活動報告
【海外事業局】ニューヨークでの国際シンポジウム開催

海外事業局では、ソマリアやイエメンなど現地での取り組みに加え、いわゆるテロ組織などの武装勢力に関わっている/いた若者を国際的に保護する枠組みを制定するための活動も行っています。

今回はそうした国際規範制定の取り組みの一環で今年10月に開催した、国際シンポジウムについてお届けします。


1. ニューヨークにおける国際シンポジウムの開催目的/参加者
10月23日に当法人初の国際シンポジウムをニューヨークにて開催しました。本シンポジウムを主催した目的は、「非国家武装集団に関わる若者(Youth Associated with Non-State Armed Groups: YANSAG)」を取り巻く状況や問題を様々な観点から理解を深め、取り残されてきた彼ら独自のニーズに対応する取り組みの議論を深めることです。また、彼らを支援するための国際的なネットワークをニューヨークを軸に構築することも目的としています。

本シンポジウムでは、国連日本政府代表部大使の山中修氏をはじめとする国際政策立案者や平和構築分野の有識者、ビジネスセクター、また当事者であるYANSAGにもご登壇いただき、多様な角度からディスカッションを行いました。以下にそのディスカッションの様子を抜粋してお伝えします。


2. シンポジウムでのディスカッション
【オープニング】
本シンポジウムは、山中修氏、ジュネーブ・アカデミー政策研究部門責任者のエリカ・ハーパー氏より、開催にあたってのお言葉を頂戴し、開始されました。

山中修氏:
若者は無限の可能性を秘めています。教育によって彼らを過激な思想から保護し、彼らの可能性を引き出すことが重要です。このシンポジウムが契機となり、国際社会からより多くの関心がYANSAGに寄せられることを切に願います」

エリカ・ハーパー氏:
「テロや紛争の問題に対して、武力のみで解決を試みるのではなく、その根本原因である政治・社会の体制や若者の成長機会損失に焦点を当て改善することが重要です」

▲(左)山中修氏、(右)エリカ・ハーパー氏

【代表理事・永井による基調講演】
代表理事・永井による基調講演では、当法人のこれまでの活動実績や4カ国合計120名以上のYANSAGへの調査を元にした研究結果を発表し、YANSAGの平和の担い手としてのユニークな可能性や、彼らが必要とする支援・法的な枠組みについて述べました。永井のスピーチの後には、ソマリア・インドネシア・フィリピン・コロンビアから代表して4名のYANSAGがオンラインで登壇し、「元当事者として世界に伝えたいこと」をテーマに4名それぞれが発言を行い、永井と共に彼らを取り巻く環境や課題についてディスカッションを行いました。

代表・永井:
「YANSAGは18歳未満の子どもとは異なり、彼らの権利や若者としての可能性を国際的に保護する枠組みはなく、憎しみの連鎖から脱して社会に戻っていくことが困難な状況に置かれています。彼らが武器を置くためには、彼らの複雑な状況に合わせて保護するための現場でのサポートや、法的な枠組みなど包括的なアプローチが必要不可欠なのです。さらに、彼らの経験や考えを共有するための場を作り、彼ら自身の声を聞くことが大切だと考えます。

彼らはそれぞれが複雑な経験を持っているからこそ、極めてユニークな平和の担い手となる可能性を秘めています。平和や社会の安定の実現において彼らこそ多くの局面で重要な存在となり、世界にインパクトを与えるはずです

ソマリアの元アル・シャバーブのYANSAG-ユスフ氏:
「まずは私が過去に犯した過ちについて世界に謝罪したいです。そして、どうか過去の過ちを元に私たちに差別や偏見の眼差しを向けないで欲しい。私は今、世界平和や国際社会に貢献できる人物であろうとしています

▲基調講演で演説する永井。

▲YANSAG(オンライン登壇)が世界へのメッセージを発信する様子。

【パネルディスカッション-第一部】
本シンポジウムのメインイベントであるパネルディスカッションは、第一部と第二部に分けて行われました。第一部では、平和構築分野の国際コンサルタントとしてシエラレオネ等のアフリカ諸国で若者の研究をしているマーク・ソマーズ氏、ニューヨーク大学臨床教授のトーマス・ヒル氏、ソマリア・コロンビアのYANSAG2名が登壇し、「世界の平和と安全保障におけるYANSAGの役割」をテーマにディスカッションを行いました。

マーク・ソマーズ氏:
「多くの若者は明日を担うリーダーだと国際社会に認識されています。しかし、社会から注目されるのは、質の高い教育を受けた一部のエリートの若者に過ぎません。YANSAGは、国際社会や地域のコミュニティから完全に疎外され、彼らが注目される機会はほとんどありません。そのような脆弱な若者が社会からの承認を得て、リーダーとして再び社会に関わることは、社会の安定に向けて大変重要であると考えます

トーマス・ヒル氏:
「彼らの背景や経験の特殊性を考慮すると、彼らに合わせたアプローチが重要です。典型的なエリート育成をベースにしたプログラムではなく、各地域独自のニーズ・状況に合わせたエンパワーメントプログラムを彼らと共に構想し、彼らが平和の担い手として自ら変化するための仕組みを作り上げることが重要だと考えます」

コロンビアの元コロンビア革命軍(FARC)のYANSAG-マーリー氏:
「現在、私は学校や交流会等における若者たちへの教育の場を通じて、コロンビアの平和構築に貢献しようと努めています。 過去の経験を彼らに共有し、若者の教育へのアクセスと経済活動への参加の重要性を強調してきました。これらの取り組みによって、若者が暴力に走るのを防ぐことができると信じています」

▲(左)トーマス・ヒル氏、(中)マーク・ソマーズ氏。
ビデオ通話でYANSAGも交えてディスカッションを行う模様。

【パネルディスカッション-第二部】
第二部では、国連国際学校で教鞭を執り、ウガンダ等の難民キャンプでも教育支援に取り組む津田和男氏、日系企業でCSO(Chief Sustainability Officer)を務める妹川久人氏、フィリピンで元兵士の社会復帰支援を行うNGO THUMA代表のクザイマ・マランダ氏、フィリピン・インドネシアのYANSAG2名に登壇いただき、「YANSAGを取り巻く課題の解決と支援」をテーマにディスカッションを行いました。

津田和男氏:
YANSAG自身が大志を持つことが最も重要だと考えます。私たちは、彼らが大志を持つためにはどうすべきなのか、を考えるべきです」

▲津田和男氏と永井のディスカッション。

妹川久人氏:
「CSV経営やESG投資などの普及により、昨今のビジネスセクターの投資行為にも変化が見られます。そうした昨今の状況においては、インパクト投資がYANSAG支援の大きな鍵になると感じています。企業のパーパス(存在意義)実現に向けた課題と、YANSAGのエンパワーメントに向けた課題を結びつけ、投資によるインパクトを可視化することができれば、ビジネスセクターや投資家をYANSAGの領域に巻き込むことができると考えています」

クザイマ・マランダ氏:
「私たちの多くがYANSAGを恐れることに終始してしまっていることで、社会の注目や共感を得にくい状況に陥っていると考えます。しかし、まずは私たちが彼らの話に耳を傾け彼らのために心を開くことが重要です。彼らを受け入れる側である私たちも、彼らと共存し平和に暮らすことの大切さを理解する必要があります」

▲(左)妹川久人氏、(右)クザイマ・マランダ氏

【クロージング】
最後に、衆議院議員の鈴木憲和氏より温かいビデオメッセージを頂戴しました。

鈴木憲和氏:
「YANSAGは紛争においては当事者として認識され、支援の対象として世界から注目されることはありませんでした。しかし、支援から取り残されてきた彼らは、若者としての柔軟性や限り無い可能性が秘められており、平和な社会を構築するための鍵となる存在です。このような若者を支援するアクセプト・インターナショナルの活動に深く共感し、これからも応援してまいります」

▲鈴木憲和氏のビデオメッセージ。


3. 今後の展望
今回のシンポジウムでは、YANSAGの保護に関わる国際規範化を実現するための第一歩として、様々な分野の専門家や評論家、当事者に登壇いただき、多角的な観点から有意義な議論を行うことができました。

今後は、オンラインでのシンポジウム開催を含め、引き続きYANSAGも含めた多様な方々を巻き込みながら議論を深める機会を広げて参ります。

これからも温かなご支援・ご声援をいただけましたら幸いです。




こうしたテロ・紛争解決に向けた取り組みは、毎月1,500円から活動にご参加いただける「アクセプト・アンバサダー」をはじめとした皆様のご寄付によって成り立っています。私たちの活動をさらに拡大し、テロ・紛争のない世界を実現するには、まだまだ多くの方に賛同いただくことが必要です。

どうかこの機会に、私たちとともにアンバサダーとして歩んでいただけたら幸いです。

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