メンバーの声
【メンバーの声】海外事業局 向出 洋祐

[2026年1月]

日頃より温かいご支援、誠にありがとうございます。 ニュースレター担当の髙梨です。

「メンバーの声」では、アクセプト・インターナショナル(以下、アクセプト)のメンバーのご紹介をしております。

共に問題解決を目指す「同志」であるアンバサダーの皆さまに当法人のメンバーの人となりを知っていただくことで、より身近に感じていただくとともに、内部でどのような活動をしているのかも知っていただけたら幸いです。

今回は、インドネシア事業とパレスチナ事業を担当されている向出 洋祐(むかいで ようすけ)さんにお話を伺いました。


1.アクセプトでの業務について

髙梨: お忙しいところ、インタビューを受けていただきありがとうございます。早速ですが、まずはアクセプトでの業務について教えていただけますか?

向出: インドネシア事業部長として、2024年から外務省の委託を受け、テロに関わった容疑で刑務所に収監されている受刑者や、すでに出所した元受刑者の方々への支援を行ってきました。その事業の管理・運営、例えば現地当局との調整や実際に現地での事業実施とモニタリングも担当していました。

インドネシアでの事業は2025年7月に委託期間が終わり一段落した後は、パレスチナ事業にも関わっています。8月に日本で開催したパレスチナ若手リーダーとの対話会合では、関係機関との調整などに奔走していました。現在は、8月に日本に来たパレスチナの方々と定期的にオンラインでミーティングをして、対話会合で取り決めた東京宣言やアクションプランで掲げた活動を実施するために必要な準備を進めています。

▲パレスチナリーダーと日本の市民社会との対話・交流会@東京ジャーミイ

髙梨: 実際に現地のインドネシアにも行かれていたんですね。

向出: 合計で8か月くらいインドネシアに行っていました。出張ベースで日本と行き来しながら進めていましたが、振り返ると現地にいた時間のほうが長かったですね。

髙梨: そこでの実際の活動はいかがでしたか?印象に残っていることはありますか?

向出: 一番印象に残っているのが、最初に刑務所で受刑者の方々向けに実施した「幻滅対策セッション」という活動です。このセッションは、彼らが刑期を終えて社会に復帰したとしても、地域コミュニティには受け入れてもらいづらく、それをきっかけに再び社会に幻滅してしまいかねない背景から、困難な状況に陥っても対処できるように準備することを目的としたワークショップです。

自分も、いわゆるテロリストの方々と初めて対面する場で緊張していて、うまく反応してくれるだろうかと不安でしたが、実際はとてもフレンドリーで、積極的に意見を話し、フィードバックもたくさん書いてくれました。

最後には「一緒に写真を撮ろう」と言ってくれて、みんなで写真を撮りました。その時、自分が「テロリスト」という固定観念で見ていたことに気づき、直接話してみないとわからないことがあると強く感じました。今も心に残っています。

▲幻滅対策セッション後に受刑者と向出さん

髙梨: パレスチナの事業に新たに関わってみて、印象に残っていることはありますか?

向出: 昨年8月の対話会合で、14人のパレスチナ人リーダーが日本に来たことが印象的でした。7月にインドネシアから日本へ戻ってすぐ準備を始め、関係機関に連絡を取りまくるなど慌ただしいなか、どんな人たちなのか想像を膨らませていました。

実際には、私よりも若いのに、パレスチナの将来を真剣に考えている方ばかりで、圧倒されました。私自身、学生の頃から「パレスチナ和平は大事な問題だ」と思いつつ、自分にできることはないとどこか諦めていた部分があったので、担当になったことで「主体者として問題解決に向けて動いていかなければ」という自覚が芽生えました。

髙梨: パレスチナの事業で感じる葛藤はありますか?

向出: 私はパレスチナが専門というわけではないので、勉強しながらの部分もあります。対話会合では、参加者の中でも考え方が大きく異なる場面があり、もどかしさも感じました。「イスラエルが敵だ」で終わってしまうのではなく、そこからもう一歩、「良くするために何をするか」に進める必要があります。

それこそ、パレスチナの内部の分断とかもよく言われてますけど、14人の若手リーダーの中でも、建設的な意見を言っていこうと、みんなを引っ張ろうとする人がいる一方で、「いや、戦争やってる途中に対話なんか無理だ」というような発言をする参加者もいたりして。パレスチナは政党や個人レベルで考えがかなり違う点が難しさだと感じます。

一人間として彼らと向き合うのは当然として、次のステップにどう繋げていくかは、日々探りながら取り組んでいます


2.バックグラウンド/加入したきっかけ

髙梨: 一筋縄ではいかない難しさを感じます。

次に、過去ついても振り返っていただきつつ、アクセプトへの加入につながった経緯をお聞かせてください。

向出: 国際協力に関心を持ったのは中学3年生の時です。社会の授業で、日本の芸能人がケニアで井戸を掘るという番組を見て、世界には水すら満足に得られない人がいると知りました。そういう人たちのために何かしたいと思ったのがきっかけです。

大学では国際文化や国際関係を学びました。ソマリアを描いた映画『ブラックホーク・ダウン』の冒頭で、同じ国の人同士が殺し合う状況がいかにして生まれたのか、またいかに解決しうるかに関心を持って、ソマリアを研究することに決めました。

大学院で平和構築や社会的包摂なども深く学ぶ中で、ソマリアやケニアで平和構築の最前線で活動するアクセプトを知り、活動説明会に参加してアンバサダーにもなりました。修士論文執筆にあたっては代表の永井さんや当時ケニア事業を担当されていた山崎さん(現在コミュニケーション局長)にインタビューもさせてもらいました。

ただ、大学院を卒業してすぐアクセプトに入るには専門性や経験が足りないと感じ、一度、より上流から国際協力や平和構築を俯瞰できる場を探しました。そこで外務省の在外公館専門調査員という仕事を見つけて、在クウェート日本大使館で3年間勤務しました。クウェートはアラブ諸国の中でも特に敬虔なイスラム教徒が多い国として知られており、ラマダンやディワニヤなどイスラム文化を経験できたことが、今も役に立ったりしています。

任期が終わりにさしかかり、次のキャリアを考えなければと思っていたときに、『情熱大陸』で永井さんの活動を見てアクセプト熱が再燃し、奇しくも永井さんが私の地元・愛知で講演をされた際に参加させていただいたのですが、約4年ぶりの再会だったにも関わらず「あの時の向出くん?」と覚えていてくださって嬉しかったです。そこで団体拡大の一環で人材を募集していると伺い、思い切って応募しました。

髙梨: 私も小学生の頃から国際協力に興味があったものの、大学で学ぼうという発想には至らなかったのですが、中学3年生の時に国際協力に関心を持ったところから、大学で専門的に学ぶまでの熱量を持ち続けられた理由は何かありますか?

向出: 中学生の頃から英語が好きで、ALTの先生と話すのが楽しかったことが大きいです。そこから世界のことにも関心を持ち、高校で世界史を学ぶ中で、日本も世界史の一部だと実感しました。国際協力そのものというより、もう少し漠然と自分の知らない世界を知りたい気持ちがありました。


3.アクセプトの好きなところ・自慢できるところ

髙梨: そうだったんですね。私も過去に戻れるなら、国際的な分野を大学で学びたいなと思いました。

では次に、メンバーとして加入してみて感じる、アクセプトの好きなところ・自慢できるところはありますか?

向出: 世界で最も難しい問題と言っていいような課題に切り込んでいることですかね。他の団体にはなかなか真似できないことで、そこに私たちの唯一無二のアイデンティティがあると思います。メンバーも良い人ばかりで、どうにか皆さんの役に立てるよう日々精進しています。

大企業や政府機関ではない分、柔軟性があり、働きやすい環境だと思います。自由度がある一方、自分の仕事ぶりが経費や活動の成果、団体のパーパスにも関わるので、適度な緊張感もあります。

▲地域との対話セッション後に現地職員・保護観察官と


4.アクセプトで苦労していること、学んだこと

髙梨: なるほど。逆に、業務の中で苦労していることや、大きな学びになったことはありますか?

向出: インドネシアではプロジェクトマネージャーの大役を任せていただきましたが、知識や経験も足りていないので、周りの方々にサポートしていただきつつ、足りないものを自分で補いながら仕事をしています。入職して1年半経った今も、もがきながらやっている感覚です。特に、外国の方々と働いていると、些細なことでもスムーズに進まなかったりして、骨が折れます。

学びとしては、新規事業の案件形成にあたっては、ニーズがあるだけではプロジェクトにならないということです。現地の人が困っていることをすべてやりたいと思いがちですが、彼ら自身が果たすべき責任を放棄し、私たちに依存することになりかねません。また、私たちの活動がいかにそのニーズを満たし、その結果ドナーや社会に対してどんな価値やインパクトを生むのか、論理立てて説明するところまで含めて事業形成だと考えています。その事業が認められた暁には、最後まで全うすることが、お金を預けてくださる寄付者の方々や政府に対する私たちの責任であると感じています。

最近はフィリピン南部・ミンダナオ島においても活動を拡大すべく、現地政府とも調整を進めています。

ミンダナオ島にはフィリピンでは少数派であるイスラーム教徒が多く暮らしていましたが、1960年代以降、独立や自治を求めて「モロ・イスラーム解放戦線(MILF)」と呼ばれる反政府武装組織が政府軍と武力闘争を繰り広げてきました。2014年に和平合意が締結され、MILF元正規軍の社会復帰が進められている一方で、イスラム国の思想に共鳴し忠誠を誓うマウテ・グループなどのいわゆるテロ組織への支援はそうした和平プロセスに含まれておらず、また地域社会からも疎まれ、支援から取り残されています。

私たちは、2023年から2024年にかけて、現地の政府や軍、NGOの協力の下、マウテ・グループ元戦闘員の若者たちに現地で聞き取り調査を行い、彼らがどのような状況に置かれているか、またどのような支援ニーズがあるかについて理解を深めてきました。そこで、そうしたニーズにアプローチするための支援のあり方や具体的なプログラム内容などについて、実際に現地を訪問して関係機関との調整を行っています。

▲マニラでのフィリピン政府機関とのミーティング

髙梨: 今のお話を聞いて、ニーズがあってもすべて支援に繋げられるわけではないというのが、新たな気づきでした。

メンバーになってから、考え方やプライベートなどで変化はありましたか?

向出: 以前は「平和構築は自分にはどうにもできない」と思っていた節がありましたが、今は自分の手で平和を作っていく実感があります。例えば、現地でワークショップをする時のスピーチの一文、ワークシートの一単語でさえも参加者に影響を与えうると考えると、身が引き締まる思いです。

髙梨: 多くの人は平和になってほしいと思いつつも、「無謀だよね」と言われそうで、口にできないこともあると思うのですが、平和構築を信じ続けられる秘訣やマインドはありますか?

向出: 「平和」という言葉は昨今の世界情勢を鑑みると余計に野心的で理想主義的に聞こえるかもしれませんが、小さなステップを積み上げた先に平和がある、と考えています。先ほど少しお話したように、日々のワークショップ一つでも、それが平和につながっていく実感は持てます。根が深いからこそ、短絡的な解決策を持ち出すとかえって問題が拗れる可能性があります。

パレスチナの問題は何十年も続いていて、正直なところ私たちの代で解決できるかはわかりませんが、今できる最善策を取り続けることが、ゴールに少しでも近づく最善手だと思います。

▲刑務官・保護観察官向けワークショップを行う向出さん


5.プライベートなお話

髙梨: ありがとうございます。

では、ちょっと質問の方向性を変えて、プライベートでの最近の楽しみやハマっていることはありますか?

向出: コロナ禍をきっかけに独学でピアノを弾くようになりました。自分が楽しんでリラックスするためだけに弾いているので、人前で演奏できる腕前はないですが、今も仕事後や週末に弾いていますし、インドネシア出張中も我慢できずに現地で電子ピアノを買ってしまいました。

最近は日本のお城にも興味があります。盆休みに地元で友人に解説してもらいながら巡ったら意外と面白くて、日本にいる間に他のお城も巡れたらと思っています。海外駐在が長く、実際海外生活も刺激的で好きですが、日本ならではの落ち着いた空間や茶室のような侘び寂びに改めて惹かれています。


6.アンバサダーの皆様へ一言

髙梨: それでは最後に、アンバサダーの皆さんへのメッセージをいただけますか?

向出: インドネシアでは主に日本政府からの委託で実施していた一方、パレスチナの活動はほとんどアンバサダーの皆様のご寄付で実現しています。心より感謝申し上げます。実際に事業を運営する側にいることで、資金の有無でできることが大きく変わるのを痛感しています。

ご寄付をいただくだけではなく、交流会への参加、パレスチナ人リーダー来日時のメッセージカードなどといった、実際の対象者・支援者と交流できる機会を増やすことで、「自分も一緒に世界平和に貢献している」という実感を持っていただけるよう、意識して取り組んでいきたいと思います。

かつての私のように「自分にできることはない」と思っていらっしゃる方にこそ、私たちと共に、一人でも多くの対象者に支援を届け、世界に残る憎しみの連鎖を一つでもほどいていければ幸いです。

今後とも温かなご支援を何卒よろしくお願いいたします。


メンバーの声をお読みいただきありがとうございます。

各回のメンバーの声について、より皆さまのニーズに合ったものをお届けするためのアンケートを実施しております。所要時間は1~2分、全3~4問の簡単なアンケートとなっております。

ぜひご協力いただけると幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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