NPO法人アクセプト・インターナショナル広報局長の河野智樹と申します。
11月から開始したクラウドファンディングも、残すところわずか14日となりました。計357名の方々から380万円を超えるご寄付を賜ることができ、皆様の暖かなご支援、ご協力に心からお礼申し上げます。
今現在、私は世界一危険な国、世界最悪の紛争地とも呼ばれるソマリアの首都モガディシュに滞在し、現地プロジェクトのアシスタントやプロジェクト管理に奮闘中です。現地では毎日銃声と、時たまテロの爆破音を聞く日々であり、常に危険と隣り合わせで活動を行なっております。
当法人の主な活動拠点である中央刑務所は、テロ組織アルシャバーブの元メンバー、その中でも特にハイリスク及びミドルリスクに分類される人々が収監されており、我々は外国人として初めて足を踏み入れ、プログラムを実施しております。ここでは1300名ほど、そのうちほとんどの方々がいわゆる元テロリストの人々であり、その半数以上が20歳〜30歳の若者です。

プロジェクト内では、1人1人対面で行うケアカウンセリングや、投降兵・逮捕者の人々への専門の宗教指導者と共におこなうセッション、投降リーフレットの展開において連携している現地の軍の方々とのコーディネーションなど、様々なことを行なっております。
今期のタームで受け入れている方々のうち、2021年1月16日に、7年の刑期を終え、無事に釈放された方もいます。彼は15歳の時に中央刑務所に収監されました。刑務所への攻撃を目的としたテロに関わったとして逮捕されましたが、初めて彼に会った際、「こんなに若い子がテロ組織のメンバーだったのか」というのが正直な第一印象を持ちました。また、彼だけではなく、収監されているほとんどの方々に同様の印象を持ちました。それだけ若い人々がほとんどであるのが実情です。
刑務所内では、全ての人がテロを直接的に行い、人を殺めているとは限らず、半数の人々は間接的に関わっていました。テロ組織に加入した理由もまた様々です。「家族を人質にとられ、彼らを守るためには仕方なかった」、「字の読み書きができない中、テロを起こせば天国に行けるんだ、そう大人たちが言ったから」、「貧しい環境を変えたくて家族を食べさせていくために組織に入った」、など様々な背景があります。
そんな彼らと長い時間をかけて地道に向き合っていくわけですが、ケアカウンセリングの中で、「人生において君にとって一番大切なことはなに?」と質問すると、「結婚して家族を持つことかな」、「出所した後は大学に進学して学びたい」などと、決まって屈託のない笑顔で答えてくれます。そして、釈放の際は迎えにきてくれた家族と再会し、子供のような笑顔で微笑みながら刑務所を後にするあの光景は一生忘れません。その他にも「出所後は一生懸命働きたい、ビジネスについて自分たちに教えてくれ」「自分が出したビジネスのアイディアを見てくれ」「刑務所の中にいてもたくさん勉強したいんだ、この本を買って欲しい!」「家族に早く会いたい」そんなことを真っ直ぐに、真剣な眼差しで訴えてくれる人々が確かにここにいます。

テロ・紛争の問題は「危険すぎるから」「自分の命が危ないから」「解決が難しすぎるから」「解決策なんてないから」と言われ続け、世界中の人々や団体は直接的な支援を避け続けてきた問題です。日本を見ても、実際に現地に赴き、直接的な支援を行う団体は非常に少ないのが現状です。このような紛争地に足を踏み入れて、直接的な支援を行う人々は、世界中を見ても数えられるほどしかいません。だからこそ我々がやらなければいけないという思いでこの問題に向き合ってきました。
すでに上記を読んでくださった方であればお気づきかもしれませんが、全ての人が最初から「いわゆるテロリスト」として生まれてくるわけではありません。当法人は、いわゆる「加害者」とされる人々の様々かつ生の声を、現地の活動を通じて聞いてきました。昨今、SDGsの「誰一人として取り残さない」という言葉は多くの場面で耳にするようになりましたが、その「誰一人」の中に彼らは入っていません。メデイアで切り取られただけの情報では、あたかも「単なる人殺し」に見えるかもしれません。でも、様々な理由があって組織に入っているのが実態です。「本当に取り残されているのは誰なのか」、この問いに2011年の設立から真正面から向き合ってきました。
1度組織に入ってしまえば、誰も手を差し伸べない、誰もが無視し続けられる、危ないから近づきたくない、そんな世界のなかで、だからこそ我々が「受け入れ」、「1人にしない」ようにしなければいけません。確かにいわゆるテロ組織の一員ではありますが、同じ「人権」という名のもとに語るのであれば、彼らも我々と同じ一人の人間です。1人でも多くの人が、暴力ではない方向に歩めるよう支えられたら、という強い思いで日々活動しています。
最後に1つお伝えしたいのは、皆さんのご支援により、いわゆる加害者とされる彼らだけでなく、その先にある「傷付けられ、失われるはずだった命」まで救われるということです。そして、これまで発生したテロによって失われた我々と活動を共にしてきた現地の同志、これまでテロによって亡くなった人々全ての命と想い、全てがこの活動にかかっています。
我々があと少しでも頑張れたなら、あと少しでも協力してくれる方を募れたら、その協力であと少しプロジェクトを拡大できたなら、救えたはずの命があります。それだけみなさんのご支援によって救われるものがあります。
「テロと紛争のない世界の実現」のために、どうぞご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
