活動内容
コロンビア

和平合意後の新たな社会を
元戦闘員と共に創る。

コロンビア革命軍(FARC)をはじめとする左翼ゲリラ組織や政府軍などの内戦が50年以上続いたコロンビア。和平合意締結後、武器を置いたFARCの元戦闘員の一部は、農村部に設置された社会復帰キャンプで家族と共に暮らしていますが、こうした人々は地域社会から疎外され続け社会復帰・社会統合、地域社会との和解は遅々として進んでいません。私たちはコロンビア国内で特に脆弱なFARCの元戦闘員が住まう社会復帰キャンプやその周辺地域において、若者をはじめとする元戦闘員の社会復帰を後押しする支援、彼らの社会統合や和解に向けた地域コミュニティとの相互理解を促す活動を実施しています。

コロンビア共和国では、深刻な貧富の差や脆弱な人々の政治参加が阻まれる中で多くの左翼ゲリラ組織が立ち上げられ、50年以上にわたりこうした組織、政府軍、警察と繋がりがあるとされる右翼準軍事組織(パラミリターレス)などの間で内戦が続いてきました。左翼武装組織の最大勢力であるコロンビア革命軍(Fuerzas Armadas Revolucionarias de Colombia: FARC-EP)は、最盛期には20,000人程度の戦闘員がいたとされ、政府や政府軍などに対して暗殺、爆弾攻撃、ハイジャック、誘拐、強奪などの武力攻撃を行ってきました。

2016年の政府とFARCの和平合意締結により、FARCは合法な政党となり、合意に賛同した元戦闘員は武装解除を完了し社会復帰プロセスに移行しています。しかし、今も元戦闘員はその過程で多くの問題を抱えています。元戦闘員の社会復帰・社会統合の準備を促す社会復帰キャンプ(AETCRs)が政府によって設立・運営されていますが、多くの人々が政府からの生活手当を受けながらキャンプで閉鎖的に生活し、地域コミュニティからも隔絶され、経済的・社会的にも脆弱な状態に置かれています。また、和平合意の内容の一部が政府によって適切に執行されない、FARCの元戦闘員たちの社会復帰・社会統合に対する国民の意見が二分されている、和平合意締結以降約400人のFARCの元戦闘員が暗殺されてしまっている、といった問題も抱え、元戦闘員の多くは地域社会との関わりに恐怖や不安を覚え、人々の間での和解を進めていくことも難しい状況が続いています。

こうした状況は、コロンビアにおいて紛争が発生した要因でもある政治・社会的な格差を助長し、若者をはじめ人々が社会に居場所をなくし再び暴力に加担してしまうリスクを高めることにも繋がっています。すでに一部のFARCの元戦闘員達は、複数の武装グループを形成し、政府や治安部隊への攻撃・麻薬取引などの暴力行為を行っています。FARC関連以外にも多様な武装勢力が国内で活動を続けている中で、こうした問題を解決していくことは、コロンビアにおいて負の連鎖を解き、和平プロセスを定着させ持続的な平和を実現するために喫緊の課題となっています。

コロンビアにおける取り組み

私たちは、多くのFARCの元戦闘員が居住し、経済状況や格差などが深刻であるために特に脆弱な状況に置かれるコロンビア南部カケタ県の社会復帰キャンプやその周辺地域社会を拠点に、FARCの元戦闘員の社会復帰・社会統合支援の強化を目指し活動しています。具体的には、社会復帰キャンプにて多目的職業訓練センターを建設・運営し、ケアカウンセリング・職業訓練・ビジネスマネジメント研修・ライフスキルトレーニング・市民教育研修などのリハビリテーション支援、地域コミュニティとの和解に向けた対話セッションなどを実施しています。センターには、周辺地域コミュニティの人々もアクセスし様々な支援を共に受けることができる環境を創り、FARCの元戦闘員と地域社会の人々の交流や相互的な理解を促しています。

元戦闘員に対するケアカウンセリングでは、紛争中のトラウマ的な経験、社会復帰への過程で地域社会の人々から深刻な差別を受けた経験、和平合意後の元戦闘員の暗殺事件による自身や家族の身の安全への不安、といったメンタルヘルスに係る問題に対し、適切なケアを提供しています。また、彼らの過去の経緯や現在・未来など地域社会の中で生活していくことへの想いを受け止めながら、社会復帰に向けた前向きな意識づけを行っています。

また、多くの元戦闘員が政府による月々の手当により生計を賄っている状況や、国際機関などによる支援を受けて習得した職業・ライフスキルや知識などを適切に活用できず就業・起業や進学に至らないといった状況を踏まえ、長期的な経済・社会的な自立に向けた職業訓練・ビジネスマネジメント研修を提供しています。併せて、今後の生活目標、地域社会の人々との人間関係構築、異なる立場や政治的思想を持つ人々を含む多様性の容認、ジェンダーに基づく暴力の防止、コロンビアの平和の実現に向けた元戦闘員の重要性や可能性、などを扱うライフスキルトレーニング・市民教育研修なども行っています。こうしたプログラムの実施には、元戦闘員のメンターとなり彼らの社会復帰プロセスに伴走する政府機関職員を巻き込み、彼らが主体的にプログラムを進めていくための能力強化研修も実施しています。

さらには、元戦闘員と地域社会の人々との相互理解や信頼関係構築を進めていくために、FARCの戦闘員、国内避難民(IDPs)を含む地域コミュニティの人々、政府機関、民間企業などを繋ぎ対話プログラムを実施し、長期的な和解に向けた土壌を創っています。

憎しみの連鎖をほどくために、
今世界で、あなたが必要とされています。