活動内容
ソマリア

世界最悪の紛争地
ソマリアから
テロのない世界を創る。

政府や国連と協力しつつ、いわゆるテロリストの脱過激化と社会復帰に加え、社会との和解を醸成することで、テロの解決と紛争強度の低下を導きます。紛争地の最前線から、世界のテロと紛争にも展開できるモデルの構築も行います。

1980年代に勃発した内戦が全国に拡大し、1991年から2012年までの21年間無政府状態を経験した国、ソマリア。正式政府が発足した現在でも、度重なる飢饉や難民・国内避難民が発生し続けています。加えて、いわゆるテロ組織アル・シャバーブによるテロ行為や住民に対する暴力、支援物資の搾取などにより、内戦状態は激化・長期化・広域化しています。アル・シャバーブは世界で最もアクティブで危険なテロ組織の一つとされており、ソマリアだけでなく、ケニア・ウガンダなど周辺諸国においてもテロ活動を行っており、甚大な犠牲が出ています。

激戦地であるソマリア南部では、アル・シャバーブへ加入する若者が後を絶ちません。紛争、干ばつ、飢餓、という絶望的な環境を生きる多くの若者たちには、スキルも、機会も、職もありません。そうした中で、アル・シャバーブは、過酷な状況下にある若者の怒りや不満に付け入り、組織へと勧誘しています。また、アル・シャバーブの支配領域では脅迫や誘拐による強制的な加入が多数報告されており、現在も8,000人規模の構成員がいるとされ、状況は非常に深刻です。

ソマリアにおける取り組み

DRRプロジェクト

主に首都モガディシュにおいて、いわゆるテロ組織アル・シャバーブからの投降兵および逮捕者に対する脱過激化・社会復帰支援に加え、受け入れ社会との和解醸成や、現地政府が実施するリハビリテーションプログラムへの支援をすることで、憎しみの連鎖を断ち、テロ・紛争解決に向けた好循環を創っています。

ソマリアにはアル・シャバーブに関する和平合意や停戦合意が存在しておらず、彼らが極めてアクティブに戦闘行為を続けている状況のため、従来の紛争解決の枠組みが通用しません。そこで私たちは、DRR(脱過激化・社会との関係構築・社会復帰)という枠組みを独自に構築し、現場で様々なプログラムを実施しています。

DRRプロジェクトは、暴力的過激主義組織によるテロの問題に取り組むことを通して、ソマリアで平和を構築するとともに、若者の育成に力を注ぐことを目的としています。現在はモガディシュ中央刑務所などのリハビリテーション施設でプロジェクトを実施しており、収容されているアル・シャバーブの元構成員(ほとんどが若者で、最年少は8歳)を対象としています。本プロジェクトは、その名の通り、彼ら「脱過激化」を促し、コミュニティとの「関係を構築」し、継続的な支援を通じて「社会復帰」を実現します。また、DRRプロジェクトでは、アル・シャバーブからの脱退を促進するための戦略的なコミュニケーション活動も実施しています。本プロジェクトで行っている主な活動は以下の通りです。

①ケアカウンセリング

ケアカウンセリングでは、受刑者の抱く信念を否定することなく、アイデンティティを再定義し、社会に害を及ぼさない彼ら独自の価値観を創り上げることを目指してます。また、それぞれが過激な行動を取るに至った背景・理由を尊重し、その感情を非暴力的な手段に転換することを重視します。具体的には、釈放後の夢や目標などを本人と話し合うとともに、社会に根ざした問題について議論し、それを変えるのは彼ら自身であることを伝えています。ケアカウンセリングは一人一人に対して何度も実施することで、信頼関係を築いていきます。

②職業訓練・ライフスキルトレーニング

地域社会で需要のある職業スキル(溶接、裁縫スキル等)を獲得するための職業訓練を行い、彼らの雇用確保を支援することで、本プロジェクトの対象である人々の経済的及び社会的自立を後押ししています。さらに、地域社会の人々とのコミュニケーションを通じて実生活に役立つスキルを身につけ、地域社会との関係性を構築することも目指します。女性の受刑者に対しては、週2回、ヘナタトゥーやメイクアップなどの職業訓練を行っています。また、トレーニングで得たスキルを、実際の生活の中でどのように活用するかという実用的な部分についても彼らとともに話し合います。

③受刑者への基礎教育

刑務所の模範囚で読み書きができる方々を教師として雇い、刑務所内で小中学校を運営することで、受刑者の基礎教育を行っています。具体的には、数学、英語、アラビア語、社会、理科、ビジネスなどの基礎科目を、1日4回のクラスで週4回にわたって全受刑者に提供しています。

④社会との和解セッション

地域社会が自分たちのことをどのように考えているかを受刑者たちが認識していない場合や、逆に受刑者たちが社会のことをどのように思っているのかを地域の人々が理解していないケースは多く見受けられます。このような相互理解の不足やそれに伴う誤解は、双方の感情的な距離を広げ、ただでさえ難しい紛争中の和解を阻害しています。このギャップを埋めるために、地域社会のリーダーと元受刑者を招待し、和解セッションを月に1回開催しています。和解セッションでは、テロ組織に参加してしまった抜き差しならない背景や刑務所での生活について元受刑者に話してもらうとともに、地域の一員としてともに問題を議論することで、和解のための土壌を創っています。

⑤幻滅対策セッション

受刑者の若者たちが期待通りに物事が進まないという現実に直面すると、彼らが再過激化するリスクが高まります。幻滅対策セッションでは、釈放後に起こりうる問題について話し合い、解決策を事前に模索しておくことで、彼らの再過激化のリスクを最小限に抑えることを目指しています。

⑥イスラーム教再教育

収容されている若者たちの多くはイスラーム教の聖典を読んだことがなく、アル・シャバーブに教え込まれたゆえに偏った理解をしていることも少なくありません。しかしながら、その思想を間違いであるとして真正面から否定することは逆効果です。そのため、従来の「矯正」的なアプローチは用いずに、社会との和解、罪と赦し、平和と非暴力、伝統的なイスラム教の考え方などをテーマに議論することで、少しづつ彼らの理解を相対化し、多角的な視座や批判的思考力を持ってもらうことを目指しています。この講義は、週に2回、現地の宗教指導者と協働で行っています。

⑦長期フォローアップ・モニタリング

社会復帰を促進するために、釈放後も元受刑者への支援を継続し、彼らが安心して頼れるような関係性を築くことを目指しています。さらに、釈放直前には、身元引受人との調整を行い、釈放後に彼らが孤立しない居場所づくりを徹底しています。加えて、釈放時およびその後のフォローアップでは、社会復帰準備金として現金給付を行っています。また、釈放後も連絡を取り合い、不定期で彼らの元を訪問するとともに、彼らのビジネス等に関するコンサルティングを行い、地域社会への復帰を支援しています。

⑧投降促進リーフレットの配布と相談対応窓口の設置

各ステークホルダーと連携し、特別恩赦及び社会復帰プログラムに関する情報の拡散や、アル・シャバーブからの投降促進など、多様な啓発・啓蒙活動をコミュニティベースで行っています。また、アル・シャバーブからの投降者を受け入れる軍や警察に対し、投降者の待遇・対応や、関連する国際法及び規範等の遵守など、基本的人権の尊重の促進に向けて能力強化も行っています。

⑨刑務所の改善・改良支援

刑務所内で受刑者に向けて取り組みを行うだけではなく、施設自体の改善・改良支援も行っています。これまでに、教育施設の改修、コンピューターや文房具および黒板の設置、医療キット及び医薬品の提供、18歳以下の居房や病人の隔離房の建設、図書館の設置・運営等を行ってきました。これにより、刑務所当局との交渉を円滑にすることも狙いとしています。

どれだけ苦しい状況に置かれたとしても、
もう二度と間違った道を歩むことはない。

— いわゆるテロ組織アル・シャバーブ投降兵 / シアド

憎しみの連鎖をほどくために、
今世界で、あなたが必要とされています。