今回は、10月27日に開催した「代表永井と国際規範を語る会」についてお伝えします。
ー目次ー
1. イベント概要
2. なぜ国際規範の制定を目指すのか
3. 国際規範制定の狙い
4. 国際規範の制定に向けたこれまでの取り組み
5. 質疑応答セッション
6. アンバサダーの方々からのお声
1. イベント概要
私たちは、毎月の継続的なご寄付で活動を支えていただいている「アクセプト・アンバサダー」に向け、さまざまなイベントを実施しています。
本イベントでは、いわゆるテロリストとなってしまった人々が武器を置き平和の担い手となるための直接的な支援や、和解・和平の実現に向けた取り組みと並行して、なぜ「国際規範」の制定に向けて活動しているのか。それによって何を成し遂げたいのか。過去3年間でどのような進捗があったのか。
そのような点について、代表・永井より初めてご説明をさせていただきました。
当日は、80名ほどのアンバサダーの方々がリアルタイムで参加してくださいました。また、アーカイブ配信のお申し込みをいただいた方も合わせると160名ほどの方に登録をいただくなど、大変盛況でした。
※アンバサダーの方で見逃してしまった方は、support@accept-int.org までご連絡ください。本イベントのアーカイブ動画をお送りいたします。
▲ニューヨークでの国際シンポジウムで登壇する代表・永井(右)
2. なぜ国際規範の制定を目指すのか
終わらないテロや武力紛争の背景には、大きな憎しみの連鎖があります。 そしてそこに絡め取られる人々の多くは、若者世代です。私たちは、そのような若者たちが武器を置くための取り組みや、刑務所や捕虜の収容所といった最前線において、彼らが平和の担い手となるためのリハビリプログラムを提供してきました。
本イベントでは、このような現場での取り組みを続けていく中で、なぜ国際規範の制定を目指すようになったのか、語られました。
例えば、世界的な若者に関する政策について話し合う場では「若者」の代表が置かれますが、彼らは基本的に、各国でエリートと呼ばれるような人々です。いわゆるテロ組織にいる/いたような若者が、そこに選ばれることはありません。
しかし「若者」とは、あくまで年齢で定義されるものです。そうであるならば、いわゆるテロ組織や武装勢力にいた彼ら彼女らは「取り残されてきた若者」と捉えることができるはずです。さらには、過去の経験を活かして、エリートな若者リーダーたちにはなれないような、ユニークな平和の担い手になることができるともいえます。
また「子ども兵」との大きな違いについてもイベントで熱く語られました。
「18歳を超えた若者たち、つまり定義的に子どもではない彼らに対して『君も若者であり、君こそが平和の担い手になることができる』などといったように、アクセプトが彼らに届けてきたことを『みんなの言葉』として実現する必要がある」
テロや紛争のない世界の実現、ひいては憎しみの連鎖をほどくためには、こうした取り組みも行う必要があるという考えのもと、国際規範の制定に向けた取り組みが始まっていきました。
3. 国際規範制定の狙い
当日は、国際規範制定の狙いについても、具体的に解説されました。大きく以下の3点です。
1 テロや武力紛争に関わる若者が取り残されていることが、持続的平和への大きな障壁になっていることを国際社会が認識し、共通理解とする
2 テロや武力紛争に関わる若者の曖昧になっている権利と彼らが持つ可能性を認識し、明確にする。
3 テロや武力紛争に関わる若者が、平和の担い手となることができるような取り組み、制度設計、国際的なイニシアチブを促進し、彼らの自発的な投降や更生、リハビリテーション、社会復帰、社会への貢献を実現させ、テロと紛争解決に強力に貢献する。
※あくまでも戦争犯罪などを含めた既存の国際法を尊重しつつ、上記の取り組みを積極的に検討・実施するというような立て付けとなります。若者であれば全員免罪をするべき、というものではありません。
このように、国際規範の制定によって、現在世界中でテロや武力紛争に巻き込まれている若者たちに暴力ではない選択肢を提示し、彼ら彼女らが、若者、そして平和の担い手として生きていくことのできる世界、そしてそこから導かれるテロや紛争のない世界の実現を目指していくことが語られました。
4. 国際規範の制定に向けたこれまでの取り組み
また、国際規範制定に向けて今までどのような取り組みを達成してきたのかについても詳しく説明されました。
▲イベント資料より、国際規範制定に向けたこれまでの主な取り組み
例えば、現行の国際法においては、軍/武装グループにいかなる形でも関わっている/いた18歳未満の子どもたち、すなわち「子ども兵」はCAAFAG(Children Associated with Armed Forces and Armed Groups)という正式用語がある一方で、18歳以上の若者を対象とした概念はありません。
そこで、非政府武装勢力にいる/いた18歳から35歳の若者を表す「YANSAG(Youth Associated with Non-State Armed Groups)」という新しい概念を政策論文として提唱したことについて説明がありました。
また、テロや武力紛争に関わる若者に関する国際アドボカシー活動、リサーチ、世界各国におけるデータや証言の収集・公開、提言の作成、国際会議やシンポジウムの開催・登壇などを推進する新たな組織体として、元テロリスト、被害者、専門家などが中心となるタスクフォース「Global Taskforce for Youth combatants(GTY)」の設立について初めて公開されました。
(GTYについての詳細は、こちらをご覧ください※英語のみ)
例えば以下の2名は、現GTYのメンバーになります。イベントでは、ほかのメンバーについても紹介がありました。
▲シエラレオネ革命統一戦線(RFU)の元兵士(右)
現在は非政府武装勢力にいる若者のメンターとして、活動してくれています。
▲スリランカの「タミル解放の虎」の元戦闘員(左)
現在は同じような経歴を持つ女性数名を雇用するリーダー的存在となっています。
5. 質疑応答セッション
後半の質疑応答では、国際規範の制定における日本政府の立場や国際法の影響力など、たくさんのご質問をいただきました。
また「制定までの道のりにおいて、アンバサダーとしてできることはありますか」という熱意のある質問もいただき、改めてアンバサダーの方々とともに取り組んでいるということを実感いたしました。
まだまだ知られていない私たちの活動を、ぜひアンバサダーとして周りの方に広めていただきたい、そしてそのことが大きな輪となっていくといった回答がありました。
また、未確定ではあるものの、世界中の多くの方々に賛同いただいていることを証明するために、 国連への提出を念頭に国際署名のキャンペーンを行う可能性も検討しています。その際は、アンバサダーの皆様のお力添えをいただけたらと願っています。
▲質疑応答の様子。たくさんの質問をいただきました。
以下では、イベントでいただいた質問とその応答をいくつかご紹介します。
Q1.世界中で右傾化した政権が誕生したり、 武力で物事を決めてしまう事象や暴力が頻発し、自分の身を守るためには武装やむなしという思想が一般の市民にも広がっている危機感を感じながら、その流れを止められないままでいます。どのように非暴力を説得したらいいと思いますか?
A. もちろん非暴力の意義や価値を説くのも大切ですが、そうした世界の流れのなかで大切なのは、武力も大切だと主張しているコミュニティーの意見を受け止めることです。それがないと、ただ分断して、お互いがお互いのことを否定しあうだけで終わってしまいます。1つの鍵は、自分と真逆の主張をしている人々の話も一度受け入れること。 彼らを理解した上で、ではどんなことができるのか、と考えていくような姿勢が大切だと思います。
Q2.GTYのメンバーとなってくれた方々の率直な反応を知りたいです。 また、メンバーの方はボランティアですか?
A. 多くの人が「嬉しい」というリアクションをくれました。やはり彼ら彼女らは今まで平和の担い手として見られてこなかった、そもそも期待もされてこなかったので、私たちのように「君たちこそが鍵だ、一緒にやろう」というように語りかけると、すごく嬉しいと大半のメンバーに言ってもらえます。ただ、メンバーはあくまで個人ですので、彼らが関係していた組織を代表するものではありません。ちなみに今のところ、メンバーには基本ボランティアでオピニオン記事の執筆やイベントへの登壇に協力してもらっています。
Q3.制定の上での大きなハードルは何ですか?
A. 「子供を守ろう」や「核兵器の廃絶」などとは異なり、なかなか共感が得られないトピックであるというところが難しいです。また、アクセプト・インターナショナルという謎のアジア人の組織が言っているだけ、と思われる節もあります。この壁を乗り越えるためにも、GTYを立ち上げましたし、グローバルに署名活動を展開することもアイデアの一つになると考えています。
Q4. 今後の展望は何ですか?
A. 今後は、テロや武力紛争に関わる若者のエンパワーメントプログラムを開発するとともに、パイロット事業を実施しつつ、然るべき国際規範を積み重ねていこうと考えています。一先ず2031年までのタイムラインで強固な国際法規範を組むことができるよう動いています。
イベントではこのほかにもたくさんの鋭いご質問をいただき、時間の限り詳しく、率直にお答えしました。
6. アンバサダーの方々からのお声
最後に、本イベントの参加者の皆様から寄せられたアンケートの回答をご紹介いたします。
「取り組みの実態やその裏にある考え方を本音ベースでお話しいただき、非常に分かりやすく説得力があった」
「国際法、国際規範について、わかりやすくお話ししていただき、国際規範制定についての活動についても知ることができ、とても興味深かったです。あと、質疑応答コーナーで、自分も疑問に思っていた事や、気になることが色々聞けてとても良かったです。ありがとうございました」
「目標の実現に向けて、前例がない中でも着実に進んでいることが伝わりました。永井代表の『やるんだ。』という言葉にはいつも力をいただいています」
国際規範の本質は「みんなの言葉」と言い換えることができます。紛争地の最前線にいて、戦っている若者たちに届けることができる言葉をつくるため、私たちは今までの活動と並行して、引き続き、国際規範の制定に向けても尽力してまいります。
今後とも、温かなご支援をどうかよろしくお願いいたします。
支援者限定イベントでは、代表・永井をはじめとしたスタッフはもちろん、様々な想いを持つアンバサダーの方々とも交流することができます。毎月1,500円のご支援から、私たちとともに、日本発で前例を創るべく挑戦していくことができれば幸いです。
※現在アンバサダーではない方に関しましても、アンバサダーご登録後support@accept-int.org までご連絡いただければ、本イベントアーカイブ動画をご視聴いただけます。お気軽にお問い合わせください。
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