活動報告
【イエメン事業部】マアリブ県のリハビリ施設建設 ~若者が武力に頼らない未来を目指して~

[2024年7月]

私たちの活動するイエメンでは、武装勢力フーシ派とイエメン暫定政府との間での10年以上にわたる紛争が今も続いており、450万人以上が国内で避難を余儀なくされ、全人口の半数以上が人道支援を必要とする「世界最悪の人道危機」と呼ばれる状況が続いています。

そんなイエメンの中でも紛争の最前線の一つであり、国際的な支援が十分に行き届いていないタイズ県とマアリブ県にて、若者が武器を置き、憎しみの連鎖から離脱するための取り組みを行っています。また、収容期限が定められていない戦争捕虜の解放に向けて、現地政府や軍との交渉もこれまでに行ってきました。

今回は、完成間近のマアリブ県でのリハビリテーション(以下、リハビリ)施設の建設状況や、国内避難民への支援状況などについてお伝えします。


1.マアリブ県でのリハビリ施設の建設状況
マアリブ県は、武装勢力フーシ派の支配領域と隣接する地域で、イエメン暫定政府軍の中心拠点にもなっていることから、私たちが同じく活動するタイズ県よりも戦争捕虜の数がさらに多いエリアです。

これまでマアリブ県では、特別戦争捕虜収容所においてケアカウンセリング、生活物資や本の提供を通じた教育面での支援などを行ってきました。また、本格的なリハビリテーション支援の開始・運用や捕虜の解放に向けて、政府や軍との交渉もしてきました。

そんな中、職業訓練を行うホール、医務室、ケアカウンセリングルームなどを備えたリハビリ施設が間もなく完成を迎えます。イスラエルのガザ侵攻以降、フーシ派による武力行使が活発になっており、現地情勢が悪化していることから各交渉もストップしてしまい遅延しておりましたが、ようやくリハビリプログラム提供の本格化が近づいてきました。

▲リハビリ施設の外観。

リハビリ施設にて実施予定の職業訓練では、洋裁やバイク修理のトレーニングを提供します。イエメンでは、イスラーム教の重要な祝祭であるイードや毎週金曜日の礼拝の際に、伝統的な服装を身に付ける習慣があるため、洋裁には一定の需要と収入が見込まれます。バイク修理は、現地政府からの勧めもあり、当法人として初めて導入していく予定です。施設の完成次第、必要な備品・機材を調達したうえで、職業訓練を開始します。

また、先行実施中であった医師・看護師による医療診断では、身体面のケアに加えて、専門の医師による心理面のケアも開始しました。戦争捕虜の中には武力紛争により身体面にダメージを受けているだけではなく、過酷な戦闘の経験から心理的なトラウマやダメージを抱えている者や、収容期限がないことによる先の見えない不安を抱えている者も多く、心理面のケアのニーズも高いのです。

リハビリ施設が完成次第、こうした職業訓練や医療支援、さらにはイスラーム教再教育などを含めた包括的なリハビリプログラムを本格的に提供していきます。

マアリブ県のような紛争の最前線へのアクセスは容易ではなく、国際機関などからの人道支援も十分ではありません。さらに、その中でもリスクの高いフーシ派の戦争捕虜への支援はやり手がおらず、将来への無限の可能性を持つ若者1人1人への支援もまた不足しています。こうした状況下で取り残されてしまった若者たちが、リハビリプログラムを通じて、武器に頼ることのない将来を実現していけるよう、今後も支援を続けてまいります。


2.国内避難民への支援
民間財団からの支援をもとに、戦争捕虜だけではなく、武力紛争によって被害を受けている国内避難民への支援も開始しました。今回の支援では、戦闘や攻撃により故郷からの避難を余儀なくされただけでなく、武力紛争によって身体面に障害を負った方を対象としています。

具体的な支援内容としては、医療面の心身のケアに加えて、特別戦争捕虜収容所での実施に先駆けて、バイク修理の職業訓練を提供しています。

▲国内避難民への支援。

▲バイク修理のスキルトレーニング。

私たちの主な活動地であるソマリアでは、かつてテロ組織にいた人々と地域社会の双方に対する支援、および相互理解の促進と和解に向けた対話の場づくりを行っていますが、イエメンにおいても戦争捕虜と国内避難民の双方に対する支援に加えて、対話を通じた和解の実現を同時並行で目指しています。

紛争中であっても、こうした包括的な支援を通じて、イエメン和平の実現に向けて尽力してまいります。今後とも温かなご支援をどうぞよろしくお願いいたします。



【読者の皆様へ】
月1,500円から活動にご参加いただける「アクセプト・アンバサダー」には、一般公開するうえでセキュリティ上のリスクのあるリハビリ施設内部の写真などもお届けしています。

暴力に絡め取られた若者たちをより多く救い出し、新たな道を歩むことを力強く支え、テロや紛争の解決に繋げるために、この機会にアンバサダーとしてご参加いただけたら幸いです。

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