[2024年3月]
私たちは、海外において主にイスラム教徒(ムスリム)の方々と仕事をしてきた経験や知見を活かして、日本国内において言語や文化の壁から特に取り残されがちな在日ムスリムへの支援を2020年より実施しています。
今回は、九州で唯一モスク(イスラム教の礼拝所)がない佐賀県での居場所づくりと多文化共生に向けた取り組みについてお伝えします。
佐賀県でのイフタール開催
佐賀県には九州で唯一モスクがありません。以前は佐賀大学にある一室が礼拝の場として開放されていましたが、コロナ禍でさまざまな制限がかかったことで、学生以外は利用できなくなった上、金曜日のみ使用可能という状況が続いています。また、公園などの公共スペースで集団礼拝を行うことも簡単ではありません。
そのため、コミュニティで結束することが重視されているムスリムにとっては、礼拝はもちろん、情報交換や交流ができるような居場所がないことは、大きな課題となっています。
そこで、私たちは彼らの居場所作りをサポートすることを将来的な目標の一つに据え、その第一歩として、ラマダン期間中である3月24日にイフタールの食事会を開催しました。イフタールとは断食明けの最初の食事で、家族やコミュニティとともに過ごすのが一般的です。
今回は佐賀県在住の日本人も招待し、イスラム教の温かい文化に関するレクチャーに加え、礼拝やヒジャーブ(女性の方が被るスカーフ)も体験していただきました。
食事会では、インド米と鶏肉を炊き込んだビリヤニや、ニンジンやキュウリのピクルスなどを提供し、日本人と在日ムスリムが、それぞれの文化や慣習を話し合いながら食事を囲みました。
▲ピクルスとえびせんべいを作る様子
▲現地の高校生とムスリムの参加者との交流の様子
▲イフタールの様子
日本人の参加者からは「イスラム教の考え方や習慣を学ぶ機会になった。ムスリムの方々も誇らしく教えてくれた」や「イスラム国のイメージがあり不安もあったが、イスラム教そのものは平和的な宗教なのだとわかった」という声が聞かれました。
在日ムスリムの方からは「ムスリムの仲間たちと新たに出会うことができて幸せだった」や「佐賀市⺠の方にイスラム教についての積極的なイメージの紹介ができて良かった」といった意見をいただきました。
他方、「佐賀県にはモスクがないので不安になる。モスクは祈りの場というだけではなく、様々な方々と交流し、想いを共有する場でもある。モスクがあることで、様々な問題が解決されていくと思う」といったご意見も寄せられ、改めて佐賀の在日ムスリムの方々にとっての課題を認識する機会となりました。
なお、今回の活動は佐賀新聞にも取り上げていただいており、以下URLより当日の様子を動画で閲覧いただくことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=sfNPWZQXwkY
▲イフタール後の礼拝の様子
在日ムスリムの方々が孤立することなく、地域コミュニティや他のムスリムとの交流を深めることは、外国人が今後増えていく日本社会における多文化共生を考える上で非常に重要です。また、モスク間の情報共有と連携も欠かせません。
今後も、国籍や宗教、価値観が異なる人々が互いを理解し合える場を日本国内においても創っていくとともに、全国のモスク間での連携を強化しながら、在日ムスリムを含む外国人の方々が自ら課題を解決していけるよう働きかけてまいります。
▲福岡モスクとの連携
なお、私たちはニューヨークやジュネーブなどを舞台に新たな国際規範を創るための働きかけも行っていますが、その実現のためには世界で20億人以上いるムスリムからの理解や支持が必須です。そのため、国内での活動を通じた仲間集めは、実はこうしたところにも寄与しています。
今後も憎しみの連鎖をほどくべく国内外で必要とされている活動を続けてまいりますので、どうか引き続き温かなご支援をいただけますと幸いです。
【読者の皆様へ】
2024年4月現在、ともに問題解決に向けて歩む「アクセプト・アンバサダー」200名募集キャンペーンを開催中です。
この機会にぜひ、皆様とともに、日本や世界で取り残されている方々の問題解決に挑戦していくことができれば大変幸甚です。
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