調査報告|非国家武装組織に関わる若者の声と可能性―紛争地の最前線から―
- はじめに
- 1. 多くのYANSAGは子ども時代に非国家武装組織に加入している
- 2. 非国家武装組織のメンバーの70%以上が18歳から35歳である
- 3. 非国家武装組織への加入理由は複雑かつ多様である
- 4. 多くのYANSAGは非国家武装組織からの離脱を望んでいる一方、中には残留を望むものもいる。柔軟なアプローチが不可欠である。
- 5. すべてのYANSAGは、離脱と社会復帰において複数の課題に直面している
- 6. 多くのYANSAGは自分たちの声が政府や国際社会に届いていないと感じている
- 7. 大多数のYANSAGは、平和の担い手になることを熱望しており、その能力があると信じている
- 8. 平和の担い手になるために必要なスキルは多様であり、単なる収入創出だけではない
- 9. 大多数のYANSAGは、政府、国際社会、そして世界中の現役戦闘員に向けたメッセージを持っている
- まとめ
はじめに
現在、世界各地で武力紛争が起きています。そんな現代の武力紛争では「非国家武装組織」と呼ばれる、国に属していない武装組織が関与していることが多くあります。
非国家武装組織が関わると紛争が複雑化し、その根本解決が非常に難しいという実態があります。そんな中、私たちアクセプト・インターナショナルは非国家武装組織に関わる若者(YANSAG: Youth associated with non-state armed groups)に目を向け、彼らの可能性に光を充てることが紛争を根本的に解決するうえで一つの鍵になると信じています。
しかし、YANSAGを取り巻く現実、例えば彼らが武装組織に関与するに至った背景や、直面している具体的なニーズ、社会復帰への課題などはいまだ広く知られていないのが現状です。
そこで上記の点を明らかにしYANSAGの現状を理解することを目的として、私たちアクセプト・インターナショナル及びGlobal Taskforce for Youth Combatants(GTY)*は、日本財団の協力のもと、15ヶ国(ソマリア、イエメン、ケニア、インドネシア、コロンビア、マリ、スーダン、エチオピア、モザンビーク、ウガンダ、ハイチ、パキスタン、フィリピン、スリランカ、ネパール)において、計450人のYANSAGを対象に調査を実施を行いました。
今回の調査により明らかになった9つの主要な発見を以下にまとめます。
*テロや武力紛争に関わる若者の権利やエンパワーメントに関する啓発や議論の促進を目的に、紛争当事者が主体として活動するタスクフォース
▶GTYの公式ホームページ(英語)はこちら
1. 多くのYANSAGは子ども時代に非国家武装組織に加入している
加入時の年齢
調査を実施した15ヶ国において、今回の調査対象者450名が非国家武装組織に加入した平均年齢は20.3歳でした。
しかし、彼らの証言によれば、全15ヶ国において、子ども時代に非国家武装組織に加入した事例が多くあることがわかりました。例えば、全調査国における加入時の平均最小年齢は11.4歳で、スリランカ、ソマリア、コロンビア、ウガンダ、マリでは10歳未満での加入も報告されています。
そして、加入後は多くの者が長期間にわたり組織に関与し続けました。関与期間の平均は2.1年から16.2年の範囲であり、全体の平均は5.5年でした。つまり、子ども時代に武装組織に加わった多くの者が組織の中で成長し、その一員のまま子ども時代を終えているのです。
国際的な保護
子ども時代に武装組織に加入すると、彼らは「武装組織や武装集団に関わる子ども(CAAFAG: Children associated with armed forces and groups)」として扱われ、子どもの権利条約およびその議定書を含む包括的な国際法によって対応・保護されています。
しかし、武装組織の中で18歳に達すると、これらの保護は一般的に適応外になります。その結果、多くの「元CAAFAG」は、若者としてニーズに対応するための法的枠組みが限られた状態に置かれてしまっているのが現状です。
多くのYANSAGが子ども時代に武装組織に加入していることを考えると、国際社会は、彼らへの保護を広げ、支援を拡大する方法を検討することが大切と考えれらます。
2. 非国家武装組織のメンバーの70%以上が18歳から35歳である
現実的には、非国家武装組織内のメンバーの年齢構成に関する正確なデータを調査することはほとんど不可能に近いです。
ただ、今回の調査における対象者の証言をまとめたところ、平均してメンバーの48.6%が18〜29歳であり、さらに23.2%が30〜35歳であるという結果になりました。つまり、非国家武装組織のメンバーの71.8%が18〜35歳の若者世代であることがわかりました。
さらに多くの参加者が、自分たちが所属していた武装組織には18歳未満の子どもも多く含まれていると述べていたことから、非国家武装組織のメンバーのほとんどは子ども~若者世代で占められていると考えられます。
3. 非国家武装組織への加入理由は複雑かつ多様である
ソマリア、イエメン、フィリピンなど、武力紛争にいわゆる暴力的過激主義組織が関与している国々では、武装組織による脅迫や強制、あるいは社会的圧力によって若者が非国家武装組織に取り込まれるケースが多く見られました。
暴力的過激主義組織とは、政治的・宗教的な目的を果たすために暴力を用いる組織のことを一般的に指しており、一部の国から「テロ組織」として指定されているケースもあります。
一方で、スリランカ、ネパール、コロンビア、エチオピア、マリ、パキスタンなど、紛争の根底に政治的イデオロギーや自治権闘争などがある国々では、多くのYANSAGがより良い社会の実現を求めて自発的に非国家武装組織に加入したと述べました。
しかし、どちらの文脈においても武装組織へ加入するという意思決定は、政治的、宗教的、社会的、経済的、そして安全保障に関連する要因が重なり合って形成されることが多く、加入の理由を一つに限定することは難しいということがわかりました。
この事実は、YANSAGの保護を考える際には、若者それぞれの経験や背景を考慮することが重要であることを示しています。
4. 多くのYANSAGは非国家武装組織からの離脱を望んでいる一方、中には残留を望むものもいる。柔軟なアプローチが不可欠である。
今回の調査の中で非国家武装組織からの離脱願望について尋ねたところ、その回答は国によって大きく異なりました。その結果が以下になります。
<離脱願望が多かった国>
ソマリア、イエメン、ハイチ、スーダン、モザンビーク、ウガンダ、ケニア
<離脱願望が少なかった国>
スリランカ、ネパール、インドネシア、コロンビア、エチオピア
<離脱願望が半々であった国>
フィリピン、マリ、パキスタン
非国家武装組織からの離脱に向けて
こうした離脱に対する態度の違いは、彼らが武装組織に加入した経緯や武装組織内での経験、加入期間中の心理状態などによって変わってきます。そのため、彼らが武装組織を離脱するためのサポートは柔軟である必要があります。
例えば、ソマリア、イエメン、ハイチ、スーダンなど現在進行中の激しい武力紛争下では、離脱を望むYANSAGを支援するためにどのような措置を講じることができるかを検討することが極めて重要です。
一方、スリランカ、ネパール、インドネシア、コロンビア、エチオピアのような文脈では、単に離脱を呼びかけるのではなく、YANSAGの視点や加入動機を真摯に受け止め、彼らの目標を達成するための様々な可能性のある道筋を彼らと共に探ることが、より適切なアプローチと考えられます。
また、多くの者が強制的に徴兵されたモザンビークやウガンダのような場所では、救出に焦点を当てた保護措置がより適切です。
このようにYANSAGへの支援では、多様で複雑な背景を考慮し、個々のニーズや実体験に合わせて調整されることが重要となります。
5. すべてのYANSAGは、離脱と社会復帰において複数の課題に直面している
離脱の際のニーズ
非国家武装組織からの離脱は、どんな文脈においても非常に難しいプロセスではあるものの、その中でもソマリア、イエメン、ハイチのように武装組織によって離脱が禁止されている国々においては、その難易度が極めて高い状況があります。こうした地域では、恩赦や離脱のための具体的支援へのニーズが特に高くなっています。
一方で、パキスタンやスーダンのように、組織への加入と離脱がそれぞれが所属する民族コミュニティと密接に結びついている場合、恩赦や離脱支援へのニーズはあまり見られませんでした。
社会復帰の際のニーズ
武力紛争が活発に続いている地域において、YANSAGが社会に戻っていく際の大きな課題の一つに、武装組織からの攻撃が挙げられます。
また、今回の調査では、武力紛争の終結から10年以上が経過している国々であっても、多くのYANSAGが依然として経済的に厳しい状況に置かれていたり、差別やスティグマ(社会的なレッテル)、そして法的地位の不安定さに直面していることが明らかになりました。
以上からもわかる通り、YANSAGの武装組織からの離脱・社会復帰の際のニーズは多様であることが本調査を通じて判明しました。
6. 多くのYANSAGは自分たちの声が政府や国際社会に届いていないと感じている
今回の調査の中で、多くのYANSAGは自分たちの声が政府や国際社会にほとんど届いていないと感じていることが明らかになりました。
こうした疎外感は、彼らが当初武装組織に加入した根本的な理由の一つとなっていることがよくあります。なぜなら、置き去りにされているという感覚は、怒りや絶望といった感情を煽るからで、場合によっては組織の離脱後も再び暴力に加担してしまうリスクを高めることもあります。
近年、特に開発途上国において、若者の視点を政策や開発課題に積極的に取り入れようとする世界的な機運が高まっています。しかし、武装組織に関与した経験を持つ若者が、発言の場を与えられることは稀です。
そのため、YANSAGの声に耳を傾け、それを広めるための積極的な努力が求められており、逆に彼らの声を拾わない状態が続けば、過激化を助長し武力紛争を長期化させるリスクがあります。
7. 大多数のYANSAGは、平和の担い手になることを熱望しており、その能力があると信じている
平和の担い手への願望
今回の調査において、大多数のYANSAGが「平和の担い手」になりたいという強い願望があることがわかりました。
これは、極めて重要でありながら長らく見過ごされてきた点です。つまり、彼らの志に国際社会がどう向き合い、それをいかに活かしていくかが、紛争解決を前進させ、平和を持続させるための鍵を握っていることがわかったのです。
平和の担い手として達成したいこと
平和の担い手として何を達成したいかを尋ねたところ、多くの者が自分自身の経験からの教訓を挙げました。
どの国においても、彼らは一貫して非暴力による解決や弱者への支援、そして平和への寄与の大切さを訴えました。そこには、彼らが共有する普遍的な願いと、それぞれの経験から生まれた独自の視点の両方が映し出されていました。
つまり、彼らが平和の担い手になるというビジョンには大きな可能性があり、YANSAGは単なる「脅威」ではなく、紛争解決に向けた力強い希望の源泉として捉えられるべきなのです。
8. 平和の担い手になるために必要なスキルは多様であり、単なる収入創出だけではない
YANSAGが平和の担い手となるためには多様なスキルが必要であり、そのスキルは多岐にわたります。
収入創出の重要性
平和の担い手となるためのスキルとして、調査を行ったすべての国で、収入創出のためのスキルが重要な要素として浮上しました。
なぜなら、収入は生活を支えるのはもちろんですが、紛争の影響が残る不安定な社会では、安定した仕事を持つことが偏見や差別に立ち向かい、法的な不安定さや身の危険から自分を守る力になるからです。
そして、それは地域社会からの信頼を徐々に取り戻していくことにもつながります。
多様なスキルを持つ重要性
ただそれと同時に、平和の担い手になるためには収入創出のためのスキルを身に付けるだけでは十分ではありません。
調査対象者は、読み書きなどの基礎教育や、問題解決の進め方や平和構築の具体的な手法、対話の技術、リーダーシップ、さらにはストレスや感情をコントロールするアンガーマネジメントといった幅広い能力を身につけることが重要だとも指摘しました。こうしたスキルは、彼らが社会貢献や平和構築の活動に長く携わり続けるために不可欠です。
また多くの参加者が、単に自分の生活費を稼ぐためだけでなく、社会を良くする活動を立ち上げるための資金調達のスキルが必要だと訴えました。
こうした事実は、YANSAGの声を広めるだけでなく、それぞれの置かれた状況で彼らのニーズや可能性を慎重に見極める必要性を物語っています。そうすることで初めて、彼らを包括的に支えるために必要なスキルを網羅的に特定し、育んでいくことが可能になるのです。
9. 大多数のYANSAGは、政府、国際社会、そして世界中の現役戦闘員に向けたメッセージを持っている
本調査により、大多数の若者が社会に伝えたいメッセージを持っていることが明らかになりました。その中には、現地政府や国際社会に対する怒りや失望、そして具体的な要求をぶつける声が多く挙がる一方で、かなりの数の若者が非暴力的な解決策や対話の重要性を強調しました。
中には現役の戦闘員に対して、市民への攻撃を非難し離脱を呼びかける者や、戻ってきた仲間を支える決意を示す者もいました。
彼らが持っている数々のメッセージは、紛争解決と平和構築を前進させる大きな可能性を秘めています。紛争を経験していない若者の意見とは異なり、その視点は当事者としての過酷な実体験に裏打ちされたものです。
この声をどう受け止め、いかに平和への取り組みに活かしていくか。それは今、私たちに突きつけられている極めて重要な問いなのです。
まとめ
15ヶ国に及ぶ今回の調査は、多くのYANSAGが様々な課題に直面しつつも、彼らが秘めるポテンシャルの豊かさ、多様性、そして独自性を浮き彫りにしました。そしてそれは、武力紛争下での複雑かつ過酷な経験を経て形作られたものです。
彼らを単に「社会への脅威」や「紛争の原因」と見なすのではなく、適切な支援によって彼らの可能性を引き出すことができれば、彼らは社会を変えるユニークな「平和の担い手」へと生まれ変わることができます。
そこで、彼らへの支援を単なる社会復帰で終わらせず、その実体験を平和構築の力に変えるための具体的なアクションが今求められています。
彼らには暴力の連鎖を断ち切り、和解と再生の象徴となるポテンシャルがあります。そのため、武力紛争の根本原因に対処するには、彼らを深く理解し、直接対話することが必要です。
今こそ、彼らのユニークな「平和の担い手」としての可能性を認め、育むための実践的な取り組みを推進すべき時です。
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