[2026年7月]
いつもお世話になっております。イエメン事業部で現地代表を務めているアムガッドです。今回はイエメン現地からお届けします。
昨今のイラン情勢を受けてイエメンは厳しい状況が続いていますが、私たちは取り残された人々が平和に暮らせるよう、誠心誠意、活動に取り組んでいます。
現地の最新状況について、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。
▲イエメン現地代表のアムガッド
リハビリテーションと捕虜交換の意味
私たちは、武装組織フーシ派のメンバーとして武力紛争に関わり、政府側に拘束された人々(捕虜)への支援を2021年から開始しました。彼らが憎しみの連鎖から抜け出し平和に暮らしていけるよう、ケアカウンセリングや基礎教育、職業訓練、宗教再教育などの社会復帰プログラムを行っています。
そうした支援を経て、かつては武器を手に取っていた彼らも、今では「自分たちこそがイエメンの平和をつくる担い手なんだ」と自分自身を信じられるようになってきました。
▲職業訓練の様子
一方で、私たちのもう一つの大きな取り組みが、彼らが社会復帰するための政府への働きかけ・交渉です。
イエメンでは、政府が拘束しているフーシ派の捕虜と、フーシ派に拘束されている政府側の捕虜を、それぞれ釈放・交換する枠組みが存在しています。
ただし単に交換するだけでは戦闘に逆戻りしてしまうリスクがあるため、あくまで若者たちが希望する場所に戻れるようにするというのが原則です。
例えば「政府側のエリアで生きたい」という場合はそれが実現できるように政府に交渉し、「フーシ派のエリアに戻りたい」という場合でも、再度紛争に関わることがないよう若者に働きかけたうえで釈放しています。
この捕虜交換については、私たちの支援してきた若者たちがその対象になるかどうかも一つの争点です。粘り強く交渉してきた結果、今年7月11日に大規模な捕虜交換が行われる際、私たちの支援対象者も含めることについて合意することができました。
捕虜たちは釈放の知らせを聞いたとき、希望に満ち溢れていました。
「故郷に戻って結婚し、幸せを感じたい」
「家族と一緒に、まずは平穏な毎日を過ごしたい」
「職業訓練を通じて習得したスキルを使って、自分でビジネスを始めたい」
こんな想いを口々に語ってくれました。
また、「自分や家族の誰かが無理やり前線に送り出されることのないよう、家族とともにフーシ派の支配地域から移住したい」という思いを持つ人もいました。
イラン情勢の影響が及ぶ交渉現場
しかし、釈放・捕虜交換が行われるはずだった7月11日の前夜、突然、延期の申し出がありました。
理由はいくつかありますが、その一つが、フーシ派代表団がイランからイエメンに帰国する際の対立です。当時、代表団はフーシ派を支援するイランの前最高指導者ハメネイ師の葬儀に出席していましたが、武力衝突が激しくなるなか、どのようにイエメンへ戻るかで対立していました。
そしてフーシ派の代表団が着陸する予定だったイエメンの空港を政府側が攻撃したのです。理由は、イランがフーシ派に提供した武器が航空機に積まれていたから、というものでした。
私自身とても残念で、気を落としてしまいました。
▲イエメン政府の代表団から、捕虜交換の延期の知らせを受けました
捕虜交換の延期を知った捕虜たちも、前向きな気持ちを一気に失ってしまいました。彼らの多くが「もう特別収容所から出られず、このまま何年もここにいることになるんじゃないか」と、失望してしまったのです。
さらに追い打ちをかけるような出来事がありました。
捕虜交換延期の知らせを聞いた捕虜の一人が、自ら命を絶ってしまったのです。
イスラム教では自殺が禁じられていることもあって、私にとっても本当に衝撃的でした。目の前が真っ暗になり、胸が張り裂ける思いでした。
亡くなった彼は、一生懸命社会復帰プログラムに取り組んでいました。にもかかわらず、なぜこのようなことになってしまったのか。考えても考えても答えは見つからず、大変苦しい出来事でした。
そしてそれは、収容所にいる全員にとっても同じでした。
彼らは大きく落胆し、次のような言葉を口にしました。
「どうせ釈放されないのに、社会復帰プログラムを受け続ける意味なんてあるのか」
「誰も俺たちのことなんて気にしていない」
「俺たちはもう死んだようなものだ」
「こんな惨めな状況なら、死んだほうがましだ」
「もうアクセプトからの支援はいらない。ただ自由になりたい。この収容所から出たいんだ」
私はすぐに彼らの想いに正面から向き合いました。彼らがもう一度希望を持つことが非常に重要だと感じたからです。
そして私自身が希望を持ち続け、それを伝えていかなければ、彼らはさらに絶望を深めてしまうと感じました。
私は彼らと対面し、時間を決めずに一人ひとりからじっくり話を聞きました。そのうえで、彼らに次のような言葉を伝えました。
「希望はある」
「あなたたちはここで本当に長い時間を過ごし、多くのことを学んできた」
「その学びを活かして、新しい自由な人生を始めるまで、あとほんの少しだ」
▲捕虜たちとの対話
▲捕虜全員に希望を伝えていきました
そんな対話を重ねた後、彼らには少しずつ笑顔が戻り、前向きな気持ちを取り戻していることが見てとれました。実際に、次のような声も聞くことができました。
「釈放されたら、現在収容所で勉強している英語をさらに勉強し、海外に留学して自分の世界を広げたい」
釈放・捕虜交換の見通しはまだ立っていませんが、ここで諦める必要は一切ありません。必ず彼らが社会に復帰する日が来ると信じています。それが1日でも早くなるように、これからも尽力していきます。
読者の皆様へ
このような非常に繊細かつ複雑な状況のなかで、捕虜たちを支援することは容易ではありません。誰にでもできることではないと思います。
しかし、誰もがやらないのであれば、私は自分がやらなければならないと思っています。
紛争の根本要因にまで向き合うことが、イエメンの和平の実現に必要なことです。そしてそれはまさに、暴力や憎しみの連鎖に巻き込まれている捕虜たち1人1人に向き合い、彼らが平和に暮らしていくための手助けをすることです。
また、私が捕虜たちと対話するときに何よりも大切にしているのは、彼らがどんな気持ちでいるのか、何を必要としているのかを理解することです。
彼らが何を夢見ているのか。どんな言葉を必要としているのか。
結局のところ、彼らも私たちと同じ人間です。人はより良い方向へ変わっていくことができると信じています。
これからも私は、取り残されてしまった人たちを支え続け、イエメンの平和を実現するために努力していきます。
すべての人が安全な場所で自由に暮らし、イエメンが愛と平和で満たされる日を見るまで、アクセプトが推進する「非常に困難だが本当に必要とされる仕事」を辞めることはないでしょう。
イエメンの人々と、これからを生きる子どもや若者たちのために、これまで取り組んできたことを最後までやり遂げたいと思っています。
最後に、私がここまで活動を続け、彼らに少しずつ前向きな変化を生み出すことができているのは、私たちの活動を信じ、温かいご支援をくださっているアンバサダーをはじめとする日本の皆さまのおかげです。本当にありがとうございます。
これからも情熱を持って、一緒にこの活動を続けていきましょう。
▲捕虜1人1人に希望を伝えた後は握手を交わしました
【読者の皆様へ】
私たちは、月1,500円から活動にご参加いただける「アクセプト・アンバサダー」を募集中です。アンバサダーの皆さまには、モザイク無しの写真で記事をお届けしています。
アムガッドの言うように、私たちの活動はアンバサダーをはじめとする日本の皆さまからのご支援無しでは成り立ちません。ぜひ、この機会にアンバサダーとしてご参加いただけましたら幸いです。


