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ソマリア事業の近況報告〜テロリストからレストランの副店長へ〜

本日はソマリア事業の近況報告として、私たちが受け入れてきた元テロ組織メンバーで、社会復帰を果たしたムミン(23歳)のストーリーをお届けします。

1998年生まれのムミンは、15歳の若さで所謂テロ組織アル・シャバーブに加入しました。住んでいた地域がアルシャバーブの支配下に置かれ、逃れる術もなかったと彼は語ります。ソマリアではこうした強制的な加入事例は少なくなく、ムミンも意図せずして暴力の世界へと引きずり込まれていったうちの一人でした。


▲ケアカウンセリングの様子。左:代表・永井、中央:現地スタッフ、右:ムミン

当時、彼は貧しかった家族を少しでも助けるために飲食店で働いていたため、アル・シャバーブに加入した後も組織の運営するレストランで料理人として働き始めました。テロ組織と一口に言ってもその役割は多様で、全員が戦闘員としての道を歩むわけではありません。

とはいえ、組織に4年ほど所属する中で、料理人としての仕事だけではなく、戦闘員のアシスタント業務をすることもありました。また、戦闘員でなかったとはいえ、組織が唱える過激なイデオロギーにも触れてきました。彼は比較的その影響を受けていませんでしたが、逮捕された後、テロ組織に従事した罪として3年の刑期が言い渡されました。当時19歳でした。

私たちはムミンのような若者の過去を受け入れ、共に未来を描く存在として歩み寄ります。もちろん最初から赤裸々に全てを語ってくれるわけではありませんが、それでも対話を重ねていくことで少しずつお互いを理解していきます。ここで大切なのは、「過去は変えられないが、未来を新しく創ることはできる」ということです。その前提のもと、ケアカウンセリングの後半では彼の夢を聞き、そこに紐づける形で具体的なプランに落とし込んでいきました。

そうしたプランをつくるのが、ジョブマネジメント研修です。彼の夢は、これまでの経験を活かして自身のレストランを開業することでした。ただ、そのために彼が最初に私たちに求めたのは、レストランの開業資金の支援でした。そうした意見はもちろん否定しないものの、実際にこの時点で資金があってもいきなりレストランを開業し、運営することは容易ではありません。そこで、長期的な目標はレストラン開業としつつも、より地に足ついたアイデアとして、まずはレストランでまともに働くことから始めていくことを提案しました。

そんな私たちのプログラムを修了して2020年の春に釈放された彼は、アル・シャバーブが支配していた地元ではなく、首都モガディシュで家族と新たな暮らしを始めました。釈放前に現実的な準備をしていた彼は、実際にモガディシュにあるさまざまなレストランに自ら赴き、働くための交渉をすることから始めていきました。そうした努力を重ねていき、ようやくレストランでウェイターとしての職を獲得できたのは、釈放されてから5ヶ月後のことでした。最初は雑用がメインでしたが、腐らずに一つ一つこなしていきました。


▲首都のレストランでウェイターとして働くムミン。私たちにはコーヒーを無料で提供してくれました。


▲代表・永井がフォローアップのために彼が働くレストランを訪問した時の様子。2020年12月。

彼のような釈放者に対しては、定期的にオンラインで繋いだり、現地スタッフが実際に訪問したりしてフォローアップを行なっていますが、2021年11月にオンラインで定期カウンセリングをしたところ、とても誇らしい知らせが届きました。なんと現在はウェイターではなく、副店長として働いている、というのです。

「最初はこんな未来が訪れるなんて思ってもいなかったけど、アクセプトのおかげで自分は一人じゃないと思えたし、だからこそ頑張れたんだ。本当に感謝してるよ」。

彼はこのように語ってくれました。今後も、ムミンのような若者が未来を切り拓くサポートを通じて、テロや紛争のない世界に向けて邁進していきます。


▲代表・永井とムミンとの定期カウンセリングの様子。2021年11月。

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