[2026年7月]
日頃より温かいご支援、誠にありがとうございます。
ニュースレター担当の南部です。
「メンバーの声」では、アクセプト・インターナショナル(以下、アクセプト)のメンバーをご紹介しています。
共に問題解決を目指す「同志」であるアンバサダーの皆さまにメンバーの人となりを知っていただくことで、より身近に感じていただくとともに、内部でどのような活動をしているのかも知っていただけたら幸いです。
今回は、ケニア事業を現地で主導するピリにインタビューをしました。日本とマラウイにルーツを持ち、バイタリティ高く活躍するメンバーです。
インタビュアーの私自身も元気をもらいながら、楽しく話を伺いました。ぜひご覧ください。
アクセプトでの業務について
〜 ケニアの刑務所の中へ。現場を率いる日々 〜
南部:忙しい中お時間をいただきありがとうございます。早速ですが、アクセプトでの業務を改めて教えていただけますか?
ピリ:ケニア事業部を担当していて、現地での運営を統括しています。プロジェクト全体の管理は日本にいる高橋さん(海外事業局 副局長)で、私は現場のリードが役割ですね。主にケニアの刑務所の中やその周辺のコミュニティで行うプログラムの運営・管理をしています。
南部:普段はどんな方々と接しているのですか?
ピリ:メインの協働相手はケニア刑務局です。加えて、現地でカウンセリングや宗教対話、ビジネスマネジメントなどのスキル研修を担当してくれる協力者の方々です。今年のプロジェクトでは刑務局だけでなく、別の政府機関や保護観察関連の機関、国家テロ対策センターといった組織とも連携しています。情報連携の面ではJICAケニア事務所とも接点があります。資金面では、委託元であるイギリス政府(在ナイロビ英国高等弁務官事務所)の担当者と、週に一度はやり取りをしています。
南部:受刑者の方々とも直接関わるのですよね。
ピリ:はい。刑務所の中に入って受刑者たちと直接話すこともあります。
アクセプトの大きな特徴は現地に深く入り込み、受刑者本人と「1対1で」継続的に対話を重ねるアプローチだと思います。これは他の組織がケニアでもなかなか実現できなかったことです。
バックグラウンド/加入したきっかけ
〜 「100年後、誰も自分を覚えていない」——14歳で根付いた人生の軸 〜
南部:アクセプトでの業務について教えていただきありがとうございます。
ここからは人となりについてもお伺いしたいのですが、ピリさんは日本以外にもルーツをお持ちですよね。
ピリ:はい、日本とマラウイのハーフです。生まれはジンバブエで、その後、南アフリカに1年ほどいて、それから日本に引っ越してきました。18歳まではほぼ日本で育っています。
南部:ご両親と一緒に来日されたのですか?
ピリ:父は私が子どもの頃に亡くなっているので、ほぼ母子家庭でした。とても強い母を見て育ちましたね。母は日本人で、今は福祉の事業をしています。平日は訪問看護などの仕事をして、週末は障がい児向けのイベントを開いています。
障がいのあるお子さんは、ご家庭が忙しかったり経済的な事情があったりで、普通の子ならできる体験がなかなかできなかったりするんです。そんなお子さんたちのために母はイベントを開催して、イルカと泳ぐ体験や乗馬などにワンコインで参加できるようにする活動もしています。
▲お母さま(右から2人目)と祖父母との写真
南部:そういったお母さまの背中を見て育ったのですね。きっと今のピリさんの価値観にも大きな影響を与えているんだろうなと感じました。
では、アクセプトに加入したきっかけを教えてください。
ピリ:実は、応募するまでアクセプトのことは何も知りませんでした。求人で見ただけなんです。
それまではずっと民間企業で働いていたのですが、正直、利益を追うことがあまり好きになれませんでした。その反動もあり、休日には教育関係の個人支援を友人とやったり、小さなNPOと人をマッチングさせたり、放課後等デイサービスで英語の先生のボランティアをしていました。そうしているうちに、休日の利益を追わない活動のほうが好きだなと気づき、転職を考えてアクセプトに応募してご縁をいただいた、という感じです。
南部:最初に選んだのがアクセプトというのは、強烈ですね(笑)。
ピリ:それがすごく合っていたんです。これくらい尖っていて、しかも現場での変化がはっきり見える。決められた項目を“こなして終わり”にするのではなく、支援対象者を一人ひとりちゃんと見てじっくり関わりたいと思っていたので、スタイルがぴったりでした。
南部:そうだったんですね。では、幼少~青年期の話からもう少し伺ってもいいですか。
ピリ:実は、アフリカではアフリカ人として見てもらえず、日本では日本人として見てもらえない、という葛藤がありました。そして12〜13歳のころにアメリカに留学した時、その感覚が一気に膨らんで「自分は何者なのか」と、アイデンティティ・クライシスのような状態になったんです。
その時に思考が極端なところまでいって「そもそも100年後、200年後に自分を覚えている人なんていない。じゃあ生きている意味はあるのか」と。それで、自分が死んでも残るものは何かと考えたとき、たどり着いたのが『教育』でした。
石碑のような形あるものはいつか必ずなくなる。でも、自分が教えた考え方や技術を使って誰かが人生を紡ぎ、それが次の世代へつながっていけば、それは自分が残っているということなんじゃないかと。だから教育をやりたいと思うようになりました。今は、アフリカの次の世代のリーダーを育て、国を変えていくことが私個人の使命です。
南部:ピリさんのお言葉で教えていただきたいのですが、なぜアフリカなのですか?
ピリ:ルーツがそこにあるからですね。親戚がたくさんいて、とても裕福な人もいれば、スラムで暮らす人もいます。女性が十分な教育を受けられない、若くして出産せざるを得ない、働く場がなく生活に困る。男性も、貧しさからドラッグに手を出してしまう。そうした問題を、本で読むのではなく目の当たりにして、心を痛めてきました。しかも、それが自分の親戚なんです。
だからこそ、そういう未来をなくすためにアフリカのために何かしようと思うんです。
▲ご家族とのマラウイでの写真
アクセプトの好きなところ・自慢できるところ
〜 売上ではなく、目の前の人のために 〜
南部:正直、無責任な言い方になってしまうかもしれませんが、日本で暮らしてきた私とは、事の重大さの受け止め方も、抱いている温度感も違うのだろうと感じました。
そんなピリさんがアクセプトの好きなところ、自慢できるところはありますか。
ピリ:一番感じるのは、本気で人のために活動している組織だということです。私はNPO/NGOで働くのはアクセプトが初めてなので他団体との比較はできませんが、本当に純粋に受益者のことを第一に考えていると感じています。
実は前職の民間企業(タンザニアの会社)でも、私は営業部長として働きながら、「いつか社会事業に携わりたい」という思いがずっとありました。仕事も、そのための学びや経験を積むつもりで取り組んでいました。ただ、その会社でその夢を実現することはできませんでした。
営業部長という立場では、当然ながら売上や利益を第一に考えなければなりませんでした。それが悪いということではありません。ただ、アクセプトでは、自分の仕事がすべて受益者の喜びや将来の成長につながっているという実感があります。経理をしているときも、法務の仕事をしているときも、スタッフのトレーニングをしているときも、その先には必ず支援を必要としている人たちがいる。そのことを日々感じながら働けるのが、とても大きなやりがいになっています。
アクセプトで苦労していること、学んだこと
〜 一人きりの遠い現場で、ホッとさせてくれる存在 〜
南部:逆に、苦労していることはありますか。
ピリ:ケニア現地では日本人としては1人の活動なので、孤立感を覚えることはあります。日本にいるメンバーは物理的に一緒にいられますが、こちらだとなかなかそうもいかなくて。
南部:そういうとき、支えになることはありますか。
ピリ:日本にいる職員の皆さんとリラックスして話せる時間が、すごく好きです。普段はそれぞれ忙しいですが、何気ない会話をしたり、笑い合ったりする時間があると、気持ちがリフレッシュされますし、「また頑張ろう」と思えます。
アクセプトでの活動のやりがい
〜 現場でしか起きない変化 〜
南部:アクセプトのメンバーはみんな温かくて、何気ない会話も日々の活力になりますよね。
活動のやりがいは、どんなところに感じていますか。
ピリ:アクセプトはNGOとしてケニアで初めて、テロや紛争などに関与した受刑者にここまで深く関わることができた団体だと聞いています。国連や政府が主導して同じことをやろうとしてうまくいかなかった例も多いそうです。だからこそ慎重でなければいけませんが、アクセプトがいろいろな国で培ってきたノウハウを持ち込み、現場で『こうしたほうがいい』と工夫を重ねて改善していくなかで、ケニアでの新しいベストプラクティスが生まれています。このような新しい成功の形が見つかりつつあることにすごくワクワクしますね。
多くのNGOは安全上の理由などで現場の中に入ることを避け、受刑者の顔も見ずに進めてしまいがちです。でも、顔を突き合わせてやらないと現場では何も起きないし、持続性も生まれません。アクセプトは、永井さんをはじめ、海外事業局 副局長の高橋さんも私も、純粋に問題解決をしたいと思っている人間が現場に入って、本人の声をちゃんと聞いて反映させています。それが一番の強みだと思います。
南部:過去に深刻な事件を起こした方も、変わっていくのですか。
ピリ:はい。彼らの多くはこれまで非人道的な扱いを受けたり、『報復に報復を重ねる』ような世界を生きてきた人たちです。そこに対して、『君には可能性がある、平和の担い手になってほしい』という真逆のメッセージを本心から伝える。それが嘘でなければ、ちゃんと心に響くんです。私たちがプログラムを行っている刑務所では、全体的に事件の数も減ってきていると聞いています。
▲現地の刑務官とのミーティング
※セキュリティ都合上、受益者の写真は掲載が難しいものの
研修を受けた刑務官も受益者とやり取りを行います。
プライベートなお話
〜 いつかは大学院にも挑戦したい 〜
南部:なるほど。それを現場にいる人から直接聞くとやはり重みが違います。心から尊敬します。
さて、打って変わってプライベートのお話を少し聞かせてください。休みの日は、何をして過ごすことが多いですか。
ピリ:空いた時間は、現地でできた友人と飲みに行ったりしています。友人のできかたも面白くて、一人でバーに行ったときにエレベーターで一緒になった人と話して、そこからどんどんつながっていって、お店の店長とも仲良くなって……という感じです。
南部:すごくアクティブですね!日本に戻るのは、どれくらいのペースですか。
ピリ:だいたい年に1, 2度くらいですね。今年は1か月ほど戻りました。そのうち1週間ほどは有給休暇を取ってベトナムにいました。友人がいるので会いに行ったのですが、食べ物がおいしくて最高でしたね。ただ、なんだかんだ言っても、日本育ちなので日本食が一番好きです。
南部:最近、力を入れていることはありますか。
ピリ:これからも教育、そして平和構築をやっていきたいので、大学院に挑戦しようとしています。教育学部が世界でもトップクラスといわれる大学院です。お金の問題もあってどうなるか分かりませんが(笑)、論文の準備などを空いた時間や週末に進めています。友人とカフェにこもって、3〜4時間集中するというようなこともしていますね。
▲マラウイにて、友人と孤児院を訪問したことも
今後の目標
〜 可能性は無限大。次の世代のリーダーを育てたい 〜
南部:今後の目標を教えてください。
ピリ:ケニアでもっといろいろな事業をやっていきたいですし、他のアフリカの国にも広げていきたいです。可能性は無限大だと感じています。とにかく、そのポテンシャルを最大限発揮するためにできることをすべてやれるように徹底したいですね。
また、つい先日は現地スタッフが二人増えました。今後も仲間を増やして事業も大きくしていきたいです。そしてこれは私自身の人生の軸ですが、アフリカの次の世代のリーダーを育て、その人たちが国を変えていくところにもコミットしていきたいです。
アンバサダーの皆様へ一言
ピリ:いつも応援ありがとうございます。皆さまのご支援は、団体全体が活動を続けていくために本当に不可欠なものです。心から感謝しています。ケニアにはまだ生かしきれていないポテンシャルがたくさんあります。それを必ず生かしていくつもりで頑張りますので、これからも変わらぬご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。
▲マラウイの湖(ピリ撮影)
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