活動報告
【ケニア事業部】気候変動と紛争の影響を受ける地域での取り組み

ケニア事業部より、気候変動と紛争の影響を受けているトゥルカナ県、ガリッサ県での取り組みをお伝えします。


1. トゥルカナ県、ガリッサ県での取り組みとその背景概要
ケニア事業部は、ギャングを含む若者失業者の収入創出支援を通じた過激化防止に加え、刑務所におけるテロ関連受刑者のリハビリや社会復帰支援の取り組みを実施してきました。ケニアは熾烈な紛争地ではないものの、ソマリアを拠点とするテロ組織アル・シャバーブがテロ攻撃や戦闘員のリクルート、さらには現地民への武器売買を行っているなど、テロ対策の推進において重要な国の一つです。

今回、私たちが取り組みを展開したトゥルカナ県(南スーダンに隣接)およびガリッサ県(ソマリアに隣接)は乾燥地域に位置しており、現地の住民の多くは牧畜を営んでいます。近年の気候変動の影響で厳しい干ばつが続いたことから水や牧草の不足により多くの家畜が死んでしまい、現地民の生計や食料安全保障は大きな影響を受けてきました。そうした中で、水や牧草を巡って民族・士族間における紛争や家畜の奪い合いが頻発し、地域の治安が悪化しているほか、栄養失調や飢餓のリスクが拡大しています。

この問題に対処するため、私たちは国連機関の一つであるIOM(国際移住機関)からの委託を受け、地域コミュニティに対する紛争管理ワークショップ、および継続的な収入創出を目的とした職業訓練・ビジネスマネジメントトレーニングを実施しました。

▲干ばつの影響を受けている現地の様子。


2. 紛争管理ワークショップの開催
トゥルカナ県、ガリッサ県で計4回開催した紛争管理ワークショップでは、地元の長老や政府関係者、元戦闘員、若者、女性リーダー、障がい者、またコミュニティ団体など、平和を構築するうえで欠かせない様々な関係者に参加いただきました。

両県においては、自民族・士族の食料や生活を守るため、他民族・士族との間で家畜の奪い合いや紛争が発生しています。

そこで私たちは、ソマリアなどでの活動から得た知見・経験をもとに、紛争分析の手法、気候変動への対応方法、対話スキルなどの研修を実施しました。また、平和な地域社会の実現に向けたアクションプランの策定をともに行いました。ワークショップ終了後には、複数の参加者から「紛争や気候変動に対する理解度が高まり、アクションプラン作成によって今後の平和構築に対する取り組みの方向性が明らかになった」など声もあがっており、大変有意義なものになりました。

なお、ワークショップ終了から2か月後にはフォローアップセッションを実施し、彼らが外部のNGOや国際機関の支援に依存することなく平和構築のための資金を獲得できるよう、提案書・申請書の書き方についての講義も行いました。

▲紛争管理ワークショップの様子。

3. 職業訓練・ビジネスマネジメントトレーニングの実施
同事業のもう一つの柱として、気候変動の影響を受けた脆弱な若者の収入創出支援をするため、職業訓練及びビジネスマネジメントトレーニングも実施しました。

脆弱性が高いものの、将来的にユースリーダーとして社会問題に率先して取り組む意志のある若者計48名を両県で選定し、現地の技術職人との連携のもと、個人の希望に応じて溶接、配管工事、仕立て、理髪、ヘナタトゥーの職業訓練を実施しました。

また、彼らが適切な事業計画を立てビジネスを起業・発展できるよう、3日間のビジネスマネジメントトレーニングを行いました。トレーニングにおいては、ビジネスと財務管理に関連する市場分析、営業戦略、ホスピタリティの重要性、資金調達の方法、帳簿の作成方法などについて講義しました。なお、本トレーニングは、以前からケニア事業部で行ってきた携帯修理の職業訓練やビジネススキル・ライフスキルの研修開催で得た知見を応用し、内容を充実させたものです。

▲ヘナタトゥーの例。

▲ビジネスマネジメントトレーニングの様子。

さらに、本年1月に実施した機材供与式では、地方政府関係者、コミュニティの代表者及びIOMの同席のもと、職業訓練を終えた若者たちの起業の初期サポートとして、各スキルに応じたスタートアップ機材(大工であればハンマーなど)を供与したほか、各職業訓練コースの受講者がそれぞれビジネスプランを発表し、今後の抱負を述べました。

▲機材供与式の様子。

今回の参加者である若者は経済的な困窮やそれに伴う社会的な孤立から、武器を手に取ってしまうケースも珍しくありません。こうした背景を踏まえ、本取り組みは地域の経済発展と若者の自立を促すことで、平和への貢献及び気候変動への対応力の強化を目指してきました。参加者からは、ビジネスを通じて地域社会へ積極的に貢献したいという強い意欲も見られており、紛争管理ワークショップとの相乗効果から大変価値のあるものとなりました。

4. 今後に向けて
アクセプトとしては、初の気候変動を主眼に置いた本事業となりました。本事業を通じて得た知見やネットワークを活かし、今後も同分野での事業拡大及びインパクトの最大化に繋げていければと考えています。

憎しみの連鎖をほどくための活動を継続・加速させてまいりますので、今後も温かなご支援をどうぞよろしくお願いいたします。




私たち独自の活動は、毎月1,500円から活動にご参加いただける「アクセプト・アンバサダー」をはじめとした皆様からのご支援があってこそ成り立っています。

しかし、暴力に絡め取られた若者たちをより多く救い出し、新たな道を力強く支え、平和な世界の実現に繋げるためには、まだまだ力不足です。

皆様とともに、この日本からテロ・紛争の解決に挑戦していくことができれば大変幸甚です。

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