[2025年1月]

今回は、イエメンのタイズ県で新たに開始した言語教育クラスと、マアリブ県でのミシンを活用した職業訓練についてご報告いたします。
1. タイズ県での言語教育クラスの開始
イエメンのタイズ県は長引く紛争の最前線であり、民間人の犠牲者も多い地域です。
私たちは、タイズ県の特別捕虜収容所にて、反政府武装勢力であるフーシ派の構成員だった若者たちを支援しています。これまで生活物資の提供や本棚の設置、職業訓練、ケアカウンセリング、宗教再教育など、包括的なリハビリテーション支援と社会復帰支援を行ってきました。
そうした中で今回、戦争捕虜への言語教育クラスを開始しました。
イエメンの戦争捕虜の中には、若くして武装組織に加入せざるを得なかったことで言語を学ぶ機会がなかった方や、経済的困窮により学校に通う機会がなかった方が多くいることから、基本的な読み書きができない若者も少なくありません。そのため、イエメンの公用語であるアラビア語とともに、英語の授業も実施しています。
英語は、将来的な彼らの選択肢を広げるためにカリキュラムに含めました。英語を理解できれば海外の情報にもアクセスしやすくなり、彼らの視野を広げるきっかけとなります。また、社会復帰後も継続的に学習するための一助となることを期待しています。
なお、授業実施にあたっては教科書や文房具も提供しています。

▲言語教育クラスで使用しているノート。
今回の取り組みでは、受益者である戦争捕虜の中から2名を抜擢し、言語教育クラスの講師を担当してもらいました。釈放後に彼らが平和の担い手として社会に貢献していくことも見据え、彼ら自身が能力を開花できるような場を創ることを狙いとしています。
実際に言語教育クラスに参加している若者たちの声を聞くこともできました!
教育に参加した若者:
「捕虜の中から講師を選んだことは、とても意義のあることだと思います。講師を務める彼とは気軽に話せる関係で、彼も私たちの学びになるように、一生懸命に教えてくれているのがわかるのです。また、教室内だけでなく、独房内でも学習のフォローアップを続けてくれています」。
「以前は完全に希望を失い、絶望していましたが、このプログラムのおかげで再び希望を持てるようになりました。授業を受けるたびに、自分が成長しているのを感じます」。
講師を勤めた若者:
「私たちを信じ、講師という貴重な機会をくれたことに心から感謝します。おかげで自信を持つことができました。アクセプトや寄付者の皆さま、本当にありがとうございます。私たちはこれまで、社会の中で誰にも気にかけてもらえないと感じていましたが、皆さまのおかげで希望を持つことができています。これからもどうぞよろしくお願いいたします」。
今後も言語教育クラスをはじめとした包括的なプログラムを通じて、彼らが平和の担い手としての可能性を広げられるよう努めてまいります。
2. マアリブ県での洋裁スキルの職業訓練
マアリブ県は、現地政府・軍の拠点があるなど戦略的に重要な場所です。私たちはタイズ県と同様、特別捕虜収容所でリハビリテーション・社会復帰支援を行っており、昨年はその取り組み拡大のために新たなリハビリ施設も建設しました。
このリハビリ施設において、洋裁スキルの職業訓練を試験的に実施しています。
イエメンでは、イスラム教の祝祭日や、毎週金曜日の礼拝の時、伝統的な服装を身に付ける習慣があるなど、洋裁の需要が見込まれます。社会復帰後の安定した収入源を確保し、持続的に平和な生活を送るための選択肢のひとつとして、洋裁スキルの習得は有用です。
プログラムでは、彼らが基本的な布の縫い方やミシンの操作方法を学ぶことから始めています。実技を通じて「社会復帰後に役立つ技術が身につく」と実感し、自立のイメージが湧くことで、彼らのモチベーション向上にもつながっていきます。今回の試験運用で得た学びを活かし、本格導入に向けた準備を進めてまいります。


▲新設したリハビリ施設における洋裁の職業訓練
なお、現地ではバイク修理の需要も一定程度あることから、バイク修理の職業訓練の実施も計画しています。今後も現地のニーズに応じたさまざまな可能性を検討してまいります。
3. 今後の展望
タイズ県やマアリブ県のような紛争の最前線へのアクセスは容易ではなく、国際機関などによる人道支援も十分ではありません。その中でもリスクの高いフーシ派の戦争捕虜は究極的に取り残されています。
さらに、フーシ派とイエメン暫定政府との間での「捕虜交換」の交渉は何度も破談し、停滞しています。捕虜交換とは、フーシ派・イエメン政府がそれぞれ持っている捕虜を解放し、交換するための交渉です。
ただし、単なる「交換」の場合、若者たちが再びフーシ派に戻ってしまうことを意味するため、たちは彼らの「釈放」を実現し、彼らが望む場所に戻るための働きかけも行っています。
言語教育クラスや職業訓練などを通じて彼らが「平和の担い手」となるための支援を行うと同時に、こうしたトップレベルでの働きかけも粘り強く行なっていきます。
一朝一夕にいかない問題ではありますが、皆さまの温かなご支援を何卒よろしくお願いいたします。
【読者の皆様へ】
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