活動報告
【イエメン事業部】スタッフが語る支援の現場

[2026年1月]

いつもお世話になっております。イエメン事業部の丸田です。

ニュースレター担当の南部より「ぜひ現地担当者から、直接活動の報告と率直な思いを伝えてほしい」と声をかけられ、筆を取っています。

今回は僭越ながら、私からイエメン事業部のこれまでの活動と、現在の取り組みについてご報告させていただければと思います。

▲左が丸田。


1.イエメンでの活動の始まりと、これまでの歩み
私たちがイエメンで活動を開始したのは、2021年4月です。

当時すでに、イエメンでは反政府武装組織であるフーシ派とイエメン政府側との紛争が長期化し「世界最悪の人道危機」とも呼ばれる状況に陥っていました。

こうした中で私たちは、「深刻度の高い問題や、担い手が限られている問題にこそ向き合う」という価値観のもと、イエメンでの活動を始めました。

私が日本からイエメン事業に関わり始めた当初、まず直面したのは、現地とのコミュニケーションの難しさでした。

インターネット状況が不安定で、午前にメッセージを送ったとしても返信が届くのは夕方遅く。ミーティングの予定を立てても、音声が安定しないことも少なくありません。

紛争地ならではのインフラが十分に整っていないという課題に、当初はもどかしさを感じつつも、そうした環境の改善から可能な限り取り組んでいきました。

そして現在は、フーシ派の支配地域と隣接する、まさに紛争の最前線にある特別捕虜収容所にて、フーシ派のメンバーだった若者たちを支援しています。

▲捕虜収容所での若者へのケアカウンセリング

彼らの中には、釈放期限のない長期間の抑留によって心身に深い傷を負っている者もいます。また、たとえ社会に戻れたとしても、居場所が見つからず、収入を得る手段もないまま、再び孤立してしまう可能性もあります。

そのため、彼らが社会に戻って平和に暮らしていくには、単なる物資支援や一時的な関わりではなく、心と体を立て直す準備期間が欠かせません。

一方で、私たちが支援を行っている2つの特別捕虜収容所では、いずれも十分なリハビリ支援を行える環境が整っていませんでした。そのため、現地とのコミュニケーションに苦労しながらも、リハビリ支援を行うための環境づくり・施設建設を一から進めていきました。


2.現地への訪問を通して
そうして施設が完成し、リハビリ支援が本格化した頃、私は現地へと向かいました。

収入創出のための職業訓練をはじめとする各支援の進捗を確認するとともに、現地スタッフや関係者と対話を重ね、活動のモニタリングと改善を図るためです。

その訪問の中で、今も鮮明に記憶に残っているのは裁縫訓練です。

実際に足を運ぶまでは、画面越しにしか現地の様子を把握できず、彼らが社会復帰に向けて歩みを進めているという実感がどこか現実味を欠いていた部分もありました。

しかし、いざ現地で目にしたのは私のことなど気にも留めず、目の色を変えて真剣にミシンに向かう彼らの姿でした。

▲真剣にミシンへ向かう若者

そんな彼らを見たときは「本当に彼らの人生を変えられるかもしれない」と感じました。

それと同時に、何もないゼロの状態から一歩ずつ手探りで施設を完成させ、支援を軌道に乗せるまでの道のりが思い起こされ、言葉に詰まってしまったのを今でも覚えています。

また、以前の記事でもご紹介しましたが、彼らから次のような「生の声」を受け取っています。

「アクセプト・インターナショナルのプログラムと日本のすべての寄付者に心の底から感謝しています。なぜなら、この訓練を通して、紛争で直面した過去のトラウマを忘れることができるからです。釈放されたら何か新しいことができると感じていますし、未来に向かって進む自分を誇りにも思っています」

その言葉を聞いたとき、「彼らの人生が前向きなものへと変わり始めているのだ」と確信しました。

また、それだけではなく、現場にあるミシンの一台一台、彼らの手元にある資材の一つひとつ、そして建物そのものが、間違いなく日本で支えてくださっている皆さまのおかげであることも改めて実感しました。

日頃より温かなご支援をいただいている皆さまに、心より感謝申し上げます。



3.近況のご報告
最近では、特別捕虜収容所の屋外で畑仕事も始まりました。

▲畑で大根を栽培

それまでは普段彼らは収容所の中におり、屋外に出ることはリスク管理上許されていませんでした。

しかし、外に出て土に触れ、作物を育てることは彼らの心身の回復にもつながるため、畑仕事の間は外にも出られるようになりました。

彼らからは次のような声が届いています。

「外に出て太陽を浴びるだけで気持ちが晴れやかになる」

「バリエーション豊かな野菜を食べられるようになって嬉しい」

なお、畑で採れた野菜を調理するために、現地スタッフがガスコンロを寄付してくれました。しかもそれは、亡くなった家族の遺産の一部を「支援のために」と家族で話し合って寄付をしてくれたものでした。

こうした想いに支えられ、彼らは今、少しずつ栄養バランスの良い食事をとることができるようになっています。

▲屋外で畑仕事を楽しむ若者

また、特別捕虜収容所にいる戦争捕虜の若者だけでなく、紛争の影響を強く受けた地域コミュニティの人々に対しても心身のケアおよび生計改善の支援をしています。特に、社会的に脆弱な立場に置かれやすい少数民族や女性たち、さらには拷問を受けた人たちを中心に支援を行っています。

具体的な支援としては、専門家による心理的トラウマのケアに加え、裁縫やバイク修理、ソーラーパネル設置、携帯修理、ヘアメイクといった、現地での収入獲得に直結しやすい職業訓練を提供しています。

そうした支援において、最近では地域コミュニティの人々にかつては戦争捕虜だった若者も混ざって同じ場で学ぶようになっています。

「元戦闘員」「地域住民」と線を引くのではなく、同じコミュニティの一員として関わり直すことは、地域の和解を促す上で非常に重要な意味を持つと考えています。

▲地域コミュニティへのバイク修理トレーニング


4.今後の展望
一方で、最近のイエメン情勢は再び緊迫の度を増しています。

私たちの活動地域ではないものの、フーシ派による取り締まりが強化され、国連職員が拘束される事案も相次いでいます。2025年12月には、サウジアラビアが支援するイエメン暫定政府と、アラブ首長国連邦(UAE)を後ろ盾とする南イエメンの独立を目指す組織との間で支配権争いがありました。

また、現地代表のアムガッドからは「移動中に近くで戦闘が起きていた」「検問所が封鎖されて移動が制限された」という報告があり、現在は争いは収まったものの、引き続き予断を許さない状況が続いています。

そのため、スタッフの安全には最大限の配慮をしながら活動を続けています。

また、こうした困難な状況に日々触れるからこそ、イエメン和平のためには憎しみの連鎖のなかにいる若者一人ひとりがそこから離脱し、平和の担い手として生きていくための取り組みが不可欠だと強く感じます。

イエメン全体の若者が憎しみの連鎖から離脱できるよう、私たちが提供する包括的なリハビリ支援をイエメン全土へと拡大すべく、現地政府とも議論を深めています。

引き続き、一人ひとりが平和に暮らしていけるイエメン社会の実現に向けて覚悟をもって取り組みを進めてまいります。今後も温かなご支援を賜れましたら幸いです。


5.さいごに。現地スタッフの想い
最後に、現地代表のアムガットからの言葉も預かっておりますので、ご紹介します。

<アムガットより>
現地代表のアムガッドです。

私たちは紛争に巻き込まれ取り残されてしまった若者や支援を必要とする人たちのために、現場でやるべきことを一つひとつ、日々積み重ねています。紛争下の厳しい状況にいる方々を気にかけ、支えてくださっている皆さま、本当にありがとうございます。皆さまの支えがあるからこそ、イエメンでこの重要かつユニークな活動を続けることができています。

決して簡単な道のりではありませんが、これからも活動を通じて、イエメンに平和と希望を届けられるよう、現場から全力を尽くしていきます。

▲現地スタッフとの一枚(一番右がアムガット)。


【読者の皆様へ】
活動報告記事をお読みいただきありがとうございました。今後も各事業部の活動をわかりやすくお届けしてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、私たちは、月1,500円から活動にご参加いただける「アクセプト・アンバサダー」を募集中です。アクセプト・アンバサダーにはモザイク無しの記事でお届けしております。

暴力に絡め取られた若者を社会一体となって救い出し、新たな道を歩むことを力強く支え、憎しみの連鎖をほどいていくためにぜひアンバサダーとしてご参加いただけたら幸いです。

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