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憎しみの連鎖をほどく 日本から、あなたとともに

パレスチナ若手リーダーとの対話セッション開催レポート

去る11月18日、新たなパレスチナ和平の実現に向けて奮闘する若手リーダー2名を迎え、代表・永井とのオンライン対話セッションを開催しました。

当日は彼ら彼女らの想いや声に耳を傾けながら、パレスチナ和平に向けた道のりを参加者の皆様とともに模索しました。

登壇したのは、エルサレムで若者のエンパワーメントに従事しているバトゥール(女性)と、ヨルダン川西岸出身で主にパレスチナの若者を対象にした平和活動に従事しているカヤード(男性)です。

以下ではトークセッションの要点を皆様にお伝えします。

テーマ①:パレスチナの若手リーダーとして、現在の停戦状況をどのように捉えているか?

バトゥール:
停戦によって少し状況が落ち着き、以前より多くの人に人道支援を届けられるようになりましたが、依然として人道的・政治的な問題が残されています

停戦は必要最低限の合意なので、これを機にさらに議論を促進し、より複雑な問題に取り組んでいくことで長期的な和平が実現されます

カヤード:
まさにそうですね。これはスタートラインに過ぎません。停戦によってようやく「ガザの人々の生活を取り戻すために、私たちは何をすべきか?」ということを考えられる段階になったと思います。

永井:
パレスチナの人々は停戦により希望を持ち始め、和平について様々なアイデアをもっているにもかかわらず、世界中でパレスチナの人々抜きでパレスチナについての議論が進められているように感じざるを得ません。二人はどう思いますか?

バトゥール:
今回の停戦はアメリカの介入によって実現されましたが、そこにパレスチナの人々の意見は全く含まれていません。決定権を持つ主体者の多くは、パレスチナの現状をよく把握していないか、その事実を否定し続けているのです。

最近では多くの国がパレスチナを国家承認し始めましたが、それでもなお依然としてイスラエルの入植とジェノサイドは止まっていません。パレスチナの本当の現状を知ってもらうためにも、私たち自身の声を国際社会で広げていく必要があります

カヤード:
同時に「政治的な解決策は何か」といったマクロな視点だけではなく「パレスチナで生きる人々の生活はどうなっているのか」というミクロな視点を持つことも重要であると思います。

永井:
まさに占領を終わらせ、パレスチナで和平を実現するという共通の目的のためにこれまで多くの手段がとられてきましたが、残念ながらそのほとんどが失敗に終わっています。そしてその手段をめぐって分断が起きている。では、それらをどのようにして乗り越えられるか。ここが問われるべきだと考えています。

バトゥール:
これまではパレスチナ内外で様々な立場の人々が別々に対話を行っていましたが、これからはすべてのパレスチナ人を包括した対話を行っていく必要があると考えます。その意味でもアクセプトが主導している対話は、多様な政党や立場を包摂した有意義な場だと思っています。

テーマ②:停戦中の暴力や戦闘なども続く中で、なぜ今対話が必要なのか?パレスチナ内部の分断を乗り越えて連帯・協働していく意義は?

バトゥール:
対話なしにジェノサイドを止めることはできません。私たちが今どのような問題に直面しているかを把握するためにも対話が必要であり、それを経て初めて、今ある問題に対して団結して立ち向かうことができます。また、もし個人個人が対話を行わずに意見の異なる人々を無視して行動した場合、それはさらなる分断を生むことにも繋がると思います。

カヤード:
私も対話の不足がパレスチナ内部の分断と暴力を生み出していると思います。対話によってパレスチナの人々が社会的な連帯を強め、立ち上がっていくことができるはずです。

永井:
すでに十分な対話が行われてきているとの主張もありますが、より難しく複雑でセンシティブな問題に関する対話は避けられてきているようにも感じます。だからこそ私たちはそこに取り組んできました。どのようにすればそうした難しい問題を扱う対話を広げることができるでしょうか?

カヤード:
アクセプトがまさに今私たちに提供してくれているものでもありますが、多様なバックグランドを持つパレスチナの人々が、制限を受けることなく声を上げられる安全な対話の場を提供する必要があると思います。

バトゥール:
カヤードと同じく、それぞれが安心して話すことのできる対話の場が必要です。こうした場があることで、パレスチナの人々が声を上げる勇気を持つことができると思います

永井:
ありがとうございます。とはいえ、初めて私たち(アクセプト)が主導した対話に参加する際は、不安や懸念を抱いたりはしませんでしたか?

バトゥール:
これまで参加してきた対話の多くは話す内容に制限がつけられており、自分の考えを自由に話せずにいたので、今回もそこに対する不安がありました。しかし、アクセプトの対話の場では私は自由に考えを述べて、自分で意思決定を行うことができます。そこで初めて対話というものに対して新たな希望を持つことができるようになりました。

カヤード:
少し違う視点なのですが、日本の広島・長崎における経験と復興の歴史はパレスチナの今後のモデルとなっていくと思います。パレスチナにおいて日本に対する信頼はとても高く、人々はこれまでの支援について良い評価を持っています。

また、アクセプトはただただ対話を仲介するのではなく「従来の考え方をどのように転換していくのか?」という重要な視座を私たちにもたらしてくれました

テーマ③:これまでの対話会合を経て、どのような変化があったか?個人レベル・それぞれのコミュニティ内での変化など

バトゥール:
パレスチナの市民は、自分たちを代表するはずの政党に対して信頼を失ってしまっている現状があります。しかし東京会合を経て、政党と私たち(市民)は同じ目的を共有しており、ただその実現に向けた手段がそれぞれ異なっているに過ぎないこと、そしてだからこそ、政党に対する希望を私たちは失うべきではないし、この両者のギャップを埋めることが私たちの現状を変えていくうえで非常に重要だということを実感しました。

そのため私はパレスチナに戻った後、この気づきをコミュニティに広めると同時に、政党側と市民側がそれぞれ意見交換できるような場を設けたりもしました

カヤード:
私は対話会合を通して、二つのことに気づきました。一つ目はパレスチナの人々の間での様々な違い・多様性を受け入れていくことで、パレスチナはより豊かになることができるということ。二つ目は、世代を超えて対話の文化を受け継いでいくことが重要であるということです。

永井:
これは個人的な関心ですが、実際にこのような対話を各コミュニティで実施するのはやはりセンシティブで難しいでしょうか。

バトゥール:
非常に難しいです。私たちは非常に簡単な話題から、難しい問題へと段階的に対話を進めてしていく必要がありますが、ここで問題になるのは、私たちがこのような対話を行おうとするとイスラエル側に逮捕されるリスクがあるということです。繰り返しにはなりますが、人々が対話を進めていくためには、対話のための安全な場所が確保されているということが非常に重要です。その意味でも日本での会合は有意義でした。

カヤード:
対話が止まればその次の手段は暴力になるため、対話を継続していくことは必要不可欠です。しかしパレスチナはイスラエルによって物理的・政治的に分断・占領されているため、対話に一貫性を持たせることが非常に難しいと言えます。

永井:
まさにイスラエルの占領下にあるパレスチナはいわば監視下にあります。また、パレスチナ人と一口に言っても、パレスチナ以外の国々にいる人も多く、彼らの多くはこれまで対話や交渉の場から排除されてきました。だからこそ私たちはパレスチナの外でそうした人々を巻き込んで「対話」を行ってきました。ですが同時に、近々ガザにいる人々とオンラインでの対話も予定しています。

対話を行うことが困難な状況下に置かれているガザの人々を巻き込んだ対話をどのようにして実現できると思いますか?

カヤード:
まず伝えておきたいのは「ガザの人々もまた対話の場を欲している」ということです。現在も多くの人々がガザから避難せずにラファ(ガザ南部)にとどまっています。それはガザに戻って故郷を立て直したいという強い思いがあるからであり、その姿勢を今もなお国際社会に示し続けているのです。

バトゥール:
本当にその通りだと思います。パレスチナの人々はどんなに困難な状況であったとしても、もし故郷に帰れる機会があるのならほとんどが帰るという選択肢をとると思います。私たちにとってパレスチナは、唯一私たちの未来がある場所なのです。このような私たちの声を国際社会にもっと広めていく必要があると思います。

永井:
実際、すでにガザからの若手リーダーも何名かが私たちの対話会合に参加していますが、まだ十分ではありません。「これまで自分たちの存在・意見が無視されてきた」という彼らの不満を共有する場としても、彼らを巻き込んだ対話の場が非常に重要だと、改めて感じます。

テーマ④:今、日本の方々に伝えたいこと

バトゥール:
日本は単なる人道支援にとどまらず様々な点、特にパレスチナの正しい現状を国際社会に広めていくという点で重要な役割を果たせると思っています。

そのためにも、日本の皆さんにはフェイクニュースなどに惑わされることなくパレスチナに関する正しい情報を得てほしいと思います。情報の真偽が分からなければいつでも私たちに聞いて欲しいです。皆さんに現場から真の情報をお伝えします。

日本の支援者の皆さんなしに、私たちの声とパレスチナの現状を国際社会で広めていくことはできません。小さな支援では何の役にも立たないなどとは思わないでください。皆さんからいただいたたった一つの言葉でさえも、私たちにとっては大きな希望になります

カヤード:
パレスチナは国際社会の一員として、皆さんとともに手を取り合って平和な社会を築いていくつもりです。

どのような形であっても皆様からのサポートはパレスチナの人々にとって、そして暴力にさらされているすべての人々にとっての希望になります

質疑応答

時間も限られていましたが、いくつか参加者の皆様からの質問にもお答えしました。

①イスラエルとの対話の可能性はあるか?

カヤード:
もちろんです。私たちは彼ら(イスラエル)との対話の準備ができています。彼らが対話のテーブルについてさえくれれば、私たちはいつでも対話ができます。

バトゥール:
まさに私たちは対話を望んでいますが、彼らは自分たちが占領を行っているという事実を指摘されるのを恐れて、対話の場を拒否しているのではないかと思っています。

永井:
私たちは必ず彼らとの対話の場を設ける必要があります。そしてそのためにも、パレスチナ側がまず団結していく必要があるというのが私の考えです。また、イスラエルといっても様々な立場の人々がいますので、将来的に対話の可能性はあると思っていますし、その場を長期的に目指すことは変わりません。


②二国家解決案についてどのように考えているか?

カヤード:
二国家解決案は、唯一の解決策です。これは、パレスチナとイスラエルの間で交わされた唯一の公式合意であるオスロ合意によって、パレスチナ側(PLO)が正式に認めていることでもあります。パレスチナの人々はイスラエルの存在を受け入れていますが、イスラエルの極右勢力はこのオスロ合意を長年にわたり拒否し続けてきました。

近年、国際社会の多くの国々がパレスチナ国家を承認し始めていますが、これはすなわち、これらの国々が国際法や人道法、そしてパレスチナとイスラエル間で交わされた和平合意を履行しているということを意味していると思います。


③なぜ批判の多いファタハがパレスチナ自治政府(PA)の主体になっているのか?

カヤード:
2006年に議会選挙が行われハマスが勝利して以降、パレスチナでは選挙が行われていません。そのため、パレスチナの市民は自分たちのリーダーを選ぶ機会が得られなかったといえます。

また、現在パレスチナの政治はハマスとファタハの二大勢力によって独占されているといえますが、この状況を変えるためにもやはり選挙を行う必要があると考えています。この点は、私たちが東京で策定したアクションプランの中でも重要な位置付けになっています。

さらなる対話の促進に向けて

当事者の視点から見たパレスチナの現状と課題、そして何よりも彼ら彼女らの和平に対する強い思いを、日本の支援者の皆さまに直接お伝えすることのできる重要な機会となりました。

また当日は170名近い方々にご参加いただくなど、登壇したパレスチナの若きリーダー2名にとっても、遠く離れた日本に自分たちを支えてくれる方がいることを改めて実感する貴重な機会となりました。

今後もパレスチナの若きリーダーたちとの対話を継続・拡大し、パレスチナ和平に向けた具体的なプロセスを支えて参ります。その一環として近日中にはガザにいる若手リーダーとのオンライン対話会合を実施する予定です。

パレスチナ和平を目指す若者たちが安心して声を上げることのできる場を継続して設けながら、彼ら彼女らの声を国際社会に広げていくために、ぜひ以下ボタンより寄付を通じたご参加を賜ることができましたら大変幸甚です。

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