コラム

ソマリア海賊の現在は?すしざんまい伝説の真相と減少の本当の理由を解説!

2007年頃から活動が急増し、世界的な脅威となったソマリア海賊。「すしざんまいの社長が解決した」という有名なエピソードで、その存在を知った方も多いのではないでしょうか。本記事ではそのソマリア海賊の現状とすしざんまい伝説の真相、そしてソマリア海賊が減少した本当の理由について解説します。ぜひ最後までお読みください。

ソマリア海賊

ソマリア海賊とは

「ソマリア海賊」とは、主にアフリカ東部のソマリア沖やアデン湾で海賊活動を行っている人々を指します。

その活動は、2007年頃急速に活発化し、国際海事局(IMB)の統計によると、2008年には世界全体で発生した海賊事件293件のうち、111件がソマリア沖で発生しました¹。 これは2位のナイジェリア沖(42件)を大きく引き離しての1位でした。さらに、 翌2009年には406件中217件と、ついに過半数を占めるに至っています²。

この海域で出没する海賊の特徴としては、「乗組員を人質にとり、身代金を要求する」という点が挙げられます³。そのために、彼らは重武装をしていることが多く、他の海域に比べて非常に凶悪性が高いといえます。

さらに、ハイジャックした船舶を海賊船化する場合もあり、それが近年みられる出没範囲の拡大の要因であるとされています。

ソマリア海賊の現状

現在は以前に比べるとソマリア沖・アデン湾での海賊の事件数は激減しました。

2011年には海賊事件が237件だったのに対し、2012年には75件、2013年には15件⁴、そして2015年~2024年までは0~9件で推移しています⁵,⁶。

ただし、2019年から2023年までは0~1件だったものの2024年には8件、2025年も9月までで3件の海賊活動が確認されており⁷、全盛期と比べると減ったものの、少々の増加傾向が見られています。

ソマリア海賊が生まれる理由

なぜ、これほどまでに海賊が生まれてしまったのでしょうか。

その背景には、ソマリアの極めて不安定な国内情勢があります。

1980年代後半に勃発した内戦により、ソマリアは1991年から2012年までの21年間もの間、「無政府状態」を経験しました。 現在は正式な政府が発足していますが、依然として度重なる飢饉に加え、難民・国内避難民が発生し続けています。 また、武装組織アル・シャバーブによる支配や住民への暴力が、内戦をさらに激化・長期化させています。

そうした不安定な状況下では違法行為を取り締まる警察組織が脆弱だったため、ソマリア沖では密漁船や廃棄物を投棄する外国船舶が増え、地元の漁業者の生活が困窮しました。

そんな中、イギリスの民間軍事会社がソマリアの有力氏族に対して密輸取り締まりについての技術指導をし、私的な沿岸警備組織が結成されたとの報告があります⁸。

そうした背景から、海賊の出自については主に以下の2つの説が考えられています。

  • 漁業者の武装化説:外国船舶による密漁や廃棄物の投棄によって生活が困窮した地元の漁業者が、当初は漁場防衛のために武装。 しかし、貧困ゆえにその防衛行為が次第に凶悪になり、海賊行為に手を染めるようになったという説。
  • 沿岸警備組織の変質説:イギリスの民間軍事会社から技術指導を受けた私的な沿岸警備組織が、密輸取り締まりの過程で罰金の徴収そのものを目的化させ、海賊化したという説。

いずれにしても、上記で説明したようなソマリア内戦に伴う不安定な社会状況こそが、海賊が増えた最大の原因だと考えられています。


すしざんまいとソマリア海賊

前章で解説した通り、ソマリア海賊の発生数は全盛期に比べると激減しています。この劇的な減少の背景をめぐり、日本では「すしざんまい」の木村社長による貢献が一時期大きな話題となりました。

そこで、この章ではそのエピソードの真相を見ていきます。

すしざんまいのソマリア海賊撲滅伝説の概要

すしざんまいは、2010年ごろからソマリアの隣国ジブチでのビジネスに注力していました。

そんな中、木村社長はソマリア海賊の現状を知り、海洋資源が豊富であるというソマリア沖の特徴を活かして漁業を通して仕事と収入を確保できれば海賊にならずに済むと思い、現地の漁民に漁業やマグロの加工技術の指導をし彼らに魚を獲ってもらい、それを同社で買うための仕組みを作れば彼らの役に立てるのではと考えつきました。

そこで漁業ができる環境の整備をしようとしましたが、ソマリアの治安状況から直接行くことはできなかったため、同じソマリア沖に面する隣国のジブチに中古漁船を送りました。そして同社広報によれば「海賊らしき人と話して、マグロ漁の技術的な指導や加工技術を伝えた」ということです。ただし、肝心の技術指導の様子を写した写真などはどこにも公開されていません。

また、木村社長がジブチに行ったとされる2013年ごろには、すでに海賊の件数は年間200件以上から15件ほどに減少していたため、彼の活動によって海賊が消滅したということには無理があります。

このように直接ソマリア海賊に関わったわけではないものの、このジブチにおける活動がいつしか「ソマリア海賊を直接撲滅した」という伝説として広まっていきました。

ソマリア海賊の激減はこの活動のおかげなのか?

それでは、ソマリア海賊が激減したのは木村社長の活動のおかげなのでしょうか?

結論から言えば、この活動が減少に全く貢献していないとは言えませんが、主な減少理由は以下の章で詳しく解説する「国際社会の対応」によるものが大きいのが現実です。

仮にすしざんまい木村社長の活動が海賊活動の減少に貢献していたとしても、ある一つの活動だけで大きな国際問題である海賊が撲滅・激減したと言うことはそもそもできません。

なぜなら、こうした社会問題、特に本記事で扱っているソマリア海賊という国際問題は、多角的かつ多層的な要素があるからです。

たしかに都市伝説としてはよくできた話であるものの、社会課題解決の実際の現場はそう甘いものではありません。何より、こうした安直な話が広まることで現実の複雑さが見えなくなってしまうという弊害もあると私たちは考えます。

現実とエンタメは全く別物として捉えることが大切であり、これを読んでいただいている皆様はぜひ現実の厳しさにも触れていただければと思います。


ソマリア海賊が減少した本当の理由

出典: LA(PHOT) Dave Jenkins/MOD (2011) “Personnel from RFA Fort Victoria Board a Boat Suspected of Use by Pirates Near Somalia”, Available at:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Personnel_from_RFA_Fort_Victoria_Board_a_Boat_Suspected_of_Use_by_Pirates_Near_Somalia_MOD_45153434.jpg, (Accessed on: 25 February 2026)

それでは、ソマリア海賊が減少した本当の理由はなんなのでしょうか?

海賊被害を劇的に減らしたのは、国際社会による主に以下の取り組みです。

多国籍のソマリア沖でのパトロールの強化

海賊被害の急増を受け、国連安全保障理事会が決議を採択し、各国が海軍艦艇や航空機を派遣してパトロールを強化しました。

具体的には、多国籍部隊を展開したり、アデン湾に「国際推奨航路帯」を設定し、商船をこのルートに集中させて軍艦による護衛効率を高めたりといったことが挙げられます。

日本は海上自衛隊の護衛艦を派遣し商船の護衛をするとともに、航空機からのソマリア沖・アデン湾のパトロールに従事しました。

プントランド自治州の海上警察部隊の強化

ソマリア北東部のプントランド自治州は、ソマリアの中でも海賊が多く生まれている場所でした。そんなソマリア海賊に対応するために、アラブ首長国連邦(UAE)から5000万米ドル(約75億円)の支援を受けて、2010年にプントランド海上警察部隊(Puntland Maritime Police Force: PMPF)が結成されました。

このプントランド海上警察部隊は、2012年からEUソマリア能力構築ミッション(EU Capacity Mission in Somalia)の一環で部隊強化の支援を受け、さらに、南アフリカやセーシェルの民間警備会社からの訓練も受けていると報告されています。

こうした海上警察部隊の強化もソマリア海賊が減った要因の一つと考えられています。

その他の対応

上記の二つがソマリア海賊が激減した大きな要因ですが、その他にも以下のような取り組みが国際的になされてきました。

法的な対応

捕まえた海賊を裁く法律や場所を作るため、国際法と国内法の整備が進められました。

具体的には、2008年の国連安保理決議で、ソマリア領海内での武力行使を含む海賊対処を許可しました。

また、日本も2009年にいわゆる「海賊対処法」を制定するなど、各国が国内法を整備していきました。

民間からの対応

2009年に、ソマリア海賊対策コンタクト・グループという、ソマリア海賊対策に関する各国・各機関・海運業界等による海賊対策や国際協力の調整・情報交換を目的とした国際協力の枠組みが作られました。

そこで「ベスト・マネジメント・プラクティス(BMP)」というガイドラインが策定されました。そこには海賊から襲撃されるリスクの軽減策や襲撃された場合の対処法、そして通報先などが記載され、各海運会社はそれをもとに対策を講じました。


あなたにできること

先述した通り、ソマリアの海賊が生まれた背景にはソマリアでの内戦が大きくかかわっています。

つまり、ソマリアの内戦が終結し平和で安定したソマリア社会がもたらされない限り、国際社会の取り組みで海賊が減ったとしても根本解決とはなりません。ソマリアの紛争の解決を目指していく取り組みこそが、ソマリアの海賊問題の根本解決には必要なのです。

そんな中、私たちアクセプト・インターナショナルは、ソマリア内戦の最も大きなアクターの一つであるアル・シャバーブの戦闘員の離脱支援や、投降兵・受刑者への社会復帰プログラムなどを行なっています。

こうしたプログラムは、紛争強度を直接的に下げるとともに、対象となる若者たちが自立できるだけのスキルを身に付けることで、元戦闘員の若者が社会を良くしていく担い手となり、平和への循環を生み出すことにも繋がります。こうして、安定したソマリア社会の実現を目指しています。

このように、当法人は世界的に取り組みが不十分であるソマリア内戦に対し、根本的な紛争解決のアプローチを実践しています。

そしてこうした紛争地での活動は、毎月1,500円(1日50円)で活動を支援していただける「アクセプト・アンバサダー」をはじめとした皆様のご寄付があるからこそ実現できています。

紛争に巻き込まれた子どもや若者たちが「武器」を置き、彼ら自身が平和な未来を創ることを実現する。まさに根本的な問題解決を目指す前例のない挑戦に共感していただけましたら、どうかアンバサダーとして共に歩んでいただけますと幸いです。

ただ、いきなり寄付はハードルが高いと思われる方もいるかと思います。当法人では、活動説明会やドキュメンタリー上映会などのオンラインイベントを無料で開催しております。当法人の活動や紛争地のリアルについてより詳しく知りたい方は、ぜひご参加ください。

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出典: ¹ 稲本守(2011)「ソマリア沖海賊問題と海賊対処をめぐる一考察」『東京海洋大学研究報告』第7号、pp. 17-29

² Ibid.

³ 渡部大輔、永田康宏、鳥海重喜(2015)「ソマリア周辺海域における海賊活動の地理的分布の変化」『日本航海学会論文集』第132巻、pp. 44-50

⁴ 杉木明子(2016)「誰が『海賊』を処罰するのか ー『地域訴追モデル』とケニアにおける海賊裁判ー」『アフリカレポート』No. 54、pp. 1-12

⁵ ICC International Maritime Bereau, “PIRACY AND ARMED ROBBERY AGAINST SHIPS: REPORT FOR THE PERIOD 1 January – 30 June 2019 ”, July 2019, https://www.icc-ccs.org/reports/2019Q2IMB-Piracy-Report.pdf (Accessed on 23 February 2026)

⁶ ICC International Maritime Bereau, “PIRACY AND ARMED ROBBERY AGAINST SHIPS: REPORT FOR THE PERIOD 1 January – 31 December 2024”, January 2025, https://www.ukpandi.com/fileadmin/uploads/ukpandi/Documents/uk-p-i-club/articles/2025/2024-Jan-Dec-IMB-Piracy-and-Armed-Robbery-Report-2.pdf (Accessed on 23 February 2026)

⁷ ICC Commercial Crime Services, “IMB remains cautionsly optimistic despite uptick in reported attacks”, 14 October 2025, https://icc-ccs.org/imb-remains-cautiously-optimistic-despite-uptick-in-reported-attacks/(Accessed on 23 February 2026)

⁸ 稲本守(2011)「ソマリア沖海賊問題と海賊対処をめぐる一考察」『東京海洋大学研究報告』第7号、pp. 17-29