活動報告
【ケニア事業部】地域対話セッション ~テロ受刑者が平和に暮らしていくために~

[2026年6月]


当法人の活動のなかで特に重要な取り組みの一つである「社会復帰支援」。しかし、テロや紛争に関わった人が社会復帰することは簡単ではありません。

実際、受け入れ先となる地域社会では「本当に受け入れて大丈夫か」「再び犯罪に関わるのではないか」といった懸念の声があります。

今回のご報告では、そうした現場のリアルな声とケニア事業部の取り組みをお届けします。

1. 地域対話セッション

「刑期を終えて社会に戻ったとして、自分は受け入れられるだろうか」

テロや紛争に関わった受刑者から、このような不安が語られることがあります。

たとえ刑務所の中で人生をやり直そうと決意しても、出所後に地域社会から拒絶されて生きる居場所を失ってしまえば、再び暴力に加担してしまうリスクがあります。

一方で、地域の人々が抱く不安にも向き合う必要があります。テロや暴力による被害を身近に経験した人、あるいはそうした恐怖を身近に感じる人にとって、元受刑者を受け入れることは容易ではありません。

そこで私たちは、宗教指導者や地域の代表者、若者リーダー、政府関係者などを招き、受刑者の社会復帰について議論する「地域対話セッション」を実施しました。

▲地域対話セッションの様子

対話が始まった当初、参加者からはテロ受刑者の社会復帰について厳しい意見が多数上がりました。

「本当にテロ受刑者を地域で受け入れて大丈夫なのか」

「再び過激化したり、犯罪に関わったりするのではないか」

私たちはこうした不安を正面から否定したり、すぐに受け入れを求めたりすることはせず、まずはそれぞれが何を恐れ、何を懸念しているのかを率直に話してもらいました。

また、参加者同士が関係性を築き、率直に意見を交わせるよう、昼食時の和やかな雰囲気も活かしながら少しずつ交流を深めていきました。

その中で私たちは、テロ受刑者が暴力に加担するに至った背景には、貧困や孤立、将来への絶望などさまざまな要因があることを伝えていきました。また、受刑者を「受け入れる」か「拒絶する」かの二択ではなく、「どう段階的に、どう安全に関わるか」を地域全体で考えることの重要性も共有しました。

そうして対話を続けるうちに「彼らの受け入れは難しい」といった論調から、「誰かが関わらなければ、彼らは戻る場所がない。地域としてどのように関わればよいのか」という前向きな議論に変わっていきました。最終的には、宗教指導者や地域の代表者、若者リーダー、政府関係者など様々な立場の方々から、社会復帰支援に関わっていきたいという声にも繋がりました。

一度の対話で、すべての不安や偏見がなくなるわけではありません。それでも、これまで「危険な存在」としてしか見られていなかったテロ受刑者について、地域の人々がその後の人生や受け入れ方を考え始めたことは、大きな一歩です。

今後も、テロ受刑者が憎しみの連鎖から抜け出して前向きに生きていけるよう、こうした地域社会も巻き込んだ包括的な取り組みを続けてまいります。

2. 刑務所内での取り組みについて

私たちはケニアの刑務所において、ライフスキルや職業訓練、宗教対話、カウンセリングなどを組み合わせた社会復帰プログラムを実施しています。

▲テロ受刑者に対する職業訓練

しかし、受刑者は最初から私たちを信頼してくれていたわけではありません。

テロ受刑者のなかには、

「政府のために、自分たちの情報を集めに来たのではないか」

「自分たちの思想を否定し、無理やり変えようとしているのではないか」

「話したところで何も変わらない」

といった警戒感から、参加を拒む人もいました。

だからこそ私たちは、一方的に何かを教えることよりも、まずは彼らの声を聞くことから始めていきました。

「なぜその思想に引かれたのか」

「これまでどのような人生を歩んできたのか」

「家族や社会との間にどのような葛藤を抱えてきたのか」

何度も顔を合わせ、対話を重ねていきました。

▲受刑者との対話(右が当法人メンバーのピリ、左が受刑者)

こうした関わりを続けるなかで、少しずつ変化が現れていきます。

例えば、以前は刑務官との接触を避けていた受刑者は、自分から挨拶をしてくれるようになりました。その姿を見た刑務官は「ここまで変わるとは思わなかった」と語っています。

また、ある受刑者はほとんど発言せず、他の参加者とも距離を置いていました。そんな彼に対しても粘り強く対話を続けた結果、ある日家族の話題になったとき、彼は涙を流しながら母親について語ってくれました。彼自身の過去を打ち明けてくれてからは、他の参加者とも少しずつ会話をするようになりました。

受刑者からは、実際に次のような声が届いています。

「最初は外国人であるアクセプトのスタッフや刑務官を信用していませんでした。でも、対話を重ねるなかで自分の過去を受け止め、これからについて考えられるようになりました」

「社会に戻った後、地域や家族にどう思われるのか不安でしたが、支援のおかげで具体的な目標を立てられるようになり、将来を前向きに考えられるようになりました」

こうした変化は一朝一夕に生まれるものではありません。粘り強く対話を重ねることで、彼らが自分自身を見つめ直し、前向きな姿勢に少しずつ変化していきます。

▲ピリが受刑者に語りかける場面

3. 事業担当 ピリ カニャーキーソ荘平 よりコメント

皆さま、お世話になっております。ケニア現地で事業を担当しているピリと申します。

ケニアの刑務所や地域コミュニティが、テロ受刑者に対する不安や偏見を少しずつ乗り越え「彼らにも変わる可能性がある」と信じられる社会になってほしいと強く感じています。

そして、この考え方はケニアのテロ受刑者に限ったものではありません。全ての場所で、過ちを犯した人に対しても「なぜそうなってしまったのか」「どのような背景や孤立、葛藤があったのか」を想像し、一人ひとりの可能性に目を向けられる社会につながっていくことを願っています。

今後の取り組みにおいては、一人ひとりのニーズに応じた支援、特に1対1のカウンセリングや宗教対話をさらに充実させていきます。また、地域社会との連携をより一層深め、出所後の受け入れ環境を整えるとともに、社会復帰を継続的に支える仕組みをつくっていきます。

今後も一人ひとりの背景や人間性に目を向けながら、それぞれが再び社会とのつながりを取り戻せるような、より愛と理解のある世界を目指して活動していきたいです。

今後とも温かなご支援を何卒よろしくお願いいたします。

▲中央でスピーチをしているのがピリ


【読者の皆様へ】
活動報告記事をお読みいただきありがとうございました。今後も各事業部の活動をわかりやすくお届けしてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、私たちは、月1,500円から活動にご参加いただける「アクセプト・アンバサダー」を募集中です。

暴力に絡め取られた若者を社会一体となって救い出し、新たな道を歩むことを力強く支え、テロや紛争の解決に繋げるために、この機会にアンバサダーとしてご参加いただけたら幸いです。

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