コラム

イエメン紛争の原因とは?内戦の経緯から現状を詳しく解説!

今日の中東情勢は非常に不安定な状況となっており、その中でも、イエメンで起きている紛争は最も大きな紛争の一つです。その状況から、イエメンは「世界最大の人道危機」と形容されることもあります。その内戦に至る経緯は非常に複雑で、イエメン紛争を深く理解している人は少ないでしょう。そこで、本記事ではイエメン紛争が起きた原因や現在の状況を詳しく解説していきます。ぜひ最後までお読みください。

イエメンの現状

イエメン共和国基礎情報

イエメンはアラビア半島南端に位置し、1990年に北イエメンと南イエメンが統一されて現在のイエメン共和国が誕生しました。首都はサナアに位置します。

2023年時点で人口は約3900万人¹。その大多数がイスラム教徒で、南部ではスンナ派の分派であるシャーフィー派、北部ではシーア派の分派であるザイド派が中心です。人数比ではシャーフィー派がザイド派の約2倍にのぼります²。

▲首都サナアの旧市街地

現在の状況~世界最悪の人道危機~

イエメンでは2015年3月に始まった内戦が続き、「世界最悪の人道危機」と呼ばれています³。

国連開発計画によると、2021年末までに約37万7000人が死亡し、その多くは食料不足や劣悪な生活環境による間接的なものです⁴。2025年現在では、人口の約半数にあたる1950万人が人道援助を必要とし、国内避難民は480万人、食料支援が必要な人は1710万人ほどいると考えられています⁵。

2022年の一時停戦で状況は改善しましたが、紛争終結の見通しは立っておらず、「忘れられた危機」とも言われています⁶。

こうした危機の中で、当法人のイエメンでの活動がTBS「報道特集」で特集されました。以下のリンクから動画をご覧いただけます。


イエメン内戦の歴史的な経緯

2015年までのイエメン

イエメンの統一

1990年、長らく対立していた自由主義体制の北イエメンと社会主義体制の南イエメンが統一を果たしました。この統一は、冷戦終結に伴う東ヨーロッパでの社会主義勢力の崩壊という国際情勢の変化にも後押しされ、イエメンは民主化への道を歩み始めます。

新国家の大統領には、北イエメンの大統領だったアリー・アブドッラー・サーレハが就任し、軍の実権も彼が掌握することになりました。当時の国力や情勢から見ると北イエメンが優位な形での統一でしたが、形式上は旧南北の関係が対等であることが強調されました⁷。

▲北イエメンと南イエメンの地図

出典: Wikimedia Commons (2011) “Divided Yemen”, October 20, https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Divided_Yemen.svg (Accessed on 02/08/2025)

1994年イエメン内戦

イラクがクウェートに侵攻した1990年の湾岸戦争では、イエメンがイラクを支持した結果、イエメンは国際社会から孤立し、経済は深刻な打撃を受け経済危機に陥りました⁸。

さらに、1994年、旧南イエメンの独立派が蜂起し内戦に突入します。結果としてサーレハ政権が勝利し統一は維持されたものの、この内戦で経済状況はさらに悪化しました⁹。

そこで経済を立て直すべく、1996年からは国際機関によるイエメン経済への介入が始まりました。

今日のアクターの形成

その結果、首都サナアでは都市開発が進み、携帯電話などの新事業も生まれるなど、復興は順調に進んでいきました¹⁰。一方で、ディーゼル燃料や小麦への補助金削減による物価高や、公務員・軍人の解雇など、国民生活への悪影響も同時に生まれていきました¹¹。

ただ、結果としてはこの経済政策がサーレハの支持拡大につながり、1997年には単独政権を樹立し民主化が促進されました。

サーレハの独裁

▲サーレハ大統領(在任期間:1990~2012)

出典: Wikimedia Commons (2004) “Ali Abdullah Saleh 2004”, June 8, https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ali_Abdullah_Saleh_2004.jpg (Accessed on 02/08/2025)

サーレハ政権下では民主化が進みましたが、それと同時に民衆からの支持を得るにつれて民主主義の原則から逸脱していき、実質的には独裁的な政権となっていく現象も起きました。

2015年からのイエメン内戦の原因とプロセス

2011年には、アラブ諸国で民主化と自由を求める運動(アラブの春)が広がり、2011年2月にイエメンでもサーレハ大統領の退陣を求めるデモが始まり、2012年に副大統領ハーディーが次期大統領に就任しました。

ハーディー大統領の暫定政権の下では、2年の期限で新たな国として立て直していくプロセスが開始されました。ただ、この期間で生活が一向に良くならないことに対して国民の間に不満が蓄積していきます¹²。

さらに、この間にフーシ派(以下の「イエメン内戦の主なアクター」で解説)と元大統領サーレハ及び親サーレハの部隊が結託し、反政府勢力が力をつけていきました。

そして、2014年9月には反政府勢力が首都サナアを占領し、2015年3月にはハーディー大統領がサウジアラビアへ亡命。その後、フーシ派がさらに南部に勢力を拡大し、現在まで続く内戦に発展しました。


イエメン内戦の主なアクター

イエメンの内戦は、イエメン政府vsフーシ派の二項対立ではなく、他にも様々な勢力が関わっており、紛争を複雑なものにしています。

イエメン政府

まず、イエメン内戦のアクターとしてイエメン政府が挙げられます。ここまで解説してきた通り、第2代大統領ハーディーはフーシ派との抗争のなかでサウジアラビアに亡命しており、この内戦においてもサウジアラビアの支援を受けています。

首都サナアがフーシ派に占領されているため、アデンを暫定の首都としています。

フーシ派(アンサール・アッラー)

▲サーレハ大統領(在任期間:1990~2012)

出典: Wikimedia Commons (2015) “Houthis protest against airstrikes”, September 4, https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Houthis_protest_against_airstrikes_4.png (Accessed on 02/08/2025)

次に挙げられるのは、イエメン内戦におけるもっとも大きなアクターの一つであるフーシ派です。

フーシ派はシーア派の一派であるザイド派の復興運動として始まりましたが、組織拡大とともに反米・反イスラエルの主張も加わりました。現在のスローガンは「神は偉大なり/アメリカに死を/イスラエルに死を/ユダヤ教徒に呪いを/イスラムに勝利を」です。

2004年には政府と武力衝突し、イランの支援を受けているとされます。

2010年には「アンサール・アッラー」と名乗り、2025年には再びアメリカから「外国テロ組織」に指定されました。

南部運動(ヒラーク)/南部暫定協議会(STC)

南部運動は、1994年の内戦により旧南イエメン住民の利益を代表する政党がなくなり、1996年からの国際機関によるイエメン経済への介入で冷遇されたため、2007年に旧南イエメンの独立を目指して結成されました。

2017年にはハーディー大統領との対立から南部暫定協議会(STC)が結成され、2020年4月にはUAEの支援でSTCが独立宣言を行い、ハーディー政権と軍事衝突しました。同年12月にはフーシ派に対抗するためハーディー政権と連立政権を発足させましたが、潜在的には敵対関係にあります。

そして、2025年12月にSTCはイエメン政府に対し軍事行動を開始し、暫定首都のアデンを支配しました。しかし、2026年1月にイエメン政府はサウジアラビアの支援を受け、STCから支配領域を奪還しました。

その後、2026年1月にSTCは解散を表明し、南部の統治に関してサウジアラビアと協力する意向を示しています。ただ、一部のSTCメンバーは解散に反対しているとみられ、情勢はさらに混乱する恐れもあります。

スンナ派過激主義

スンナ派過激主義を掲げる組織として、アラビア半島のアルカーイダ(AQAP)とアンサール・シャリーアが挙げられます。

AQAPはアフガニスタンでビン=ラディンとともに戦った後、イエメンに帰国した分子らにより結成されました。アンサール・シャリーアはAQAPの関連組織です。


イエメン内戦の拡大と現状

サウジアラビア・アラブ諸国の軍事介入

2015年に始まったイエメン内戦は、サウジアラビア主導のアラブ有志連合軍の介入で激化しました。

2015年3月26日から4月21日まで行われた最初の軍事介入は「希望の嵐」作戦と呼ばれ、ハーディー政権を支持し、フーシ派への空爆を開始しました。

その後、「希望の再生」作戦が始まり、フーシ派への空爆と戦闘を継続しつつ、国家再建プロセスの再開を目指しました。

2015年の戦況

▲サーレハ大統領(在任期間:1990~2012)
黄:政府軍勢力  ピンク:AQAPと関連勢力  水色:フーシ派勢力

出典: Political Geography Now (2015) ‘War in Yemen: Map of Territorial Control’ Available at: https://www.polgeonow.com/2015/04/war-in-yemen-map-of-territorial-control.html (Accessed on 17/05/2025)

2015年のアラブ有志連合軍に対抗して、フーシ派もサウジアラビアやUAEなどにミサイル・ドローン攻撃を仕掛けました。

また前述のとおり、フーシ派はサーレハ元大統領とその支持勢力と結託し、首都サナアを含む旧北イエメンの大部分を支配します。しかし、2017年に、フーシ派はハーディー政府と交渉を開始したサーレハを裏切り者として殺害しました。

その間、AQAPは混乱の隙をつき、旧南イエメンで勢力を拡大させました。

2022年の戦況

▲2022年時点の勢力図
白:政府軍勢力 水色:フーシ派勢力 緑:南部暫定協議会(STC) 赤斑点:AQAP 黄色:混在地域

出典: Political Geography Now (2022) ‘Yemen Control Map & Report: Truce Pauses Fighting – April 2022’ Available at: https://www.polgeonow.com/2022/04/yemen-civil-war-map-2022.html (Accessed on 17/05/2025)

2022年もフーシ派は依然として首都サナアを含む旧イエメンの大部分を支配しています。旧南イエメンの地域に関しては、南部暫定評議会が南部の暫定首都アデンを制圧しました。

また、AQAPは当初よりも勢力を大きく縮小させつつも、依然として政府軍などと激しい戦闘を継続しています。

2022年の停戦合意

こうした戦闘が続く中で、国連の仲介により、2022年4月にイエメンで停戦合意が成立しました。同時期には大統領指導評議会が発足し、ハーディ大統領は全権を移譲。それ以降、ラシャード・アル・アリーミー議長が国家元首を務めています。

その後、同年6月と8月には停戦が延長され、暴力の減少や人道状況の改善が見られました。

しかし、停戦期間中にも戦闘・暴力は散見され、特にマアリブ県やタイズ県では戦闘が継続していました。

そして同年10月に停戦合意は失効し、現在も戦闘は続き解決の目途はまだ立っていません。

こうした危機の中で、当法人のイエメンでの活動がTBS「報道特集」で特集されました。以下のリンクから動画をご覧いただけます。


内戦が長期化している原因

ここまで解説した通り、内戦が長期化している原因の一つとして、内戦の勢力が乱立し、三つ巴あるいはそれ以上の対立構造となっていることが挙げられます。

さらに、諸外国が各勢力に支援・加担をしている状況もあります。大国が各々の思惑で行う支援の結果として、紛争が複雑化し、また各陣営は戦闘継続が可能になっています。

以下の章ではなぜこの内戦が長期化しているかを詳しく見ていきます。

サウジアラビア・イランの「代理戦争」

サウジアラビアはイランとの対立の「代理戦争」としてイエメン内戦に積極的に介入していると考えられています。

サウジアラビアとイランの対立は1979年のイラン・イスラム革命に始まり、イランがイスラム革命を他国に波及させようとしたことに対し、サウジアラビアがイスラム世界の盟主として体制維持を図ったことに由来します。

ここで重要なのは、サウジアラビアとイランの対立はこうした中東の覇権を巡る政治的な対立が主な要因で、宗派の違いはこの目的を達成するために利用されている要素の一つである点です。

イエメンの内戦においては、サウジアラビアはイランがフーシ派を支援して影響力拡大を図っていると認識しており、それを防ぐためにフーシ派に対して強硬な態度を取っています。

親サウジアラビア国家・勢力 親イラン国家・勢力
・UAE
・エジプト
・レバノン:レバノン軍団党
・シリア暫定政府
・イエメン政府
など
・イラク
・レバノン:ヒズボラ
・イエメン:フーシ派
など

イランの軍事関与

イラン政府はフーシ派に武器や技術を提供していることを否定していますが、サウジアラビアはイランがフーシ派を支援していると主張しています。

実際に、米海軍・英海軍がイエメンに向かう船からイラン製の武器を押収したとの報告や、国連もイエメンで使用された武器を検査した結果、イラン製と同じ特徴・マーキングを持つものやイラン・中国の合弁会社が製造したものが含まれていたと報告しています¹³。

世界各国からアラブ有志連合への武器提供

イランがフーシ派を支援する一方、アメリカをはじめとする世界各国からもアラブ有志連合への武器提供が報告されています。

アメリカは2015年に軍事支援を公表し、オバマ・トランプ両政権を通じて継続。しかし、バイデン元大統領は2021年2月に軍事支援停止を発表しましたが、和平が進まず、フーシ派によるサウジアラビアへの攻撃激化に伴い、2021年11月に武器売却を再承認、2025年3月にはトランプ大統領が先進精密破壊兵器システム(APKWS)の提供を承認しました¹⁴。

また、欧州各国からの武器もサウジアラビアやUAEによってイエメン内戦で使用されているとの報告もあります¹⁵。

ガザ情勢との呼応

さらに、ガザ地区での紛争もイエメン内戦の長期化に関わっていると考えられます。

2023年10月7日以降、ガザ地区を統治するハマスによるイスラエル攻撃とそれに対するイスラエルのガザ侵攻が開始されました。この紛争では、フーシ派はハマスへの支持を表明し、紅海にてイスラエルと関係があると考えられる船舶への攻撃を行っています。

2023年11月には日本郵船のチャーター船が紅海にてフーシ派に捕らえられるなど、日本にとっても無関係ではありません²²。

こうした船舶への攻撃に対し、たびたびアメリカやイギリスは報復としてフーシ派を空爆しています¹⁶。

<勢力図のまとめ(2026年3月現在)>

Chughtai, A and Hussein, M.A., “Mapping who controls what in Yemen in 2026”, Al Jazeera, 14/01/2026, https://www.aljazeera.com/news/2026/1/14/mapping-who-controls-what-in-yemen-in-2026 (Accessed on 1 March 2026)を基に作成
ライセンス:CC BY-NC-SA 4.0

勢力 主な目的
イエメン政府 イエメンの国家再建/フーシ派の打倒
フーシ派 ザイド派の復権/政権の打倒/イスラエルやアメリカへの抵抗
南部運動・南部暫定評議会
(2026年1月に解散)
南イエメンの独立
サウジアラビア イランの勢力拡大防止、自国の勢力圏拡大
UAE イランの勢力拡大防止、南部独立の支援
イラン 自国の勢力圏拡大
欧米諸国 「テロ」の撲滅/イランを抑えサウジを支援

フーシ派の支配

ここまで、イエメンで起きている内戦の背景や長期化の原因を見てきました。

これまでの解説でもわかる通り、様々なアクターが混在しているイエメン内戦においてフーシ派は特に大きなアクターです。

そこで、この章ではフーシ派に焦点を当て、その支配の方法などを確認していきます。

フーシ派支配下の治安

フーシ派は支配地域での治安回復と安定が実現していると主張しています。

ただ、実際には民間への暴力や部族民との戦闘が発生しており、特に2017年のサーレハ元大統領殺害後は抑圧が強まっていると考えられています。

さらに、国連機関や国際NGO職員の拘束が多発し、支援活動の縮小を余儀なくされています。これにより、人道危機がさらに今後悪化することが懸念されています。

フーシ派支配下の徴兵

フーシ派による部族民への徴兵の手法としては、部族にフーシ派に差し出す兵員のノルマを与え、達成できなければ罰則を与えるというものが多いです。

特に、子ども・若者の徴兵も問題となっています。実際に、欧州地中海人権監視団の調査によると、2014年から2020年の間に総計1万333人の子どもがフーシ派により徴兵されました¹⁷。そのうち248人は8~11歳、34人は13~17歳の少女となっています。ただ、これらの数字はあくまで認定された子ども兵の数であり、実際には報告以上の子ども兵がいると推測されています。

なお、子ども兵を徴用しているのはフーシ派だけでなく、イエメン政府軍・アラブ連合軍を含む多様な紛争当事者が同様のことを行っているとされています。

子ども・若者の勧誘・徴兵プロセス

▲フーシ派が徴兵した子ども兵士の数を徴兵の戦略別に分類したもの

Euro-Med Human Rights Monitor (2021) “Euro-Med Monitor & SAM’s new report: Houthis recruited more than 10,000 children in Yemen”, Available at: https://euromedmonitor.org/en/article/4173/Euro-Med-Monitor-&-SAM%E2%80%99s-new-report:-Houthis-recruited-more-than-10,000-children-in-Yemen (Accessed on 10/05/2025)を基に作成

フーシ派が徴兵をするプロセスで最も多いものとして、貧困・飢餓のために、徴兵に応じればお金や物資がもらえるという誘惑に乗ってしまうことが挙げられます。

また、多くの方が想像するような脅迫や拉致のような暴力的な手段も少なからず用いられているのも事実です。

徴兵された子ども兵がたどる道

フーシ派に徴兵された子どもは、思想教育と戦闘訓練を受け、戦闘員や諜報員などさまざまな役割で前線で任務に就くことが多いです。

彼らは命令に背けば投獄や虐待を受け、強制的な服従を強いられます。そのため、自力で組織を抜け出すことは非常に抜け出すことは非常に難しいだけでなく、大きなリスクを伴います。何らかの理由で組織を離れられたとしても、教育などの機会を奪われた若者たちの社会復帰は困難であり、一度組織を抜けたとしても再過激化のリスクが高くなります。

当法人が行っているフーシ派に所属していた若者に対する支援がTBS「報道特集」で特集されました。以下のリンクから動画をご覧いただけます。


イエメン内戦の影響

長引く紛争はその直接的な暴力以外にも、道路や建物といった物的インフラ、経済、公共サービスの提供、保健や教育システム、そして社会構造に大きなダメージを与えています。

人道危機の悪化

長引く紛争により、何十万人もの人が亡くなりました。その多くは内戦の直接的な暴力の結果ですが、食料不足や生活環境の悪化など、内戦の間接的な影響による死もあります。

2021年末までに37万7000人が死亡し、その70%は5歳未満の子どもでした¹⁸。さらに、2030年まで紛争が続けば、死者数は累計130万人にまで達する恐れがあり、その70%以上が間接的な原因によるもので、死者の80%を5歳未満の子どもが占めると推定されています¹⁹。

また、紛争によって国内外に避難を余儀なくされる人は増え続けており、2024年時点で国内避難民の数は480万人にも及びます²⁰。

食料危機

内戦の影響でイエメンの経済は悪化し、通貨の価値が下落した一方で、2021年の食料価格は2015年以降の最高水準へと高騰しました²¹。その結果、紛争が始まってから1560万人が極度の貧困に陥り、860万人が栄養不足となりました²²。

2025年時点では、食料支援を必要とする人が1710万人いると報告されています²³。

さらに、イエメン全域で220万人の子どもや130万人の妊産婦が急性栄養不良に陥っています²⁴。

▲こうした食料危機に対して、当法人がイエメンにて行っている食料パッケージ配布の様子

感染症の蔓延

長年続く紛争の影響により、イエメンでは保健インフラは崩壊し、保健サービスが国民に行き届かない状況となりました。

さらに、支援物資と援助関係者を現地に届ける際には、戦闘の激化や移動の制限など、様々な課題に直面しています²⁵。そんな中、2019年には下痢とコレラが蔓延し、感染者数は10万9000人、死者数は190人に上りました²⁶。症例の3分の1は5歳未満の子どもであったと報告されています。

気候変動への脆弱性

近年の気候変動に伴い、イエメンでは海面上昇や干ばつ、洪水などさまざまな脅威に直面しており、世界で気候変動に最も脆弱な国の一つとされています。

実際、2024年6月から8月にかけての大雨で洪水が発生したことで84人が死亡し、数千人が避難する事態となりました²⁷。

加えて、長引く紛争によってインフラが弱体化し、こうした災害への対応や備えもできていない状況です。その結果、気候変動の影響による被害や損失が通常よりも深刻化し、さらに人道危機を悪化させてしまうという負の連鎖に陥っています²⁸。

教育機会の欠如

2015年3月の内戦開始以来、イエメンの教育システムは壊滅的な影響を受けています。2021年までに約4校に1校にあたる2916校が破壊され、17万人以上の教師が4年以上給与を受け取っておらず、約400万人の子どもたちが教育中断や退学の危機に瀕しています²⁹。

2021年時点で200万人強の子どもが学校に通えておらず、これは2015年の2倍にあたります³⁰。

紛争地での教育機会の欠如は、女性の早婚や家庭内暴力、男性の武装集団へのリクルートのリスクを高め、紛争をさらに悪化させる原因にもなっています。


あなたにできること

本記事では、イエメンで起きている内戦について、その原因や内戦アクター、内戦の影響などを詳しく解説してきました。

ここまで強調してきたように、イエメンの内戦は単純な「政府 vs.フーシ派」ではなく、権力闘争、同盟内の対立、様々な国の介入をはらんで複雑化しています。そうした状況でフーシ派は勢力を拡大させ、支配地域では子ども兵の強制・半強制的な徴兵や思想教育などを行っています。

その結果、紛争は長期化し「世界最大の人道危機」とも言われる状況に陥っています。ただ、問題の根源である紛争解決にむけたアプローチは足りていないのが現状です。 そのため、国際社会は紛争を止めるための根本的な新しいアプローチを必要としているのです。

私たちアクセプト・インターナショナルは、イエメンにて最も大きな紛争アクターであるフーシ派の戦闘員の脱退促進や、投降兵・帰還兵・戦争捕虜への社会復帰プログラム、そして捕虜の解放に向けた働きかけを行なっています。

こうしたプログラムは、紛争の強度を小さくするとともに、対象となる若者たちが自立できるだけのスキルを身に付けることで、元戦闘員の若者が再び戦場へ戻るのを防ぐ役割も持っています。こうして、安定したイエメン社会の実現を目指しています。

このように、当法人は世界的に取り組みが不十分であるイエメン内戦に対し、根本的な紛争解決のアプローチを実践しています。

当法人のイエメンでの活動がTBS「報道特集」で特集されました。以下のリンクから動画をご覧いただけます。

こうした紛争地での活動は、毎月1,500円(1日50円)から活動を支援していただける「アクセプト・アンバサダー」をはじめとした皆様のご寄付があるからこそ実現できています。

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ただ、いきなり寄付はハードルが高いと思われる方もいるかと思います。当法人では、活動説明会やドキュメンタリー上映会などのオンラインイベントを無料で開催しております。当法人の活動や紛争地のリアルについてより詳しく知りたい方は、ぜひご参加ください。

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出典: ¹ World Bank (2024) “Population, total – Yemen, Rep”, https://data.worldbank.org/indicator/SP.POP.TOTL?locations=YE (Accessed on 10/05/2025)

² 松本 弘(2020)「イエメン内戦──その要因と展開」近藤洋平編『アラビア半島の歴史・文化・社会』東京大学中東地域研究センタースルタン・カブース・グローバル中東研究寄付講座、175–188

³ 国連UNHCR協会「イエメン」https://www.japanforunhcr.org/activity-areas/yemen (2025年5月10日閲覧)

⁴ テイラー・ハンナ、デイビッド・ボール、ジョナサン・メイヤー「イエメン内戦がもたらす影響の検証:復興への道のり」国連開発計画、https://www.undp.org/yemen/publications/assessing-impact-war-yemen-pathways-recovery (2025年5月10日閲覧)

⁵ 国連UNHCR協会「イエメン」https://www.japanforunhcr.org/activity-areas/yemen (2025年5月10日閲覧)

⁶ ibid.

⁷ 松本 弘(2020)「イエメン内戦──その要因と展開」近藤洋平編『アラビア半島の歴史・文化・社会』東京大学中東地域研究センタースルタン・カブース・グローバル中東研究寄付講座、175–188

⁸ ibid.

⁹ ibid.

¹⁰ ibid.

¹¹ IMF (1999) “Republic of Yemen: Enhanced Structural Adjustment Facility Medium-Term Economic and Financial Policy Framework Paper 1999-2001”, https://www.imf.org/external/np/pfp/1999/yemen/ (Accessed on 10/05/2025)

¹² 佐藤寛(2020)「第3節 イエメン内戦と「アフリカの角」日本国際問題研究所編『反グローバリズム再考ー国際経済秩序を揺るがす危機要因の研究ー』

¹³ The United Nations (2022) “S/2022/50 : UN Documents: Security Council Report”, https://www.securitycouncilreport.org/un-documents/document/s-2022-50.php (Accessed on 10/05/2025)

¹⁴ Stone, M (2025) “US approves precision rocket sale to Saudi Arabia amid Houthi conflict” Reuters, March 20, https://www.reuters.com/world/us-approves-precision-rocket-sale-saudi-arabia-amid-houthi-conflict-2025-03-20/ (Accessed on 10/05/2025)

¹⁵ ATT Monitor (2016) “Dealing in Double Standards: How Arms Sales to Saudi Arabia Are Causing Human Suffering in Yemen”, https://controlarms.org/wp-content/uploads/2018/04/The-report.pdf (Accessed on 10/05/2025)

¹⁶ 『BBC』、「英米軍、イエメンのフーシ派拠点を空爆 紅海での船舶攻撃に報復」2024年1月12日、 https://www.bbc.com/japanese/67954351 (2025年5月10日閲覧)

¹⁷ Euro-Med Human Rights Monitor (2021) “Euro-Med Monitor & SAM’s new report: Houthis recruited more than 10,000 children in Yemen”, https://euromedmonitor.org/en/article/4173/Euro-Med-Monitor-&-SAM%E2%80%99s-new-report:-Houthis-recruited-more-than-10,000-children-in-Yemen (Accessed on 10/05/2025)

¹⁸ テイラー・ハンナ、デイビッド・ボール、ジョナサン・メイヤー「イエメン内戦がもたらす影響の検証:復興への道のり」国連開発計画、https://www.undp.org/yemen/publications/assessing-impact-war-yemen-pathways-recovery (2025年5月10日閲覧)

¹⁹ ibid.

²⁰ 国連UNHCR協会「イエメン人道危機」https://www.japanforunhcr.org/appeal/yemen (2025年5月10日閲覧)

²¹ UNICEF「イエメン 史上最悪の飢餓、飢きんレベル5倍増か」2022年3月12日、https://www.unicef.or.jp/news/2022/0063.html (2025年5月10日閲覧)

²² テイラー・ハンナ、デイビッド・ボール、ジョナサン・メイヤー「イエメン内戦がもたらす影響の検証:復興への道のり」国連開発計画、https://www.undp.org/yemen/publications/assessing-impact-war-yemen-pathways-recovery (2025年5月10日閲覧)

²³ 国連UNHCR協会「イエメン人道危機」https://www.japanforunhcr.org/appeal/yemen (2025年5月10日閲覧)

²⁴ UNICEF「イエメン 史上最悪の飢餓、飢きんレベル5倍増か」2022年3月12日、https://www.unicef.or.jp/news/2022/0063.html (2025年5月10日閲覧)

²⁵ UNICEF「イエメン 急増する下痢とコレラ感染 今年感染約10万9,000人、死亡190人」2022年3月26日、https://www.unicef.or.jp/news/2019/0047.html (2025年5月10日閲覧)

²⁶ ibid.

²⁷ TUFS media「イエメン:洪水による死者数が増加」2024年8月30日、http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/r/News20240901_114407.html (2025年5月10日閲覧)

²⁸ ibid.

²⁹ UNICEF, “Education| UNICEF Yemen”, https://www.unicef.org/yemen/education (Accessed on 10/05/2025)

³⁰ UNICEF「イエメン 紛争による教育崩壊、600万人に影響 教師の3分の2が定期的な給与得られず」2021年7月5日、https://www.unicef.or.jp/news/2021/0134.html (2025年5月10日閲覧)