活動報告
【国際規範制定チーム】カナダにおける国際シンポジウムの開催

[2025年12月]



11月24日、カナダにおいて、オタワ大学、当法人、そして当法人が主導する若者戦闘員グローバルタスクフォース(Global Taskforce for Youth Combatants:GTY)の共催により、国際シンポジウム「―若者戦闘員を平和の担い手へと変えるために― 国際規範とグローバルアジェンダが果たす役割」を開催しました。

本シンポジウムでは、持続可能な開発目標(SDGs)、国連ユース戦略、女性・平和・安全保障(WPS)、青年・平和・安全保障(YPS)といったグローバルアジェンダを踏まえ、非国家武装組織に関わる若者(Youth Associated with Non-State Armed Groups:YANSAG)に関する、見過ごされてきた課題に焦点を当てました。特に、子ども兵とは異なり18歳を境に支援の対象外となってしまう若者戦闘員のエンパワーメントと社会への再統合について、根本的な紛争解決の観点から国際社会が果たすべき役割について議論を深めました。

シンポジウムは、カナダの外務大臣議会担当補佐官でもあるロバート・オリファント議員による挨拶で開会し、その後、当法人の代表永井オタワ大学ニシャ・シャー教授(カナダ平和安全保障研究所副所長)、ジャスティン・ピシェ教授(社会科学部犯罪学科准教授)、サンドラ・メイニャント氏(プラン・インターナショナル、子ども兵に関するアドバイザー)、イエメンの元子ども兵でGTYメンバーであるアハメド・ハメド氏らが対面、及びオンラインで登壇しました。登壇者らは、紛争解決、平和構築、安全保障、若者のエンパワーメント、子ども兵・若者戦闘員の課題、若者戦闘員の権利やエンパワーメントに関する国際規範・グローバルアジェンダの役割や必要性などの観点から議論を行い、カナダと日本が果たすべき役割について意見を共有しました。



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ここでは、こうした議題を包括してカナダと日本の役割について語って頂いたロバート・オリファント議員の開会挨拶を一部抜粋してご紹介します。

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「本日ここにお招き頂き、大変嬉しく思っております。理由はいくつかありますが、一つには、カナダと日本がここ数年にわたり築いてきた重要な二国間関係があります。私たちは植民地の歴史や言語的背景こそ共有していませんが、平和と安全保障、テロ対策への取り組み、そして若者を戦争から解放する機会を提供することに対して、共通のコミットメントを有しています。

私が今回の招待を受け入れたいと思った1つ目の理由は、日本と共に、そして世界の様々な場所で行ってきた取り組みを継続し、発展させる機会だと考えたからです。2つ目の理由は、私たちが生きている世界が非常に脆弱であるからです。今週末の2日間、私はハリファックス国際安全保障フォーラムに出席しました。世界の現在の脅威や状況を評価する中で、防衛問題、安全保障問題、平和問題、そして世界におけるカナダの立ち位置について考える上で、常に興味深い場です。また、カナダが歴史的に関わってきた三つの活動、すなわち平和構築・平和創造(和平仲介)・平和維持における役割について考える場でもあります。しかし、ここからは個人としての意見ですが、必ずしもそうした場で我々が、カナダやカナダ国民が望んでいるレベルで関与しているとは言えません。

ですから私は今、ひとりのカナダ人として謙虚な気持ちで皆さんの前に立っています。というのも、私たちは世界の中で非常に平和な生活を送っていますが、世界そのものは平和ではないからです。私たちは、地球上で激しく燃え続ける戦争や内戦、さらには国境を越えた戦争を目にしており、こうしたものが毎日のように私たちの注意を引き続けています。私たちが平和の問題に関与し、状況を理解している一方で、世界が平和をもたらすことに失敗している、という現実も認めなければなりません。

そのような状況の中で、特に私がここ数年で多くの時間を過ごしてきたアフリカでは、現在まさに約30件の戦争が起きています。そしてこうした戦争や不安定な状況による影響は、女性や少女に特に大きく及んでいます。昨年、私はエチオピアを訪れました。2021年から2023年の間に、ティグレの内戦で約60万人が命を落としました。私は、元女性戦闘員約400人が暮らすシェルターを訪れました。そこには、戦闘員として戦争を生き延びた女性400人と、395人の赤ん坊がいました。考えてみてください。戦争から戻ってきた女性が400人いて、その内の395人が兵士として戦う中で妊娠したのです。女性に対する暴力は現実です。彼女たちの多くが戦争の中で性的暴力や強姦の被害を受けています。これは、戦争が起こる度に女性と少女が不均衡に暴力の被害を受けることを想起させます。

「女性・平和・安全保障(WPS)」は、私たち政府の議題において依然として非常に重要な位置を占めています。また、「若者・平和・安全保障(YPS)」も同様です。これらは、持続可能で安定した平和を築くための枠組みです。

何度も証明されている通り、女性が平和構築、平和創造(和平仲介)、平和維持に関わることで、その平和はより持続可能なものになります。私たちは女性を議論の場に招き入れる必要があります。非国家主体や暴力組織への新たな参加者としてではなく、平和構築の主体者として、女性をテーブルに迎え入れなければならないのです。

男性も同様です。そして私たちは常に、これは女性だけの問題ではなく男性の問題でもあると言い続けています。平和構築は、カナダ人として取り組むべき課題でもあるのです。若者たちは、非国家主体の民兵組織だけでなく、国家主体によって子ども兵として徴用されることもあります。カナダは、世界における子ども兵の徴用、訓練、配備に対して、引き続き取り組みを行っていきます。カナダ軍退役中将で元上院議員でもあるロメオ・ダレール氏は私にとってのヒーローですが、彼の子ども兵問題に対する取り組みは、日々私の心の中に残っています。あまりにも多くの子どもたちが暴力に巻き込まれており、彼らは非国家主体、国家主体のいずれによっても取り込まれやすい状況にあります。

私たちの「女性・平和・安全保障(WPS)」に関する国家行動計画は、平和に関する包括的な基盤を提供するものです。これは10の連邦省庁を結集した総合的かつ協調的なアプローチであり、市民社会団体に正式な役割を与える仕組みも確立しています。市民社会の声はかつてないほど重要であり、ジェンダー平等や女性の権利、少女の権利を世界中で推進していきます。

本日お伝えしたいのは、今日も各省庁と議論を重ねた上でですが、私たちはジェンダー平等の推進に対して一切の揺るぎなく、特に戦争や戦場、扮装周辺地域における女性や少女に対する暴力の問題を、平和構築の対話や活動の最前線で取り扱うことに全力で取り組んでいる、ということです。 私たちは一人でこれを行っているわけではありません。カナダは協力的に取り組むことを重視しており、既存のパートナーとも、新たなパートナーとも二国間で協力しています。例えば、私がエチオピアに訪れた直近の訪問の一つですが、その際日本大使館を尋ねました。そこでは、カナダと日本が若者の過激化対策、若者の非過激化支援に関するプロジェクトで協力しており、カナダの専門知識と日本の専門知識を組み合わせて二国間で取り組んでいました。このように、カナダは世界中の協力に前向きなパートナーとともに、ノルウェー、スイス、ドイツ、フランス、時にはアメリカとも協力し、互いの経験や専門知識を活かして二国間のプロジェクトに取り組んでいます。

カナダは多国間での協力にも全力で取り組んでいます。国連は決して完璧な組織ではありません。国連とその諸機関は、その有効性に関する継続的な評価を必要としていますが、同時に継続的な支援も必要としています。もし私たちが国連やその機関、組織を支援しなければ、私たちの世界はより貧しいものとなってしまいます。だからこそ、カナダはそうした取り組みを守り続けます。

カナダは、国連や国際裁判所、国内の司法機関、国際司法裁判所など、今日の平和のためだけでなく、戦争が発生した際の責任追及のためにも最適な手段を確保する必要があると主張し続けます。そして私たちは、自国が参加するあらゆる場でこれを実践していきます。G7やG20においても同様です。アフリカ大陸で初めて開催されたG20は、重要な前進でした。私たちは常に、アフリカの問題にはアフリカの解決策、アジアの問題にはアジアの解決策、という理解のもとで働いています。しかし同時にカナダは、そのプロセスを後押しし、支援し、カナダ国民が望み価値あるものとしてきた価値観を体現することができます。

私たちは、G7やG20、NATOのパートナー、OCEやOECDのパートナーなど、あらゆる多国間フォーラムで協力して取り組みます。カナダは重要なあらゆる国際的なクラブの一員であり、フランコフォニー、コモンウェルス、OSCE、ASEANなど、世界各地で平和と連帯を実現するためのパートナーシップに関与しています。

カナダはもっとできると、私は認識しています。市民社会もまた前に進み、役割を果たすことができます。カナダは今、防衛・安全保障体制の大規模な再整備を進めています。私たちが正しい方法でこの改革を行うために、皆さんの声、皆さんの知恵、考えが必要です。 私たちは NATO へのコミットメントを維持し、さらに強化する必要がありますが、カナダの価値、すなわち平和、人間の尊厳、人権、国際法を常に最優先に据えた形で実行していく必要があります。これこそが、私たちが今後も続けていくことです。

私たちはこれらの問題解決を引き続き推し進めていきます。私たちは常に完璧ではありませんが、カナダ国民は私たちが努力して成果を出すことを望んでいると、私は信じています。どうもありがとうございました。」


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