中部ガルムドゥグ州 投降兵リハビリセンターの設立背景
ソマリア事業部は、主に首都モガディシュで、いわゆるテロ組織アル・シャバーブからの逮捕者や投降兵の脱過激化・社会復帰支援と、南部ローワー・シャベレ州にてアル・シャバーブからの投降(脱退)を促進するオペレーションを展開しています。
2021年12月からはそれらに加えて、同国中部ガルムドゥグ州ドゥサマレブにて、新たにアル・シャバーブからの投降兵を受け入れるリハビリセンターを開設しました。
▲リハビリセンター外観。ソマリア政府と私たちとの協働で運営されています。
▲センター内の寝室。ここで投降兵の若者が寝泊まりします。
ガルムドゥグ州は東部の約半分がテロ組織アル・シャバーブに支配されているなど、同国の紛争解決の文脈において極めて重要な場所のひとつですが、仮に武器を捨ててやり直そうとした若者がいたとしても、適切な保護やケアがなされていませんでした。
その背景には、ソマリア社会を特徴づける「氏族(クラン)」の概念があります。氏族とは、父系の血縁関係に基づいたネットワークであり、往々にして地理的に隣接しています。そのため、北部ソマリアと南部ソマリアとではそれぞれの地域で主力となる氏族は異なります。日本の戦国時代に、相模(現在の神奈川県)では北条氏が、甲斐(現在の山梨県)では武田氏が、それぞれの地を治めていた構図と似ています。
そのため、仮に中部ガルムドゥグ州でアル・シャバーブを抜けた若者がいたとしても、例えばそこから離れた首都モガディシュにあるリハビリセンターに送られることを望む者がいなかったのです。そこで、ガルムドゥグ州で若者を受け入れることができるよう、同州史上初となる投降兵のリハビリテーションセンターを開設・運営する運びとなりました。
投降兵リハビリセンターの進捗
センターでは、ソマリ語の読み書き・算数・理科・社会などの基礎教育、イスラーム教再教育ゼミ、ケアカウンセリング、大工の職業訓練などの包括的なプログラムを提供しています。
また、地域コミュニティの代表者との対話や説明会に加え、地元のラジオ局から情報発信を行うことで、アル・シャバーブにいる若者や、組織を抜け出したにも関わらず地域で取り残されている人々にリーチしていく取り組みも行なっています。
▲大工の職業訓練に励む投降兵の様子
本センターでは運営開始から1年間で25名を受け入れることができました。加えて、私たちが最前線で配布している投降リーフレットを見て組織を抜け出してきた末、私たちのセンター以外に送致・保護された若者も数多く存在しています。
また、2022年12月には本センター初の卒業生を2名送り出しました。記念としてレモンの木の植林も行い、彼の親戚も出席した再出発は大変感動的なものとなりました。
▲初の卒業生。卒業を記念したレモンの植林の様子。
センターの受け入れ可能人数はまだ現時点では少ないため、部屋の増築も含めてリソースを確保し、より多くの若者がやり直しの準備をするための拠点としてさらに発展させていく所存です。どうか引き続き温かなご支援のほど何卒よろしくお願いいたします。
政府の意向に左右されない私たち独自の活動は、毎月1500円から活動にご参加いただける「アクセプト・アンバサダー」をはじめとした皆様からのご支援があってこそ成り立っています。
皆様とともに、この日本からテロ・紛争の解決に挑戦していくことができれば大変幸甚です。
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