
いつも温かなご支援をいただき誠にありがとうございます。前回の新着記事では東京のモスクで実施した市民交流についてご報告いたしました。
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また、8月18日には若手リーダーによる具体的なアクションプランを伴ったこれまでにない合同宣言として東京宣言が採択されたことを発表いたしました。
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本記事では、若手リーダー来日のご報告の最終回として、東京宣言の舞台裏についてご報告します。
日本滞在の集大成として臨んだ東京会合
8月9日、広島に引き続き2回目の対話会合を東京で実施しました。当日はパレスチナの若手リーダー14名に加え、中東やパレスチナの専門家など10名が来賓として参加しました。
それまでの滞在中、彼ら彼女らは日本の戦後の経験を学ぶとともに市民社会との交流の機会を得ました。また、日本の経済界のリーダーたちとともにビジネスセクターが日本の戦後復興に果たした役割や、今後ガザでどのような協働が可能かといったテーマについての対話も行われ、若手リーダーたちはさまざまな刺激や学びを得ました。
それらを踏まえ、東京会合では「パレスチナ側から具体的な未来への道筋を模索する」ための議論が行われました。
自らが主体となる問い―抵抗とは何か―
冒頭では、ガザ地区での深刻な人道危機への強い懸念とともに、2023年10月7日以前から世界が十分にパレスチナへ関心を向けてこなかった側面が指摘されました。
その中で繰り返し問われたのは「攻撃を行う相手や国際社会を批判することは必要だが、問題解決に向けて、パレスチナの若きリーダーとして自分たちは主体的に何ができるのか」ということでした。
この問いを踏まえ、パレスチナの正当な権利を取り戻すための「抵抗とは何か」が議論されました。ここでいう抵抗とは、武器をとって戦うことに限りません。
ある若手リーダーは、
「武装抵抗によって命を犠牲にしたいとは思わない。しかし、日常的に死に直面する人々には他の選択肢がなく、武装による抵抗しか残されていなかったと考える人もいる。対話、和平合意、外交的解決、妥協も試みられたが、いずれも成功しなかった」
と語りました。
一方で、
「武器を取ることだけが抵抗ではない。日本がそうであったように、教育の充実や経済発展もまた抵抗の形である」
との声も上がりました。
パレスチナの分断を乗り越える改革
また、議論で何度も指摘されたのは、パレスチナ社会を苦しめている「分断」の問題でした。ヨルダン川西岸とガザの往来の難しさ、レバノンなどに暮らすパレスチナ難民が故郷に戻れない現実、そして政党間の隔たりや対立――。実際今回の来日メンバーの間でも、異なる環境や政治的立場の違いから、当初はぎこちない雰囲気や緊張がありました。
しかし、共に時間を過ごす中で「パレスチナの分断は意図的に作られたものであり、国際社会にもその現実を理解してほしい」との声が上がりました。こうした背景からも、今回の会合で異なるセクターや難民としてパレスチナ外に暮らす人々も含めて一堂に会することができた意義が若手リーダーたちの側からも確認されました。

さらに、ここで得られた結束をより有意義で持続的なものとするために、パレスチナ解放機構(PLO)の位置づけについても議論が及びました。
PLOは国連に承認されたパレスチナの代表機関であり、主要政党の一部が加盟していますが、参加していない政党も存在します。確かに問題点はあるものの、PLOに参加してない政党からもその意義が確認されたことは大きな一歩でした。その上で、以下のような意見が述べられました。
また、若者たちが果たすべき役割としては、まず彼らの政治への積極的な参加に対する意識を上げ、各地の青年部間のネットワークを作るべきとの声も。
来賓の方々からは、以下のような期待のメッセージが寄せられました。
「次世代の政治リーダーが確立される必要がある。そしてその見通しを立てることが、地域の外の大国に対しても重要なインパクトを持つ」
「どの政党に属していても、個人としての考えと組織の一員としての立場をどう協調させるかという課題がある。さらに、背負っているものはそれぞれ違っても、同じパレスチナ人としてのアイデンティティを共有しながら、どうすれば建設的な議論ができるのかという問いもある。それぞれが共通の理解に近づいていく様子を大変興味深く見ていた。そして、この後どのような宣言が出されるのかも楽しみにしている」
総じて、彼ら彼女らは意見をぶつけ合いながらも、パレスチナの未来に向けた想いをベースに言葉を紡いでいきました。

「東京宣言」採択──具体的な道筋を示す宣言
長時間にわたる議論を経て、パレスチナ和平に向けた「東京宣言」が無事に採択されました。当初の素案からより具体的になり、また様々な意見をまとめあげることは容易ではありませんでしたが、なんとか形にすることができました。
宣言には以下のようなポイントが明記され、和平への具体的な道筋が盛り込まれています。

そして8月17日には本宣言を現実化するための行動計画を定める「アクション・プラン」も採択され、東京宣言の実践に向けた重要な一歩を踏み出すことができました。
この成果は、政治的立場の違いや地理的分断を超えてパレスチナの人々が力を合わせられることを示す集大成であり、共通の歩みを進めるための出発点となりました。普段は異なる地域に住み、異なる政党・組織に所属するパレスチナ人が未来を担う若者として直接考えを伝え、互いに理解しあう。そうした機会をつくることができたのも、日本で行った対話会合の大きな意義の一つです。
「解決策はパレスチナから生まれる」という信念のもと、彼ら彼女らは具体的行動へ向けて踏み出しました。
オスロが失敗したのであれば、ここ日本から実現する。
アクセプト・インターナショナルは引き続き彼ら彼女らの新たな和平プロセスを支え、恒久的な停戦、そして持続的な平和の実現に向けて今後も歩みを進めてまいります。
日本発の確かな和平に向けたアプローチとして、今後とも皆様の温かなご賛同・ご参加を賜ることができましたら幸いです。