イスラム過激派組織アル・シャバーブとは?
いつも大変お世話になります。 NPO法人アクセプト・インターナショナル広報局です。
当記事は、当法人ソマリア事業部が向き合うイスラム過激派組織アル・シャバーブ(以下アル・シャバーブ)の概況についてまとめた特集記事です。当法人が準備を進めるDRRプロジェクトの開始にあたり、活動へのご理解をさらに深めていただくための材料となれば、大変幸いに存じます。
イスラム過激派組織アル・シャバーブとは?その歴史
西洋社会への反発と組織の形成
アル・シャバーブは、2004年にイスラム法廷会議 (ICU)を前身団体に設立されました。
その根源にあるのは、1980年代~1990年代に活動を活発化させたal Itihaad al Islamiya (AIAI)と呼ばれるワッハーブ派の思想を背景とした武装勢力です。AIAIと同様、アル・シャバーブは、西洋社会が支援する自国政府とソマリアにおける軍事活動を追放し、 ソマリアをワッハーブの理念に即したイスラム国家とすることを目標として活動を開始しました。
国家主義の台頭と活動の拡大
2006年以降、アル・シャバーブは勢力を急速に拡大します。特に南部ソマリアでは、実効的な支配能力を有している政府が不在であったため、リクルート活動や訓練が野放しで継続されました。一部地域では、アル・シャバーブが実質的な地方政府として機能する状況すら散見されました。
そして、2006~2008年にかけて、アル・シャバーブは多くのソマリア人にも支持されます。その背景にあったのは隣国・エチオピアの侵略とナショナリズムの台頭です。2006年には400名規模の団体でしたが、2年後の2008年には数千名規模へ拡大しました。南部や中央ソマリアで、ソマリア中央政府やエチオピア軍を主な報復対象として活動を継続します。
活動の過激化
2008年10月29日、 構成員のShirwa Ahmed は自爆テロで米国人を殺害。自国政府以外を狙ったはじめての事件となりました。そして、2010年2月には、アル・カイーダへの忠誠を組織として表明したことで、国際社会からの注目が高まります。
2010年7月11日にはソマリア国外でのテロを初めて実行。ウガンダ首都カンパラのスポーツクラブで、計70名を殺害するテロを実行しました。ワールドカップ最終戦を鑑賞する人々をターゲットとしたものでした。
2011年8月には、ソマリア軍と、アフリカ連合が組織するソマリア駐留アフリカ連合平和維持部隊(AMISOM)がモガディシュをアル・シャバーブから奪還します。2012年9月には、彼らが最大の収入源を得ていた港町・キスマヨも奪還しました。
2014年1月22日、エチオピア軍はAMISOMへの加勢を決定し、22,000名もの兵を送り込むなど、彼らを制圧する動きは継続して強化されています。
しかし、モガディシュからの撤退に際してリーダー格のAhmed Abdi Godaneがアル・カイーダとの正式な提携を重ねて表明するなど、徹底抗戦・長期戦を望む姿勢を崩すことはなく、活動の抑圧は困難を極めています。
2013年9月21日~23日にかけて、ケニア首都ナイロビのウェストゲート・ショッピングモールで発生した大型テロでは68名が死亡。また、2017年10月14日に起こったモガディシュ中心部でのテロによる死者数は580名以上に上り、単発爆発テロにおける過去最悪の死者数を記録しました。これを受けてソマリア政府は戦争宣言を発出。同国は未だに紛争状況にあります。2017年には614回のテロが発生、1,912名が死亡しており、国際社会の軍事的努力の前にあっても、根本解決への兆しは未だ見えていません。
当法人が取り組む加入防止・脱退促進支援が目指すもの
こうした状況にあって、私たちは軍事的抑圧とともに、アル・シャバーブの支配領域をはじめとする過激化リスクの高い場所でテロ組織への加入を防止すること、そして、一度加入してしまっても抜け出せる道を築いていくことが根本解決への一つの道筋になると考えて活動を実施しています。
現地活動を通じて見えてきたのは、「アル・シャバーブ構成員」と一口でいっても多様であり、過激化のレベルも理由も様々なことです。思想的・宗教的な信念に基づいて加入した人、経済的な厳しさを背景にリクルーターの口車に乗って加入した人、社会からの疎外感を背景に加入した人、住んでいた場所がアル・シャバーブに支配されて強制的に加入させられた人、子どものころに誘拐された人・・・、そこには光の当たらない様々なヒューマンストーリーが存在しています。
一方で、一つの共通項として、「テロ組織に幻滅しているものの、社会に戻れないためそのまま所属を余儀なくされている方が一定数いる」という事実があります。
投降兵に対し、弁解の機会が与えられない中での馘首や投石はじめ残酷な方法での処刑や拷問が実施されていることを、彼らは知っています。
また、テロと紛争が未だ活発な状況下においてコミュニティ側がリハビリテーションセンターからの釈放者を心理的・社会的に受け入れることは非常に難しく、釈放者が社会からの孤立を原因に再過激化してしまう状況もあります。さらには、アル・シャバーブは投降を許さないため、釈放者には再参加するか攻撃対象となるかの二択しか与えられません。こうした中で、彼らはテロ組織に幻滅していたとしても抜け出せない状況にあるのです。実際、2014年に45日間の恩赦期間が設定された際には、実に700名もの投降があり、適切な対応が保障された場合には投降は増えると想定できます。
こうした悪循環に対処すべく、私たちが取り組むのがソマリア政府との協働事業・DRRプロジェクト(脱退促進事業)です。
活動のさらなる充実に向けて、皆様のご理解・ご支援を賜れますよう心よりお願い申し上げます。