活動報告
【ソマリア事業部】断食明け、仲間と囲む食事のひととき

[2026年3月]

ソマリア事業部では、いわゆるテロ組織アル・シャバーブから若者たちが抜け出し、平和の担い手として社会に復帰するための取り組みを行っています。

今回は、ラマダン期間中の取り組みについてご報告いたします。

「そもそもラマダンって何?」といった点から「ラマダンが投降や社会復帰に与える影響」「ラマダン期間中のほっと一息な瞬間」をお届けします。

※セキュリティの観点から、一部の写真にはモザイク加工をしています。月額でご寄付をいただいているアンバサダーの皆さまにはモザイク無しでお届けしております。

1.ラマダンとその投降に与える影響とは?

ラマダンとはイスラム暦における9月を指す期間で、2026年のラマダンは2月下旬から3月下旬にかけての1ヶ月でした。

この期間、イスラム教徒の方は日の出より少し早い時間から日没までの間、飲食を控えて過ごします。この背景には、本能的な欲求を抑えて自制心を養うという側面に加え、空腹を感じることで貧しい人々の気持ちに思いを馳せるといった意味があります。

私たちが活動するソマリアでは、このラマダンの時期にアル・シャバーブから抜け出す若者が毎年増える傾向にあります。この期間は組織の監視の目が通常より緩むとされているためです。

加えて、ラマダンという聖なる期間そのものが、若者たちにとって投降への後押しになっているとも考えられています。ラマダンは自らのこれまでの行いを見つめ直す機会となるとともに、善行によって罪が赦されるともされていることから、この時期に「投降」という決断に踏み切る人も少なくありません。

こうした背景から、ラマダン期間中は若者たちのさらなる投降を促すため、広範囲へのラジオ放送やリーフレットの配布といった取り組みを加速させます。リーフレットには投降を希望する若者が連絡できる電話番号を記載しており、実際にそれを見た若者が勇気を出して電話をかけてきます。

▲今回投降した若者

一方で、投降は決して容易なものではありません。もし発覚すれば組織から命を狙われる可能性もあり、文字通り命がけの行動です。私たちは若者たちと慎重に連絡を取り合いながら、護衛にあたる現地軍とも連携して安全を確保したうえで移動を進め、合流地点にて受け入れを行います。

こうしてたどり着いた彼らの表情には、長距離の移動や極度の緊張を経た疲労が色濃くにじんでいます。

それほどの危険を伴うものであっても、これまで600名近くの若者が私たちの取り組みを経て投降の決断をしてくれました。その背景には、組織での生活の中で積み重なった葛藤があります。

過去に投降したある若者は、次のように語っていました。

「組織の中では空腹に苦しむ日々で、心から休まる時間もありませんでした」。

「誰ともコミュニケーションをとることができず、厳しいルールに従わなければ身の危険がある。まるで囚人のような、自由のない生活に絶望していました」。

「組織の理念のために仲間が死に、人々を恐怖に陥れるのはおかしいと思いました」。

命からがら組織を抜け出してきた彼らの決断に応えるために、私たちもまた、その先の人生を支える責任を負っています。彼らが新たな人生を歩むことができるよう、皆様からのご寄付をもとにしっかりと取り組みを進めてまいります。


2.ラマダン期間中のリハビリ施設の様子

こうして受け入れた若者たちは、リハビリ施設にて宗教再教育、読み書き算数などの基礎教育、ケアカウンセリング、職業訓練などを受けながら、新たな人生に向けて準備を進めています。

実際に、2025年10月〜2026年3月の半年間では17名が無事にプログラムを修了し、社会に復帰していきました。

その多くは家族や親戚と暮らしながら、タクシードライバーや理髪師として働くほか、家族の営む店舗で仕事に就いています。

中には、自らや家族、コミュニティを守るためにソマリアの正規軍への入隊を選んだ若者も数名います。入隊後は必要な訓練を受け、現在はソマリア南部の前線で任務にあたっていたり、投降兵の救出を担っている若者もいます。

▲社会復帰したうちの1人
彼はトウモロコシを粉砕してコーンミール(粉末)を販売しています
※東アフリカの主食に使われる

社会復帰を目指すリハビリ施設では現在常時40名ほどを受け入れており、約1年をかけて1人1人が社会へと戻っていきます。

そんなリハビリ施設において、ラマダン期間中の2月から3月にかけてはイフタールの時間が設けられました。

イフタールとは日没後に断食を終えてからとる食事のことであり、家族や仲間とともに食卓を囲み、同じ時間を分かち合います。単なる食事ではなく、他者とのつながりや思いやりを再確認する場でもあります。

戦地にいた時はこうした穏やかな時間を安心して過ごすことは難しく、他者と心を通わせる機会も限られています。

リハビリ施設では、そのような過酷な経験をしてきた若者たちが一つの食卓を囲み、笑顔を交えながら食事を楽しみました。

▲イフタールを楽しむ若者たち

参加した若者たちは、次のように話しています。

「ここでは安心して過ごせますし、自分は一人じゃないと感じることができています」

「アクセプト・インターナショナルと支援をしてくださる皆さま、こうした穏やかな時間を過ごすことができることに心より感謝しています」。

このように、ラマダンやイフタールを通して本来のイスラム教のあり方に触れることは、若者たちが自らの価値観を見つめ直し、平和な生き方を選択していくうえで非常に重要な機会となっています。

そして、こうした支援を受けた若者たちだからこそ、プログラムを経て「平和の担い手になりたい」「社会の役に立ちたい」という意志を強く持ってくれます。そうした思いの実現ができれば、私たちのパーパスにあるように、マイナスがゼロになるのではなくプラスが生まれていきます。

引き続き本質的な問題解決に向けて、ソマリアにおいてもやるべきことを果たしてまいります。


3.ソマリア事業部 現地スタッフよりひとこと
最後に現地スタッフのアハメドからのメッセージをご紹介し、本報告の結びといたします。

アハメドは、武装組織からの投降の調整をはじめ、リハビリ施設での教育支援や投降兵へのカウンセリングなどを行っています。また、彼らが施設を卒業する際には、一人ひとりに激励の言葉を贈り、社会復帰後も継続的にフォローアップを行うなど、現場で重要な役割を担っています。

<アハメドからの一言>
リハビリ施設から一人ひとりが卒業し、家族や地域のもとへと帰っていく背中を見送る時、私は「この仕事をしていて本当に良かった」と心から誇りに思います。それは、これまでの支援が実を結び、一人の人間が「変わった」とはっきり確信できる、何にも代えられない瞬間だからです。

ここに来たばかりの彼らは、皆それぞれに深い困難を抱えています。しかし、日々の学びや生活スキル、そしてカウンセリングを通じた心のケアによって、少しずつ自分自身を取り戻していきます。卒業する頃には、顔つきも体つきも別人のようです。自信に溢れ「これからの人生を自分の足で歩んでいくんだ」という希望と責任感が、その目から伝わってきます。

卒業のとき、彼らがスタッフや政府、そして日本から支援者の皆さまへの感謝を口にする姿を見ると、私はいつも胸が熱くなります。

彼らが社会に復帰する姿は、皆さまの温かいご支援が確かな形となっている証拠です。一つひとつのご寄付が、単に命を救うだけでなく、ソマリアの若者の未来を照らし、地域に平和をもたらす大きな力になっています。

いつも彼らに寄り添い、共に歩んでくださる皆さまに、現場スタッフ一同、心から感謝しています。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。

▲アハメドがリハビリ施設の若者に向けて語っているシーン


【読者の皆様へ】
活動報告記事をお読みいただきありがとうございました。今後も各事業部の活動をわかりやすくお届けしてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、私たちは、月1,500円から活動にご参加いただける「アクセプト・アンバサダー」を募集中です。アクセプト・アンバサダーにはモザイク無しの動画や記事をお届けしております。

暴力に絡め取られた若者を社会一体となって救い出し、新たな道を歩むことを力強く支え、憎しみの連鎖をほどいていくためにぜひアンバサダーとしてご参加いただけたら幸いです。

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