コラム

イエメンの現在の治安は?イエメンの現状を事例とともに詳しく解説!

2026年現在、イエメンの情勢は内戦の影響で不安定であり、外務省はイエメン全土に対してレベル4の退避勧告(退避してください。渡航は止めてください)を発出しています。本記事では、そんなイエメンの現在の治安やその状況について詳しく解説します。ぜひ最後までお読みください。

イエメン基本情報

イエメンはアラビア半島南端に位置し、1990年に北イエメンと南イエメンが統一されて現在のイエメン共和国が誕生しました。首都はサナアに位置します。

2023年時点で人口は約3900万人¹。その大多数がイスラム教徒で、南部ではスンナ派の分派であるシャーフィー派、北部ではシーア派の分派であるザイド派が中心です。人数比ではシャーフィー派がザイド派の約2倍にのぼります²。

世界遺産は4つあり、治安が安定している時は美しい街並みの観光地でした。

▲首都サナアの旧市街地


イエメンの現在の治安と現状

現在の治安

イエメンの治安は非常に深刻な状況で、2026年1月現在で外務省はイエメン全土に対して危険レベルが最も高い「レベル4:退避勧告」を出しています。

こうした治安悪化の背景としては2015年から続く内戦が挙げられます。2022年4月に停戦合意が実現しましたが、同年10月にはこの合意は失効し、現在も戦闘は続いています。

※イエメンの紛争に関しては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ併せてご一読ください。
イエメン紛争の原因とは?内戦の経緯から現状を詳しく解説!

現状

イエメンでは2015年3月に始まった内戦が続き「世界最悪の人道危機」と呼ばれています³。

国連開発計画によると、2021年末までに約37万7000人が死亡しており、その多くは食料不足や劣悪な生活環境による間接的なものとされています⁴。2025年時点では、人口の約半数にあたる1950万人が人道援助を必要とし、国内避難民は480万人、食料支援が必要な人は1710万人ほどいると考えられています⁵。

2022年の一時停戦で状況は改善しましたが、紛争終結の見通しは立っておらず、「忘れられた危機」とも言われています⁶。

※現在のイエメンでの紛争については以下の記事で詳しく解説しています。併せてぜひご一読ください。
イエメン紛争の原因とは?内戦の経緯から現状を詳しく解説!

〇こうした危機の中で、当法人のイエメンでの活動がTBS「報道特集」で特集されました。以下のリンクから動画をご覧いただけます。


戦闘が起きている地域の例

イエメンは外務省による危険レベル4の退避勧告が全土で出ていますが、その中でも戦闘が活発で特にリスクが高いエリアがあります。

▲2022年時点の勢力図
白:政府軍勢力 水色:フーシ派勢力 緑:南部暫定協議会(STC) 赤斑点:AQAP 黄色:混在地域

出典: Political Geography Now (2022) ‘Yemen Control Map & Report: Truce Pauses Fighting – April 2022’ Available at: https://www.polgeonow.com/2022/04/yemen-civil-war-map-2022.html (Accessed on 17/05/2025)

サダア県(Sa’dah)

サダア県は首都サナアから見て北に位置し、サウジアラビアとの国境に接しています。

イエメン紛争における最大のアクターの一つで、首都サナアを事実上支配している武装組織であるフーシ派(アンサール・アッラー)の本拠地で、しばしばアラブ有志連合軍やアメリカ軍の空爆の標的になっています。

2025年3月にもアメリカ軍による空爆を受けました⁷。こうした作戦の中では軍拠点や要人を狙った攻撃以外にも、市場など民間人が利用する場所での空爆も確認されており、実際に民間人の被害も報告されています⁸。

マアリブ県(Marib)

マアリブ県は首都サナアから見て東に位置しており、石油と天然ガスが豊富な地域です。

イエメン政府軍の拠点もあることから戦略的に非常に重要な場所であり、政府軍とフーシ派との衝突が継続しています。

また、戦闘の中で民間人が犠牲になるケースも多く報告されている地域です。

▲マアリブ県において当法人が運営する戦争捕虜のリハビリ施設の外観

タイズ県(Taiz)

タイズ県は首都サナアから見て南、暫定首都のアデンから見て北西に位置しています。

長引く紛争の最前線であり、民間人の犠牲者も多い地域の一つです。2025年7月には突発的な爆発で子どもが5人亡くなったりと、治安は不安定です⁹。

同時に、紛争の最前線であるためフーシ派からの投降兵や帰還兵が多く存在する地域でもあります。当法人もそうした人々に向けて生活物資の提供や本棚の設置、職業訓練、ケアカウンセリング、宗教再教育など、包括的なリハビリテーション支援と社会復帰支援を行っています。

〇マアリブ県とタイズ県では当法人も活動を行っており、その様子がTBS「報道特集」で特集されました。以下のリンクから動画をご覧いただけます。


イエメンで起きている危険な事案

誘拐

イエメンでは、外国人を狙った誘拐事件が頻繁に発生しています。近年は治安悪化で多くの外国人が国外退避したこともあって外国人に対する誘拐事件の発生件数自体は減少しているものの、危険度が下がったわけではありません。

従来の犯行の多くは部族組織*によるものでしたが、近年ではアラビア半島のアルカーイダ(AQAP)の関与が疑われるケースや、イエメン北部ではフーシ派による犯行も報告されています。

部族組織による誘拐の多くは政府への政治的な要求や身代金目的である一方、フーシ派による犯行では国際機関の職員や政治・人権活動家、ジャーナリストが拘束・誘拐される場合が多く報告されています。

誘拐された場合、拘束が長期にわたるケースが多く、政府の交渉能力にも限界があるため問題解決が難しい場合も多くなっています。

*部族組織とは:
イエメンにおける部族とは、特定の人物を共通の祖先とする血縁集団であり、特定の土地に定住している人々のまとまりを指します¹⁰。イエメンでは部族社会の伝統が全土に根付いており、南北イエメン統一以前は各地の部族が政治に対して多大な影響力を及ぼしていたと考えられています¹¹。

無差別攻撃

イエメンでは、アラビア半島のアル・カーイダ(AQAP)やその関連組織による無差別攻撃が繰り返し発生しています。

主な手口としては、爆弾、自爆、銃撃などが挙げられ、これらの攻撃の標的となるのは政府機関、軍事施設、空港、交通ルート、ホテル、スーパーなどさまざまです。

当法人も活動しているタイズ県では、2023年に国連職員が何者かに射殺された事件も起きています¹²。

強盗

イエメンでは社会情勢および治安の悪化を背景に、強盗や恐喝に遭うリスクも高くなっています。路上での車両強奪や金融機関を狙った犯行が頻発しており、特に外国人や、都市部から離れた場所では被害に遭う危険性が極めて高い状況です。犯行グループは重武装しているケースが一般的とされています。

交通事故

イエメンでは舗装されていない道路が数多くあります。また、横断歩道や信号機がない場所、何より戦闘によって破壊されてしまった道路も多くあります。そのため、交通事故が起きやすくなっており、犠牲につながっています。


あなたにできること

本記事ではイエメンの治安と現状について解説してきました。

ここまで解説してきた通り、イエメンの治安は非常に不安定で、各地で戦闘や犯罪行為が頻発している状況です。

背景には混迷を極めるイエメン紛争がありますが、その構造は極めて複雑です。外交・経済的関心の低さに加え、治安悪化やアクセスの困難さが障壁となり、イエメンは長年にわたり国際社会から取り残されてきました。

その結果、問題の根源である紛争解決にむけたアプローチは足りていないのが現状です。

そこで、私たちアクセプト・インターナショナルは、イエメンの最も大きな紛争アクターであるフーシ派の戦闘員の脱退促進や、投降兵・帰還兵・戦争捕虜への社会復帰プログラム、そして捕虜の解放に向けた働きかけを行なっています。

こうしたプログラムは、紛争の強度を小さくするとともに、対象となる若者たちが自立できるだけのスキルを身に付けることで、元戦闘員の若者が再び戦場へ戻るのを防ぐ役割も持っています。こうして、安定したイエメン社会の実現を目指しています。

このように、当法人は世界的に取り組みが不十分であるイエメン内戦に対し、根本的な紛争解決のアプローチを実践しています。

当法人のイエメンでの活動がTBS「報道特集」で特集されました。以下のリンクから動画をご覧いただけます。

こうした紛争地での活動は、毎月1,500円(1日50円)から活動を支援していただける「アクセプト・アンバサダー」をはじめとした皆様のご寄付があるからこそ実現できています。

紛争に巻き込まれた子どもや若者たちが「武器」を置き、彼ら自身が平和な未来を創ることを実現する。まさに根本的な問題解決を目指す前例のない挑戦に共感していただけましたら、どうかアンバサダーとして共に歩んでいただけますと幸いです。

なお、当法人は「認定NPO法人」として認定を受けているため、当法人へのご寄付は税制優遇の対象となります。詳細はこちらからご覧いただけます。

ただ、いきなり寄付はハードルが高いと思われる方もいるかと思います。当法人では、活動説明会やドキュメンタリー上映会などのオンラインイベントを無料で開催しております。当法人の活動や紛争地のリアルについてより詳しく知りたい方は、ぜひご参加ください。

また、当法人では最新の活動状況をお伝えするニュースレターも無料で毎月配信しています。紛争の最前線の状況について定期的に知りたい方はぜひご登録ください。


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アンバサダーとは月1,500円(1日50円)からの継続的なご支援をもとに「テロや紛争のない世界」を、ともに目指す「同志」です。毎月1,500円で1年間支援すると、大工などの職業訓練を、テロ組織にいた若者2名に1ヶ月間提供できます。

※当法人は「認定NPO法人」として東京都より認定を受けているため、当法人へのご寄付は税制優遇の対象となります。

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出典: ¹ World Bank (2024) “Population, total – Yemen, Rep”, https://data.worldbank.org/indicator/SP.POP.TOTL?locations=YE (Accessed on 10/05/2025)

² 松本 弘(2020)「イエメン内戦──その要因と展開」近藤洋平編『アラビア半島の歴史・文化・社会』東京大学中東地域研究センタースルタン・カブース・グローバル中東研究寄付講座、175–188

³ 国連UNHCR協会「イエメン」https://www.japanforunhcr.org/activity-areas/yemen (2025年5月10日閲覧)

⁴ テイラー・ハンナ、デイビッド・ボール、ジョナサン・メイヤー「イエメン内戦がもたらす影響の検証:復興への道のり」国連開発計画、https://www.undp.org/yemen/publications/assessing-impact-war-yemen-pathways-recovery (2025年5月10日閲覧)

⁵ 国連UNHCR協会「イエメン」https://www.japanforunhcr.org/activity-areas/yemen (2025年5月10日閲覧)

⁶ ibid.

⁷ Cursino, M. “US launches wave of air strikes on Yemen’s Houthis”, BBC News, 16 March 2025, https://www.bbc.co.uk/news/articles/c05mvr3j3yro (Accessed on 29/03/2026)

⁸ Al Jazeera, “Saudi coalition attacks on Saada market kill dozens”, 18 June 2017, https://www.aljazeera.com/news/2017/6/18/saudi-coalition-attacks-on-saada-market-kill-dozens (Accessed on 29/03/2026)

⁹ Al Jazeera, “At least five children killed in blast in southwest Yemen”, 12 July 2025, https://www.aljazeera.com/news/2025/7/12/at-least-five-children-killed-in-blast-in-southwest-yemen (Accessed on 29/03/2026)

¹⁰ 松本 弘(1998)「北イエメンにおける伝統的地域区分と部族」『オリエント』第41巻2号、114-163

¹¹ 松本 弘(2020)「イエメン内戦──その要因と展開」近藤洋平編『アラビア半島の歴史・文化・社会』東京大学中東地域研究センタースルタン・カブース・グローバル中東研究寄付講座、175–188

¹² UN News, “WFP staffer shot and killed in Yemen”, 21 July 2023, https://news.un.org/en/story/2023/07/1139007 (Accessed on 29/03/2026)