する助成事業も行っており、現在は1件あたり最大5,000米ドル(約79万円)を助成しています。
2026年は、昨年の約3倍となる600件以上の応募が世界各地から寄せられました。
その中から紛争解決や持続的な平和の実現に貢献する草の根プロジェクトを選考し、最終的にマリとアフガニスタンの2つのプロジェクトへの助成を決定しました。
それぞれのプロジェクトリーダーから届いたコメントをもとに、その内容をご報告します。
【マリ】元戦闘員への心のケア・農業研修・地域との和解を通じた社会復帰支援
▲プロジェクトリーダーであるブレイマ・ハマ・トゥーレ氏
私が育ち、働いてきたマリ北部のトンブクトゥ州は、10年以上にわたって武力紛争の影響を受けてきました。貧困や絶望のなかで将来への希望を見いだせず、武装組織に関わった若者や加入を強いられた若者がいます。
彼らは組織を離れて地域社会に戻っても、すぐに生活を立て直せるわけではありません。地域の人々から拒絶され、スキルがないため仕事は見つからず、心の傷を抱えていても十分なケアを受けられない。私は、そんな若者たちの姿を間近で見てきました。
一方で、地域の人々も資金や知識が足りず、武装組織から戻ってきた若者たちをどう支えればよいのか分からないという事情があります。若者と地域の間に距離ができたままでは平和な社会を築くどころか、さらに対立が深まってしまう恐れがあります。
私が代表を務める若者主体の団体「CSIDAC」は、若者の社会復帰支援や地域での対話を通じて平和な社会を築くために力を尽くしてきました。
その経験を土台に、今回のプログラムでは武装組織に関わった若者30人を1年間にわたってサポートします。
共に働き、言葉を交わし、信頼を取り戻す
まず大切にしたいのは、若者一人ひとりの心の傷を癒すことです。それぞれの状況に合わせた心のケアや相談支援を通じて、自信や自尊心を取り戻すことを支えます。
また、若者たちが安定した収入を得て暮らせるよう、環境に配慮した野菜栽培や小規模な事業運営の実践的な研修も行います。プログラムが終わった後も若者たちが協力して収入を得ていけるよう、協同組合も設立する予定です。
▲職業訓練の様子
そして、農業を通じて地域の人々との関係性を築き直す取り組みも行います。具体的には、武装組織に関わった若者たちと地域の人々が農業用地をともに整備することから始めていきます。一緒に汗を流して、言葉を交わす。その積み重ねを通じて、互いへの理解を深め、失われた信頼を取り戻していきたいと考えています。
さらに、地域で相談や支援を担う若者も育成します。プログラムが終わってからも、困ったときに身近な場所で相談できる体制を残したいからです。
こうした取り組みを行う根底には、生まれながらにして戦闘員である若者など一人もおらず、すべての若者には平和の担い手となる可能性があるという私自身の信念があります。だからこそ、アクセプト・インターナショナルが同様の信念を持っていることを知った時は、本当に嬉しかったです。
そして、私がこの取り組みに情熱を持って向き合う理由は、私自身がこの地域で生き、若者たちの姿を間近で見てきたからです。私たち自身もこの地域の若者なのです。同じ地域で多くの経験を共有してきたからこそ、彼らが何を願い、何に不満を感じ、どのような現実に直面しているのかを理解しています。
紛争や不安定な状況の中でもこの地域に留まることを選んだ私たちは、武装組織から戻ってきた若者たちと共に、地域の未来を築いていきます。
【アフガニスタン】元紛争当事者の若者による英語教育・職業訓練・心のケアを通じた戦闘員の社会復帰支援
▲プロジェクトリーダーであるアリ・ナジャフィ氏
私が育ったアフガニスタンのバーミヤン州は、長年にわたる紛争と治安の悪化に苦しんできました。貧困や仕事の少なさも重なり、若者たちには将来を選ぶ機会がほとんどありません。自分や家族を守り、生き延びるために武装組織に関わらざるを得ない若者もいます。
そして武装組織から抜け出しても多くの困難が待っています。元戦闘員という理由で地域から拒絶され、ときには家族にも受け入れてもらえない。さらに、仕事に必要な教育や技術を学ぶ機会も新しい生活を始める資金もなく、心の傷に対するケアも十分に受けられません。
私はその難しさを自分自身の経験として知っています。2019年、私は当時実権を握ろうとしていたタリバンからコミュニティを守りたいという思いから、地域の武装組織に関わるという苦渋の決断をしました。組織には半年しかいませんでしたが、そこから抜け出すことは私の人生で最も困難な経験の一つでした。しかし、地域に戻ってからも人生を立て直すための支援や助言、機会はほとんどありませんでした。
だからこそ、自分と似たような境遇にある若者たちが安心して人生をやり直せる道筋をつくりたいと考えました。
まずは、目の前の一人の話を聞くことから
このプロジェクトで私が大切にしているのは、若者たち一人ひとりと向き合い、信頼関係を築くことです。
まず、私自身が一対一あるいは少人数で若者たちと会い、活動の内容を伝えるとともに不安や悩みに耳を傾けます。対話を重ねることで、自分の経験や気持ちを安心して話せる関係を築いていきたいと思っています。
私自身が同じような経験をしたからこそ理解できる気持ちがあり、築ける信頼関係があると信じています。これはアクセプト・インターナショナルの活動とも深く通じ合う部分です。
そして、プログラム終了後も一人ひとりと定期的に連絡を取り、暮らしの状況を確かめながら相談や助言を続ける予定です。
▲リーダーによる対話カウンセリング
また、研修を受けた若者によるグループカウンセリングも行う予定です。参加者同士が経験や困難を分かち合い、心の傷と向き合いながら自信や尊厳を取り戻していける場にしたいと考えています。
自分で未来を選べるように
心のケアとともに、生活を支える収入創出や学びの機会も必要です。
プログラムでは就職の可能性を広げるために英語教育を行うとともに、地域の仕事につながる職業訓練や小規模な事業を始めるためのビジネス研修も行います。学んだことが仕事や収入につながり、自分や家族の暮らしを支える力になることを目指しています。
▲語学(英語)の授業の様子
同時に、家族や地域の長老、リーダーたちと話し合う機会もつくります。若者たちが努力しても地域社会で拒まれ続けては生活を立て直すことは困難です。偏見や差別を減らし、地域の一員として再び迎え入れてもらえるように周囲の人々とも対話を重ねていきます。
私にとってこの活動は、自分がかつて見つけるのに苦労した道を、ほかの若者たちが見つけられるようにするための取り組みです。
若者たちが尊厳と未来への希望を取り戻し、自分の人生を歩みながら地域の平和を築く一員となれるよう、私自身の経験を活かして力を尽くしていきます。
【担当職員 南 優菜からのコメント】
今回の助成事業には、600件以上の応募を頂きました。最終選考では、様々な言語の通訳者にもご協力頂きながら多くの応募者とオンラインで直接お話しし、それぞれの経験や活動への思いを聞いてきました。
応募者の中には、コミュニティの役に立ちたいという強い思いがありながら、これまでこうした助成の対象となってこなかった若者が少なくありません。今回の機会への感謝を伝えてくれる方も多く、支援が決まった若者たちは、不安定な通信環境の中、慣れない報告書の作成に試行錯誤しながら活動の進捗を熱心に伝えてくれています。
GTYでは、当事者の若者によるこうした取り組みを支援するとともに、自らの経験や思いを発信する機会が少ない彼らが、イベント登壇やブログポストの執筆を通してその声を届ける活動にも取り組んでいます。こうした彼ら彼女らの現実に基づいた声の発信は、アクセプトとして進める国際規範づくりに向けた働きかけと補完し合うという意味でも、とても重要だと考えています。
自分たちのコミュニティや世界を変えようと行動する世界各地の紛争当事者の若者たちと、共に歩めることを日々嬉しく思っています。皆さまとも、引き続きこの歩みをご一緒できれば幸いです。
▲ジュネーブの国連人権理事会での口頭声明
【読者の皆様へ】
活動報告記事をお読みいただきありがとうございました。今後も各事業部の活動をわかりやすくお届けしてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
最後に、私たちは月1,500円から活動にご参加いただける「アクセプト・アンバサダー」を募集中です。
世界中の暴力に絡め取られた若者を社会一体となって救い出し、新たな道を歩むことを力強く支え、テロや紛争の解決に繋げるために、この機会にアンバサダーとしてご参加いただけたら幸いです。


